第6話
空博士は、その地球のメッセージの意味を相談するため、重力に逆らう力を研究していた私のところを訪ねてきたというわけです。
私はそのメッセージを聞いて、ひらめいた。長年気づかなかったことがここに記されていたのです。
『潮汐から立ち上る光を捉えよ。さすれば、重さから開放される。』
私は重力に逆らう力を生み出すためには、とてつもなく大きなエネルギーが必要だと考えていたのですが人類が作り出す力には限界がありました。潮汐と聞いたときにピンときたのです。なるほど、月の力かと。月の引力というすごいエネルギーによって起こる潮汐で生じるものを捕らえればいいのだと。
私は、さっそくそのエネルギーが集約されているであろう波打ち際にいって、観測機器を設置してみたのです。光といわれているものを徹底的に探し出してみた。
すると引き潮のときに砂浜のなかから、空に向かって放出される特殊な光の粒子を見つけたのです。それが“エディットedit”の発見でした。
私はこの事実をどうやって公表するかを悩みました。空博士は、「地球の言葉というのはきっかけに過ぎないので、堂々と自分の発見として発表すべきだ。」といってくれたのです。地球から聞いたなんていうと気のふれた科学者になってしまうぞと。
それでも私は良心の呵責があったので、ノーベル賞はいただいたが、特許は開放したのです。人類共通の利益になることがせめてもの救いになる思ったのです。
もう気づいたでしょうが、編集を意味する“エディットedit”とは、“潮汐tide”の反対読みですよ。私は真実をこの名前に託したのです」
大樹博士は、一通り話し終え安堵したような表情で遠くを見つめていました。長年隠してきたものを一気に吐き出して、すっきりした様子でした。
私はあまりの真実に呆然としていましたが、偉大な発見というのはこういう神がかりなヒントを得ることも、その人の運だろうと思ったのです。大樹博士でなければ、地球のメッセージをすぐに紐解くことは出来なかったでしょう。
すでに、インタビューの予定時間は大幅に過ぎていました。陸はこの内容を早く雑誌社に戻って、編集したがっている様子でした。私は気になることあったので、写真をもっと撮るといって、あとに残ることにしたのです。
陸が帰ると大樹博士がすぐに話しかけてきました。「七海さんの目を見たときにすぐにわかりましたよ。
七海さんは、空博士のお嬢さんですね。
空博士も同じ目の色をしていました。だから私は全てを話す気になったのです。」
続く
この小説はブログで、先行公開されています。
ブログでは、イメージ写真やコメント欄があります。
七海ファンはこちらのブログに集まっています。
http://susabi77.exblog.jp/