日常
「大丈夫かっ!」
他のみんなに襲いかかろうとしていた敵を斬り、パーティの元へ駆け寄った。
仲間へ少し下がるように言ってから、俺は斧を振り回し、次から次へと魔物をはじき飛ばしていく。
それでも邪悪な者たちの反撃はしぶとく、戦いが終わるころ、俺は大小の傷を負ってしまっていた。
「忠男、またキズだらけになっちゃった」
リーナが泣きそうな顔で心配して、俺の身体を治してくれる。
「ごめんね。わたし、忠男に守ってもらってばかり」
「僕にもっと力があれば……」
正一郎たちが残念そうな表情を浮かべているので、俺は元気づける。
「気にするな。お前たちはよくやっている」
「やっぱり、忠男がいないとダメだよね。ボクの作戦どおりだったよ」
「エルおまえっ! 自分たちだけで大丈夫だと言ってたくせに!」
笑いながら走って逃げていくエルナールを、気を取りなおした正一郎が追いかけていく。
さわやかに吹いてくる風が心地いい。回復の光がどこまでも穏やかだ。
「わたしたち、ずっと一緒だよね」
「……ああ」
リーナが、俺の手に自分の手を重ねてきた。こういうのはいつまで経っても馴れない。緊張を振り払うように、俺は力強く返事をした。
俺は、最強の女剣士との戦いを振り返る……。
パーティを裏切ったエイは、俺とエルナールの同時攻撃を受けて、信じられないというような顔で膝をついていた。
「バカな。エイ様が敗れるとは!」
「どうすればいいんだ!」
近寄ってきていた警備兵たちが青ざめた顔で立ち尽くす。俺は提案した。
「反省してやり直せばいい。それと、俺たちの仲間を、正一郎やリーナを返せ!」
エルナールが町の警備兵と交渉し、2人を連れてくる。
どうにか一命を取りとめた女剣士は、深く頭を下げて謝罪してきた。
「私は自分の力を驕っていた。そのうえ卑怯にも、お前たちを騙まし討ちにし、ひどい目に遭わせた。こんな我々を許してくれ」
もう二度と悪さをしないと約束させ、俺たちはこの悪夢のようだった町を抜け出した。
しかし落ち着いた今では、剣士らは自分たちの罪を悔い、一致団結して町を立て直しているという。
登録所から報奨として受け取った金の一部を、故郷で暮らしている母に送った。
俺あてに届けられた手紙。
『忠男からいただいたお金で、母さんは美味しいご飯を食べられて幸せです。忠男も身体に気をつけて。落ちついたら、たまには家に帰っておいで。可愛い嫁さんの顔を見せておくれ』
「嫁さん……」
となりで手紙を覗き込んでいたリーナの顔が赤い。それでいて、「わたしのことだよね?」と確認したいのか、心配そうに俺の顔を見上げてくる。
口に出すのは恥ずかしかったので、俺は首を縦に動かして肯定した。
「忠男、ちゃんと言ってやれよ。そういうことは何度でも言わないと!」
「そうだよ。ボクも、正一郎とラブラブだし」
「わっ。やめるんだっ!」
じゃれあう勇者たちを尻目に、リーナは俺の返事を待っている。
言葉に出して答えると、彼女の顔が可愛らしく輝いた。
ずっと、この瞬間が続きますように。
暑くも涼しくもない過ごしやすい日。俺たちの冒険は、いつまでも終わらない。
~FIN~




