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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SUMMAR:夏】  
97/224

第玖拾肆閑 ほんのりつめたぁ~い

「……」

「……」

 しばらく無言で野菜を収穫する、俺とエメラダ。

 それにしても……やっぱり……。


「あっついなぁ~」

 暑い、朝から暑過ぎる。

 こういうとき、まだ七月なのにこんなに暑かったら、八月、九月どうするんだよ、とか思うけど、そもそも気温は無限に上昇していくわけじゃないから、そんなに心配することでもないとも思う。

 でもそれでもやっぱり暑い。

 汗が噴き出てくる。噴いて噴いて、拭いても拭いても止まらない。

 ブシュブシュと、までは行かないけど、プツプツと玉のような汗が。

 隣でせっせと作業するエメラダの額にも、うっすらと汗が光っていたが、彼女の顔はいつもどおり涼しげだ。


「エメラダは暑くないのか?」

「……?」

 彼女は小首傾げたかと思うと、俺に近づき

「アスタロウお手……」

 と手を出し言う。


「あ、あの、エメラ――」

「お手」

「はい」

 差し出されたエメラダの手の上に俺の手の平を重ねると、彼女はぱっと俺の手を取った。

 手を取ったであって、手を採ったではない。

 すぱっと手を採った、なんてことは決してない。

 手は収穫されてない。

 俺の手を収穫するのは、逸花くらいのものだ。


「……暑い」

 エメラダは言う。

 どうやら体温を俺に伝えるために、手を握ったらしい。

 ただ、俺の体温も上がってるからいまいち分からない……けど暑いというのならエメラダも暑いんだろう。


「……でも暑いと言ったら余計に暑い」

 ラヴにも言われたな。


「でもさエメラダ、暑いって言わなくても、結局暑いじゃん」

「寒い」

「寒いと言えと?」

「……」

 エメラダは頷く。

 無茶だろ……寒いと言おうが何と言おうが、結局暑い。


「何か涼しくする方法ないかなぁ~」

「それ、体冷える……」

 そう言って、エメラダはキュウリを指さした。


「そうなのか?」

「そう」

 へえ、そうなのか。

 そう言えばアロエなんかにも、火傷に効果があるとか何とか聞いたことがあるしな。


「よいしょっと」

 俺はキュウリを一本採り、でこに当てる。


「はぁ~ホントだ~ほんのりつめた~い」

 ひんやりして、気持ちがいい。


「……アスタロウ、それ違う」

「違う?」

「……食べると体冷える」

食べると体が冷える……?


「つまり、おでこに当てて冷やすものではないと?」

「……」

 エメラダはコクリと一回、ゆっくり大きく頷いた。


「ソ、ソウナンダー、ソウダヨネー。アハ、アハハハ」

 何だよ、めちゃくちゃ恥ずかしいことしちゃったじゃないか……。

 『ほんのりつめたぁ~い』とか言って……マジで恥ずかしい。

 恥ずかし過ぎて、顔が熱くなって来た。


 そんな俺の顔に、エメラダはキュウリを押し当て

「アスタロウ……キュウリ、ほんのり冷たい?」

 と、問いかけてくる。


「やめてくれエメラダ、傷口に塩を塗らないでくれ。塩を塗るのは、キュウリだけにしてくれ」

 夏に塩分摂取が大切だからといって、傷口に塩分は欲しくない。

 ただ、うまいこと言ったからといって、どうなるわけでもなかった。

 でもエメラダが作ったキュウリは、うまかった。

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