第7話 スライムとの生活
一日の遺跡探索を終えて、俺は約束通りゲル子を家に連れて帰ることにした。いや、厳密には約束してはいないんだが、なんとなく約束させられてしまっているような気になってしまっている。置いて帰ろうとすると女の子の顔がなんとも悲しそうな顔をするからな……女には弱いんだよ、俺。
いつもより遺跡に長居してしまったのであたりはすっかり暗くなっていたが、一人じゃないというだけでいつもより心強かった。ゲル子の強さも分かってるし、何より話し相手がいるってのはいいな。俺は常人よりは夜目がきくとはいえ、さすがに暗い中ではものがよく見えないが、ゲル子はそうでもないみたいだ。
「スライムって、遺跡では結構暗い所に潜んでますからね」
そんなこと言いながら、たまにふらっと気配が俺のそばを離れて、また戻ってくる時には鳥だのうさぎだのを捕まえてきている。晩御飯のおかず、だそうだ。
「ゲル子は何を食べるんだ?やっぱり肉か?」
「そうですねー……遺跡にいた時は何も食べなかったです」
魔物ってろくに植物も生えてないような遺跡の中で何を食べて生きてるんだろうと思ってたが……。なんにも食べてないのか?ひょっとして。
「食べなくても大丈夫なのか?」
「えっと、遺跡にいる間は遺跡からエネルギーを受け取るので食べ物はいらないんです。でもこんな風に一度遺跡から出ちゃうと遺跡とのつながりが切れるので、食べ物から栄養をとらないとダメですね」
「それなのに、出ちゃってよかったのか?」
「わたしが出たかったので」
そういってにっこり微笑むゲル子。その顔は女の子そのもので、とても可愛らしい。
「今は物を食べるんだろう?食べたいものってあるのか?」
「なんでも消化しますが、動物の筋肉や卵などがエネルギー効率がよさそうです」
「俺も肉は好きだよ。甘いものも好きだけどな」
「じゃあ、今夜は一緒にお肉を食べましょうね」
そういうゲル子の手にはいま獲ったばかりのウサギ。ちょっと量が多いんじゃないかと思うが、スライムって結構食うのかな。まあ、魔物だからな。
家に帰りついたら火を起こして、さっき獲った獲物を焼いて食べた。味付けは塩だけだが、焼き立てはやはりうまい。今度機会があったら調味料も仕入れておこうかな。
ゲル子は生のまま食うのかと思ってたら、俺と同じように調理したのを食べたがった。味覚は俺たちと違うようなんだが、俺と同じってのがいいらしい。
腹がいっぱいになったら疲れが出たのか眠くなってきたんで、すぐに布団に入って寝た。ゲル子が「そっち行ってもいいですか」なんておずおずと聞くので、スライムの姿に戻らせて抱えて寝た。ひんやりぷにぷにしてなかなか気持ちよかった。クッション性は最高だし、気温の高い時期はこうやって寝るのも悪くないな。
ゲル子を抱きしめて寝たら、ファーラさんの夢を見た。ファーラさんが俺の顔に胸を押しつけてくる夢だった。柔らかくてむにゅむにゅして最高に気持ちよかったので、顔全体で思いっきり感触を堪能した後、すべすべした肌を舐めまわした。朝起きたら腕の中でゲル子がべとべとになっていた。既に起きてたようでなんだか赤くなってふるふる震えていたが、あまり考えないことにしよう……。