第2章 第12話
最上階は巨大なプラットホームになっていました。「ここは、宇宙船の発着場です。わが社はいま、宇宙船の開発に全力を注いでしますわ。エディットのおかげで飛躍的に宇宙開発が進んでますから。その製品開発に乗り遅れましと必死なんです。採掘だけの商売は限界がありますからね。」
「なぜ、人間は宇宙に行こうとするんですか?」ふと聞いてみたくなった。
「あら、七海さんらしくない質問ね。それは人間の限りない欲望を満たすためじゃないかしら。七海さんは宇宙へは行かれましたか?」
「いえ、まだなんです。」
「それじゃ、ちょうどよかったわ。今開発中の宇宙船に試乗させてあげましょう。あっという間に地球を一周して戻ってこれますから。カメラを持っていってくださいね。」
断るまもなく、小型機のところに連れて行かれました。「これは、2人乗りで宇宙ステーションや月に行くことを想定しているの。今までの宇宙船のイメージを変えようとしてるのよ。操縦も不要でタクシーのように自動操縦ロボットが目的地に連れて行ってくれるのよ。」
楕円型の透明な機体に座席が二つ並んだだけのシンプルなつくりでした。メカニックがミーサの指示で設定をしながら、私たちを乗せてくれました。思ったよりゆったりとした座席に腰掛けて、透明なハッチを閉めたと同時に気体が左右に揺れながら急に浮かび上がりました。
なれない浮遊感に戸惑ってミーサの方を見ると、彼女もなにやら不安げな顔で下のメカニックの方を見ているのです。メカニックたちもあわてた様子で、手を大きく振り上げていました。
「どうかしたの?」
「おかしいわ。こんなに急に浮上するはずはないわよ。」
ミーサは青ざめた顔で、パシオを使ってメカニックに応答を求めている。小型宇宙船はすごいスピードで空を駆け上っていった。あんなに大きかったタンダード・エディット社の空中都市が小さな点となり、あっという間に宇宙空間に飛び出してしまった。
「応答は?」
「もうパシオの通話距離は越えてしまったので、いま、船の光速通信に切り替えたんだけど、反応がないのよ。」
「トラブル?操縦ロボットに指示は出せないの?」
「操縦ロボットも混乱して対応が出来てないわ。こういうトラブルの時には、光速通信で宇宙ステーションから操作してもらうのだけど、通信ができないなんて想定外よ。それにこの速さはこの船の性能を超えているわ。なにかがおかしいのよ。」
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