第5話
おはようございます。七海です。
昨日、植物との会話って書きましたけど、植物はすごくゆっくりしゃべるんです。花が咲くときもゆっくりすぎて、目では見えないじゃないですか。それと同じように会話もすごくゆっくりなので、気長にゆっくりとした気持ちが大事なんですよ。
しかも、言語が違うので、翻訳するのも大変な知識が必要となるんです。そんな根気のいることを好む人はわずかしかいないんですね。
もっともっと根気よくやさしく話し続ければ、仲良くなれるかも知れないですね。
では、話を続けます。
陸は、ばつが悪そうに答えた。
「みんな楽しい会話ができることを期待していたのに、成立する会話のテンポの遅さに、がっかりした世間の関心が向かずにマスコミもその後一切取り上げなかったのです。何でも瞬時に情報を収集できる時代にこの話題はそぐわなかったのですよ。
それにそのとき、多重結婚していた空博士のスキャンダルのほうが、世間の関心の的だったのですから。」
「でも、その成果のおかげで、植物保護法も出来て世の中植物だらけですよ。」私はすぐに付け加えた。
「それで、地球との関係は、どうなったのですか。」陸が話を戻していった。
「彼は世間から身を隠して、人間以外との会話の研究に没頭したのですよ。ただ、その成果は、発表されなかった。かれはすでに富と栄誉と人間への失望を経験していたので、彼だけの楽しみとして利用していたのですよ。」
「唯一会話が楽しめたのは、くじらだった。空博士は、世間から逃れるため、海に出てヨットで暮らしていたが、くじらは人間と寿命が同じぐらいなので会話もスムーズで、くじらたちの音楽のような言葉に癒されていたのですよ。
そんなある日、ヨットに仕掛けてあるパシーセンサーに、くじらよりもはっきりとした強いメッセージがはいってきたのだ。空博士は、くじらの種類を見分けるために、パシーセンサーに大きさを測る機能を持たせていたのだが、その数値は12万キロというとてつもない異常値を示していた。
そのメッセージは直訳すると、こうだった。
『潮汐から立ち上る光を捉えよ。さすれば、重さから開放される。』
それは、まるで神の言葉のようであった。彼は身震いをした。12万キロとは地球の直径だ。パシー技術で、地球が彼にメッセージを送ってきたのだ。」
続く
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