邂逅
この話だけはチビった少女視点となります。
薄暗い部屋を濃厚な紫の光が満ちている。
本来なら有り得ない光景だ。
何故なら、召喚陣を「向こう側」から展開し、こちらへ来ようとしているのだ。
「あ・・・あぁ・・・」
足が恐怖で震える。
逃げようとしても、力が全く入らない・・・。
次第に陣が激しく発光した瞬間。
陣から腕が出てきた。
黒い、いや。
赤黒く何かで染まっているのか。
その色は想像よりも不気味でいて、美しかった・・・
これは失敗したかと思う。
いや、失敗だ。
私が行ったのは「英雄召喚」だ。
古文書に記された記述と明らかな相違点がある。
古来、英雄召喚から発せられる光は「青色」。
これは聖なる属性に反応して発せられる物だ。
過去に「赤い」光を放つ召喚陣が在ったと記されていたが。
召喚されたのは赤龍の加護を持つ龍騎士だったと記されている。
だが、こんな恐ろしい気配を放つ陣は過去にない。
しかも、色は紅を纏う紫だ。
紫は本来、魔に殉ずる者だけが纏う畏怖される色だ。
私はもしかしたら・・・大変な者に触れてしまったのかもしれない・・・
遂にはその上半身が現れ。
私の疑心は確信に変わった。
乱雑に伸びた黒髪。
端正な顔立ちだが、狂気を内包した紫の瞳。
深紅のコートを纏うその気配は明らかに異質であり、まるで狂気と恐怖を凝縮した気配。
魔王。いや、魔王と言う言葉ですら生温い威圧感。
私は堪らず尻からへたり込み。
謂うことを効かない足で後ずさる。
完全に飲まれてしまった。
目の前の者に。
どれだけの時間が過ぎたのか、彼は完全に召喚された。
身長は190はあるか?
やや細身だが、隔絶された力の奔流が彼から発している。
その瞳が、私を捉えた。
下半身から水音が聴こえた気がする。
多分、粗相をしてしまったのだろう。
だが、気にも止めなかった。
そして彼は・・・歩き出した。
ゆっくりと私の元へ・・・
いや、視点変えてみたら主人公のラスボス臭が半端ないね