第2章 第13話
彼女は言いながら、はっと青ざめた。「しまった。このランクトンだわ。しかも2着も。」
「どうして、こんなもので?」
「さっきはゆっくり浮かんだだけだったけど、このランクトンは本当は軍事用に開発されたもので、地上で高速飛行ができるように特殊な高密度エディットが入ってるのよ。実はまだ成分的に安定してなくて、この船のエディットと共振してパワーが2乗、いや3乗にもなっているのよ。」
「酸素とかはどれぐらい持つの?」
「二人でせいぜい一日分よ。まずはこの船を止めないと。」
「このランクトンを外へ放出できないの?」
「宇宙空間で開けれるハッチなんてついてないわ。」彼女はしきりに光速通信を試みているが応答がない。
「少し冷静になりましょう。」
どちらともなくお互いを見詰め合った。ここで騒いでもどうにもならなかった。
外を見ると、美しい地球が遠ざかっていくのが背後に見えた。はじめて宇宙から見る地球が、まさかすでにこんなに遠くにいってしまったなんて。地球と私の関係はこんなに気薄なものだったのだろうか。
「大丈夫よ。今頃、会社でもおお騒ぎで救援隊を手配してるはずよ。私これでも社長婦人なの。ごめんなさいね。主人もご機嫌だったので、私まで調子に乗ってこんな目にあわせてしまって。」
はたして、このスピードに追いつける宇宙船があるのだろうか、それをいってはなんの望みもなくなるので声には出さなかった。ふと私は胸に下げているパシーナを思い出した。
「お願い通じて。」
手のひらでパシーナを握りしめた。緑のパシーナに光が灯って、脈動が始まった。「だれか、助けて。お願い。 ・・・お父さん、・・・おねがい助けて。」
続く
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