第2章 第11話
フェラー社長はこういった。「これだけ科学が発達していながら明確にいえないのが残念だが、なぜだか、埋め立てないと反重力物質エディットが生じないのです。
わが社の科学者も長年その研究を行っていますが、埋め立てた土の組成や成分と、採掘後の成分比較などを行うと山の土を埋め立てるとその発生が強くなる傾向があるのです。
それに山を削り、埋立地を増やすと畑が増やせて、二酸化炭素も減り、食料もエネルギーも増やせるわけですから、人類に貢献していると自負していますが。」
「事情はわかりますが、海を埋めていくペースが速すぎるような気がしますが」
「いま、埋め立てている海岸線は、この70年間の海水面上昇によって後退した陸地のまだ半分にも満たない面積ですよ。海を埋め、サトウキビを植えて気温の上昇を抑える。
これはまさに地球が人類に託した大事業ではありませんか。私は大樹博士のインタビューを読んでそう感じましたよ。私はまさに今日、そのことをここでお話したかったのです。」
私は、フェラー社長の話し方に圧倒されながらも、そんな単純な話だろうかとスッキリしない気分であった。
そんな私を気にする風でもなく「七海さん、せっかくこの空中都市に来ていただいたのですから、ゆっくり見学していってください。副社長のミーサが案内しますから。他に聞きたいことがあったら、ミーサに聞いてくださいよ。彼女は何でも知ってますから。
では、私は次の会議があるので失礼しますよ。いや、七海さんにあえて本当によかった。また、是非ゆっくりお話したいものですね。」といいたいことだけ散々しゃべって去っていってしまった。さすがここまで企業を大きくしてきただけの人である。
社長のそばにいた小柄な女性が近づいてきて私がミーサですと小さな声で名乗って、部屋の外へと案内してくれました。「では、まず最上階へご案内します。これを身につけてください。」黄色い厚手の固いベストを手渡されて、いわれるままに身に着けてみました。
すると体がふわりと宙に浮かび上がって、驚いてミーサにしがみついてしまいました。
「上手ですね。説明しなくてもよさそうですわ。あとは慣れれば自由に飛べますから。わが社の最新作のランクトンです。
まだ、試作段階で完成したのは2着だけですけど、実用には十分なレベルですわ。社長が乗っていたものを小型化してみたんです。」ミーサは笑顔で説明しながら彼女もランクトンを身に着けた。
「最初は手をつないでいきましょう。」彼女は私の手をとるとふわりと宙に浮いて、大きな吹き抜けの中を上へ上へと舞い上がっていった。まるで妖精の粉をかけられたウェンディがピーターパンと窓の外へ飛び出した時の気分でした。
続く
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