長い一日の始まり2
ハァ………ハァ………
荒い息遣いが聞こえる。
おぼつかない足取りで、時折後ろを振り返りながら何かから逃げているようだ。
必死に逃げる。目的はわからない。それでも逃げ続ける。
ただ真っ暗な空間の中、まっすぐ伸びる道だけが存在した。
一定間隔に配置された街灯の光は心細く、さらに不安を煽った。
終わらない恐怖。何から逃げているのかもわからない。
もう何分走っているのだろうか。数時間経っている気もする。
ただ走る。走る。
既に後ろを振り返る余裕も無い。
もう振り切っただろうか。
そう思い男は足を緩めたその瞬間、何かに足を掴まれ、引きずり倒された。
必死に抵抗するも、足を掴むその何かは、まるで万力のように足を締め上げて離さない。
そのまま徐々に引きずられて行く。
黒い何かに近づくにつれ、恐怖心は猛烈に膨れ上がり………
「やめてくれ!!!」
そこはベッドの上だった。
寝間着は汗でびっしょりと濡れて肌に張り付き、不快感を増していた。
「またこの夢か………一体何度目だよ」
そう言いながら寝室から台所へと向かい、冷蔵庫から缶ビールを取り出して一気に半分ほど煽る。
時計の針は午前二時を回っていた。
細くてどこまでも続いていそうな一本道、黒い何か、そしてそれから全力で逃げる自分。
ここ一ヶ月、ほぼ毎日この夢をみている気がする。
そして目覚めるのはいつも引きずられて行くところだ。
「朝早いのにやめてくれよなほんと」
男は缶ビールの残りを煽って空き缶を流しに置き、風呂場へ向かった。




