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第3話 はじめての遺跡探索

遺跡は厳密には国の財産ということになっているが、遺跡を守る為に入口に兵士が張り付いてるなんてことはない。遺跡は国内にいくつもあって、国には全部の遺跡に兵士をはり付けるような余裕なんてないし、そもそもそんな必要もないんだ。


遺跡にはもともと侵入者を排除する仕組みが備わっている。遺跡の宝の守護者ガーディアンとしての、魔物モンスターを生み出す力が。遺跡の中には魔物モンスターたちが常にうようよしている。どういう仕組みでやつらが生み出されるのかはよく分からんが、遺跡そのものが失われた技術で作られたものなので、それに関係しているんだろう。


そういうわけで、腕に覚えのない人間は遺跡に入ったとしても中の魔物モンスターたちにあっさり殺されてしまう。だから頑張って侵入禁止にしなくたって、普通のやつは中の宝をとることはできないんだ。まあ、俺たちみたいな専門家プロはちょっとばかし違うけどな。





俺の新居からは、森を北に抜ければすぐに一番近い遺跡に行くことができるようになっている。


遺跡までの道のりはほとんどが森の中で近くに村も民家もないので、遺跡に行くまでに誰かに見られる可能性は極めて低い。その点も俺は高く評価している。


もっとも、森の中を通るということはそれなりにリスクもある。この付近はさほど危ない生物はいないが、ヘビや狼ぐらいはいるかもしれない。森の中を歩いている時間はそれなりに長いので、昼間の内はまだしも夜は警戒した方がよさそうだ。小屋は森の西側にあるため、森の中を突っ切らずに西に迂回して実家のある方角から向かえば森の中をさほど歩かなくても家まで帰りつくことができる。帰りが遅くなる時はそのルートも選択肢に入れておいた方がいいかもしれない。


遺跡までは迷うことなく順調にたどり着くことができた。今までも何度か場所確認のために行ってみたことがあるから、当たり前といえば当たり前なのだが。


それでも遺跡の中に入るのは初めてだ。俺は目の前に建つ石造りの建物を見て唾を飲み込む。


それは箱のような四角い形をしている。地上部分を見ているとあまり大きいものには思えないが、それは入り口である地上部分だけで、地下にはどこまで続いているか分からない迷宮が広がっているのだ。


噂によれば、ここは大昔にいたこの地方の有力者の墓なのだという。王族などではないので地上部分はあまり仰々しくはないが、内側には今では希少な素材で作られた装飾品や失われた技術で作られた不思議な道具も出るのだ。もちろんそんなに簡単にぽろぽろ出るわけではないが、当たればでかい。危険な場所だが遺跡には夢もロマンもある。



俺は地上部分の入り口をくぐり、建物の中に入り込んだ。カビ臭いような湿ったにおいのする空気が肺の中に入り込んで来る。廃墟のように静かな建物の中で、俺の心臓が動く音だけが響く。


手探りで地下への入り口を探し、やがてそれらしき違和感のある場所を見つけると『七つ道具』を使って見えざる扉をこじあける。ここからは未知の世界だ。



俺は簡単なマッピングをしながら、慎重に遺跡の中を進んでいく。このマッピングは探索を終えて家に帰る時に必要になるものだ。今日のところは地下1階を制覇するだけにとどめようと思っている。どんなものか様子見をしてみるのだけが目的だ。奥に進めば進むほど素晴らしい宝が手に入る確率も増えるが、あまり欲をかくとろくなことにならないのは目に見えている。


今やっているマッピングは明日来る時には全く役に立たないらしい。なぜなら、遺跡の構造は毎日変化してしまうからだ。今日の遺跡のかたちと明日の遺跡のかたちは全然違う。これは侵入者を迷わせる効果があり、モンスターの発生と同じで盗掘を防ぐための昔の人たちの技術なのだといわれている。



いくつかの分岐路をすすみ、ある場所の角を曲がったときに魔物モンスターから襲撃を受けた。


俺の背丈の半分ほどの大きさの丸い形をした甲虫の魔物モンスターだ。そいつは低空飛行で勢いよくぶつかってきたが、俺は体を翻してそれをかわす。と同時に左手でナイフを抜いて投げつけた。


ナイフは甲虫の硬い外皮には刺さらず床に落ちるが、驚いた甲虫が急ブレーキをかけて俺の方に方向転換する。一瞬体が浮いたので俺はその下に潜り込み、手に持ったダガーを虫の腹のあたりに突き立てた。


甲虫は黄色い汁を噴き出しながら何度か痙攣し、やがて動かなくなるとその死体はひとつの小石を残して床に浸み込むように消えていった。体がすっかり消えるとテントウムシが床の上にぶちまけた汁も消えてしまっていた。



俺は甲虫の残した小石を拾い、肩掛けカバンに突っ込んだ。これは魔石といって、魔物モンスターの核になる石だ。魔物モンスターの発生については仕組みはよく分からないが、倒すとこの魔石を除いて体は消えてしまうんだ。このへんのことはあらかじめじいさんから聞いている。


この魔石というのは今の人間の手では作り出せないエネルギーを生み出す資源のようなものだ。この石の中には魔法のエネルギーのようなものがつまっていて、これを使えば遺跡から出る不思議な道具にエネルギーが補充され使用できるようになる。使われてエネルギー切れになった魔石は砂のように崩れてなくなってしまうんだけどな。なんでこんなものが魔物から取れるのかはよく分からない。大きさや中に入っている力の量ははまちまちだが、1匹につき必ず1個取れるようになっているそうだ。


俺のもらった『七つ道具』も一部の機能を使う際はこの魔石のエネルギーを必要とする。道具のところに魔石を入れる穴が開いており、そこに魔石を入れると使えるようになるんだ。魔石はいろいろサイズがあるが、入れる際には道具の穴のほうが石に合わせて変化する。どういう仕組みだか知らないが便利なもんだな。


この魔石は実家に持って行けばそれなりの値段で買い取ってくれるし、自分が『七つ道具』を使う場合も必要になる。戦闘にはいまいち自信はないが、うまく倒せた時は確実に回収していこうと思う。

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