第4話
「ははは、変な独り言まで聞かれてしまいましたね。」大樹博士は汗をかきながら、意外と明るい笑顔で答えてくれました。私はどうも「地球」という言葉に敏感になっているのです。これだけ人類が長年お世話になっているのに、いまだに何一つ分かっていないじゃないですか。
窓の外に広がるサトウキビ畑は、海さえも埋め立てて広がっていく。そのうち海が無くなるのではないかと思うと、七海という私の存在さえ消えてしまうような恐怖を感じるのです。
博士は、この地球についての手がかりを知っている人物に間違いないようでした。
「大樹博士が発見した反重力物質“エディット”についての本当の話を語っていただけますでしょうか。重力を持つ物質の組成を編集しなおして生み出したという“EDIT”の本当の話を」
「信じてもらえないでしょうが、いつかは話さなければならないことなので、私もそろそろ潮時ですから。」大樹博士は、姿勢を正して過去を振り返るように話し始めたのです。
「私の学生時代の友人に空というのがいましてね。」
「ソラ博士ですか? パシー技術の産みの親で、その後、世間から身を隠してしまった天才科学者ですね。」
「知ってのとおり、彼は脳波を信号に変えて増幅させる研究をもとにパシオ社を設立して、20歳代で巨額の富を得たのです。富と名声を得ながらも彼は地道に、本来の研究に、影ながらまい進していたのですよ。」
「影ながら?」
「それは君たちマスコミのせいですよ。富を得たものを引きずり降ろそうと、すぐ躍起になる。 私なんかは、彼に学んだので、一切の特許を放棄して、見てのとおりの貧乏暮らしですよ。」
「プライバシー報道に関してマスコミも反省すべき点はありますが、空博士の研究内容に批判などした覚えはないのですが。」
「そうかな、彼は、パシー技術を応用して、動物や植物との会話を試みていた。植物との会話に成功したと発表したときの反応はどうだったかな? 植物が『もっと、生きたい』という望みを語ったと言った時のマスコミの反応は?」
続く
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