第2章 第9話
みなさん、おはようございます。七海です。
大樹博士の反重力物質エディット発見秘話の告白のおかげで、月刊アイザック30周年特集号は大反響を得ました。私の撮った大樹博士の顔写真がトップを飾り、テレパシー通信機パシオを通じて、購読者に配信されました。
パシオに外部記憶装置をつけておくと、受信したデータを一覧にまとめて保存して、好きなときに網膜描写で、雑誌を見ることが出来ます。ビデオ映像を見ることも出来ますが、月刊アイザックは静止画で構成するほうが、記事の印象が強くなるという考えで作られています。
いま世間ではその声の主が地球か神かで大騒動です。幸い大樹博士のノーベル賞受賞に反対する声もなく、博士の反重力物質発見の名誉は保たれました。
また、地球の声を聞いた空博士探しが本格化しましたが、いっこうに見つからないようです。もちろん私と空博士の関係はいまだに公表されていませんので、私には寂しいぐらい関係ない話題となっています。
相手の脳内まで覗けるテレパシー装置パシーナはまだ試していません。なんだか今すぐに父に会う勇気がないのと、この騒動が落ち着くまで、待ったほうがよいと思えたからです。
さて、この余韻に浸るまもなく次の仕事です。アイザックプレス社の依頼は、この反重力物質エディット採掘精製最大手のタンダード・エディット社へのインタビューです。
今の時代は企業の時代となっています。すでに国家という枠組みは消滅し、企業がお金という絶対的な尺度で、人類を相互支配しています。
大樹博士が発見したエディットはその特許が公開されたため、無数の企業がその採掘や精製に殺到し乱立したが、買収によって競争に勝ち抜いたのがタンダード・エディット社でした。
タンダード・エディット社の社長はマスコミ嫌いで知られています。マスコミが自社に不利益をもたらすと考えているようです。
ところが今回は大樹博士のエディット発見の秘話の直後に月刊アイザックからのインタビューということで、初めてマスコミが社内に入ることが許されました。それに私は表紙写真を撮ったフォトジャーナリストということで、ご指名だったのです。
続く
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