第2章 第14話
パシーナの脈動とともに目の中にも明るい光が立ち込めてきた。それはどこかきれいな水のなかにいるような光景だった。
『だれだ。だれがパシーナを使っているんだ。』突然耳の奥から声が聞こえてきた。
『お父さん・・・! 空博士ですか。 七海です。 あなたの娘です。』
『ななみ、七海か、本当に七海なんだね。』 私は今までのいきさつと状況を手短に伝えた。
『そこにいるタンダード社の女性と話させてくれないか。』
『いいけど、どうすれば?』
『手を握ってくれればいい。』 私は、きょとんとした表情のミーサに状況を話し、手を握った。
『ミーサさんは、その船のことをどこまでわかるかね。』
『私はエンジニア出身なので基本的なことはわかるけど、直接この船の開発にはかかわってないので、詳しくはないわ。博士のところを通じて私の会社に連絡はとれないですか。』
『わしはいま、海の底で隠居の身なのだ。地上と連絡がとれるところまで行くのに丸一日かかってしまう。』
『お父さん、酸素が一日しか持たないの。』
『ミーサさん、その船の操縦ロボットの頭脳はどこ製かね?』
『ランツブレイン社のE型よ。』
『いいか、七海よく聞くんだ。パシーナは生体エネルギーを使ってるから、このまま超遠距離通話を続けると、七海の体が必要以上に酸素を消費してしまう。
ランツブレイン社製の頭脳は生物細胞でできている。感情は持たないが中身は人間のようなものだ。パシーナで意識を集中して、その頭脳に入り込むんだ。私のところからでは無理だが、そこなら直接触ることができるので、そんなに難しいことではない。
入り込めればあとは会話をするようにその頭脳に働きかければよい。わしが乗ってる潜水艦の頭脳もランツブレイン社製だ。いつも思い通りに動いてくれているから大丈夫じゃよ。
七海、早く会って顔が見たいよ。話しておきたいことが山ほどあるのでな。じゃあ、酸素がもったいないから、通信をきるぞ。 』
『あ、お父さん ・・・ 』
再び静けさが広がった。
続く
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