タワーにて
二週目。
一番手:翳の使者
数十分後病院を抜け出し彼は今、**タワーの展望フロアに来ていた。
彼は、展望フロアから見える外の景色を見ながら呟く。
「ここが**タワーか。道がわからないから看護師さんが言ってた**タワーに来て見たけど……何だろう不思議と懐かしい感じがする……」
ズキ!彼の頭に痛みが走り僅かな映像と音声が流れる。
夜の展望フロア佇む2人。
――――「僕と――――――――さい!」男性が女性に告げる。
「はい……」――――
女性はそう答えた。
い、今のは何だ?あの男は僕?僕はここに来たことがあるのか?でもさっきの綺麗な女性は一体誰だろう? ……
「痛!」
彼の頭に激痛が走り、彼はその場に膝を付く。すると、そこへフロアの掃除をして居た小柄な男がそれを見つけて彼に近寄る。
「君、大丈夫かい? どこか痛いなら医務室へ連れて行こうか?」
小柄な男は心配してそう声をかける。
「いえ……もう大丈夫です」
彼はそう答えて立ち上がる。小柄な男性はそれを見て安心して
「なら良かった。じゃあ、僕はこれで」
と、言って仕事場所へ戻ろうとする。
しかし、彼がそれを引き止めるように話しかける。
「あ、ちょと待ってください。一つお聞ききしたいことが……」
「何だい?」
小柄な男性は振り向かずに答える。
「この辺にピアノが展示してる施設があると聞いたのですが、知りませんか?」
彼は看護師さんから聞いたピアノの展示してある施設に行こうと思い。小柄な男性に聞く。
「ああ、青空ビルのことだね。それならこのタワーの2つ隣にあるビルだよ。確かピアノは2階だったかな。そこへ行くなら早く行った方がいいよ。このタワーは危険だから……フフ」
小柄な男性は質問に対して丁寧に説明して更に謎のアドバイスまでした。
「ありがとうございます。ところで、何でこのタワーは危険なんですか?」
彼は感謝の言葉と謎のアドバイスについて聞く。しかし小柄な男性は
「何でだろうね? ……フフフ」
と、答えて仕事へ戻ってしまった。
彼は、「なんだったのだろう?」と、思ったが、深く考える前にピアノのあるビルのことを思い出して。考えるのをやめてそこへ向かった。
青空ビル。2階。
彼は今、ビルの管理人に頼まれてピアノを弾いていた。彼は、何故かピアノについては完璧に覚えていたため。難なく楽譜を見て弾くことが出来た。ちなみに今弾いている曲は交響曲第九番第四楽曲「歓喜の歌」である。
何故、年末に歌われるこの歌を弾かせたいのかはわからないが、ビルの管理人は笑顔で見守っていた。そんな管理人の笑顔に見守らながら曲を弾いていると、閉まっていたドアが開かれた。そこには、一人の女性が目を丸くして立っていた。