始まりと終焉
一週目。
一番手:翳の使者
せめて一週目は三番手まで読んでやってください……
夕方。日が沈みかけ、夕日色に染まる町中。どこにでもいそうな10代のカップルが歩いている。
「ねえねえ、次で最後になるだろうけど、どこ行く?」
彼女は彼氏に問いかける。
「そうだね、僕は**タワーに行きたいかな。あのタワーから見る夜の町の風景は幻想的な程綺麗だからね」
「ふ~ん。じゃあ、そこで決まりだね!」
彼女は彼氏の言葉に賛成する。
「じゃあ、行こう」
彼氏はそう言って、彼女の手を取って歩き始める。彼女もそれを嫌がる様子もなく、受け入れる。
1時間後。
2人は今、予定通りとあるタワーの展望台デッキにいる。
彼女が彼氏に一言だけ伝える。
「綺麗……だね」
「あぁ……」
彼氏もそれに一言で答えて、幻想的に輝く町の景色に見とれている。
2人はそれからしばらく、景色を眺めていたが、時間が時間のため、「そろそろ帰ろう」と彼女が彼氏に言おうとすると、その前に彼氏が真剣な声で話しかけてくる。
「***。君に伝えたいことがあるんだ。」
彼女は彼氏の真剣な声におされて頷く。
彼女が頷くと、彼氏は再び喋り出す。
「**。いや、***さん。まだ、先になっちゃうけど、高校を卒業したら僕と結婚して下さい。」
「!!!」
彼氏の告白に彼女は驚く、しかし、すぐに状況を理解して返事をする。
「……はい。」
その返事をした彼女の目から一粒の水滴が落ちた。でも、その顔はけして悲しい顔ではなく、喜びに染まった笑顔だった。
しかし、そんな幸福な時間がすぐに消えることになるなど、誰が予想しただろうか?
1時間後。
彼氏の告白後。二人は帰路についていた。今2人は信号の前で立っている。
「いいよ、わざわざ送らなくても。どうせすぐそこだし。それに、**君の家はここから遠いわけだし」
彼女は彼氏に送ってもらうのが、申し訳ないのか、送らなくてもいいと、提案する。しかし、彼氏は
「いいや、ダメだ。いくら近いと言っても、やはり夜道は危険だ。送るよ。それに、婚約者をすぐに失いたくはないしね」
「……ありがとう」
お互い、仮とはいえ、婚約者になったのが、恥ずかしいのか、2人はそこからは何も喋らなかった。
信号が青になり、2人は渡り出す。
その時……
「どけ!」
「え?」
なんと、一台の大型車が2人の元へ突っ込んできた。
「危ない! **走れ!」
彼氏はとっさに叫ぶ。しかし、彼女は恐怖に固まって動けない。
「仕方ない、よっと」
彼氏は彼女を抱えて、全力で走り出す。しかし、女子とはいえ、人、1人抱えた状態ではスピードもでず、車はすぐそばまで迫る。
「こうなったら……**少し痛いけど、我慢して」
彼氏は車にぶつかる寸前、彼女を優しく前に投げる。そのおかげで何とか、彼女の前から脱出する。しかし、彼氏は間に合わず……
バン!
彼氏は車に当たり、倒れる。
「**君!」
彼女は彼氏に近寄る。
「**君。**君」
彼女は何度か呼びかける。
「**……」
彼氏がその呼びかけに答える。
「**君!」
彼女は泣きながら彼氏の名前を呼ぶ。すると、彼氏は小さな声で告げる。
「……泣かないで**。君は僕の天使なんだからさ。ねぇ、笑って? 僕は大丈夫。絶対に死なないよ。だって僕は君と幸せになるんだから。それまでは、絶対に死なないから……だから、笑って?」
彼氏は血が大量に出ていて、苦しいはずなのに、よわよわしく、笑いながら笑ってと、言い続けた。
彼女は泣きながらも、それに答えて、笑顔を浮かべる。
「……ありがとう」




