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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SUMMAR:夏】  
95/224

第玖拾弐閑 ラヴ・リ・ブレイブリアの場合 戊

 ならもうこれが答えでいいんじゃないか?

 ラヴがいて、ネネネがいて、ルージュがいて、エメラダがいて、クゥがいて。

 バカやって笑ったり、バカやって怒られたり、バカやって喧嘩したり。

 毎日一緒にご飯を食べて、みんなで一緒にどこかへ行って。

 もうこれを、家族と呼んでいいんじゃないだろうか?

 そもそも家族に答えなんてない。

 これは答えを持ち合わせていないっていうことじゃない。

 家族の考え方なんて、人それぞれだ。確実な答えなんてない。

 なら、俺なりの答えで、ラヴに教えてやればいい。


「ラヴ、家族って言うのはな、今みたいなのら……」

 勢い余って、言葉足らずになってしまったし、舌足らずにもなってしまった。


「今?」

 案の定ラヴは、分からないとでも言いたげに首を傾けた。


「そ、今。今のこの城のみんなとの感じ」

 正直やっぱり、自分で言っててもいまいち分からない。


「笑って、怒って、喧嘩して」

 だからやっぱり思ったことを素直に言うしかなかった。


「一緒にご飯食べたり、遊びに行ったり。こういうのが、家族ってやつだと俺は思う」

 人から見れば、端から見れば、これを仲間と呼ぶのかもしれない。

 ただ仲間だって、ファミリーだ。


「そう……今の、この感じ」

 家族、と彼女はボソッと呟いた。


「わ、私もね、もし家族がいれば、今のこの感じなのかなって、思ってたりしたのよ。実は」

 ラヴは恥ずかしそうに、モジモジしながら言う。

 まるでトイレを我慢しているかのようだ。

 なんて言ったら、たとえが悪すぎるか……。


「毎日怒りたくなることもあるけど、主にアンタに」

「……」


「毎日イライラもするけど、主にアンタに」

「……」


「毎日殺意がわくこともあるけど、主にアンタに」

「……」

 あれ? 俺って今、何してたんだっけ?

 あ、ああ、ああああ、そうだ、拷問だ。拷問を受けてたんだ。

 忘れてた忘れてた。


「毎日楽しいし、そ、それに何より、私が作ったご飯をおいしいってみんなが食べてくれるのが、う……ぅぅ……嬉しくって。家族がいればきっとこんな感じかなって……だから私、今の暮らし結構気に入ってる……のよっ!」

「ひぃっ!? 急に大きな声を出すな! ビックリするだろ!」

「だ、黙りなさい! 大体アンタ勘違いしないでよね! べ、別にアンタが家族だとか、そういうことを言いたいんじゃなくて、あの、別に、その、別に……別に別に、別になんだけど!」

 突然剣を振り回し暴れるラヴ。


「こ、こらラヴ暴れるな、剣を振り回すな! 危ない!」

「うるさい! それにあれよ! アンタ今の私の話、真に受けたわけじゃないわよね!? バッカじゃないの!? あんなの嘘に決まってるじゃない! 私が本気で敵であるアンタ達との暮らしが気に入ってるとか、言うと思った!? ほんと呆れた、そんなわけないじゃない! バッカじゃないの!? え!? 嘘でしょ!? バッカじゃないの!?」

 うるさいのもバカなのも、お前だ。

 コイツはいったいなんなんだ。

 呆れたのはこっちだよ。

 まったくもうまったくもう。


「分かった分かったラヴ。分かったから落ち着け」

「何が分かったのよ!」

 もう何にでも突っかかればいいとか思ってるだろ、こいつ。


「いや、別に」

「はあ!? 別にって何よ! 別にじゃわかんないわよ!」

「ラヴの方が『別に』多かったと思うけど?」

 もう今後ラヴのことは『ヘイ! バニー!』みたいな感じで『ヘイ! べつにー!』って呼んでやろうか。


「なっ黙りなさい!」

「ハイハイ」

 俺は椅子から立ち上がり、食事の間の出口へと向かった。


「アンタどこ行くのよ!」

「ラヴ、今のセリフ、アンタをあなたに変えて言ってみ?」

 立ち止まり、ラヴの方を振り返る。


「は? どうしてよ」

 と、眉をひそめる彼女。


「いいから、さんっはいっ」

「あなたどこ行くのよ?」

 ラヴは俺に促され、いまいち意味不明だというような顔をしながらも、そう言った。


「エメラダの手伝いをしに、畑。行って来ます」

「あ、ええ、行ってらっしゃい」

「どうだ? ちょっと家族みたいだっただろ?」

 グヘヘ……俺の勝ち。


「な、ちょっ……アンタね……」

 いや、俺の負けか……。

 ラヴは凄まじい殺気を放ち、鬼の形相で剣を構えた。


「ひぃぃぃぃ! ちょ、ちょっと待ってラヴ、あ、謝るからさぁ。俺達家族だろ!?」

「だから何度も言ってるでしょ……アンタは家族じゃないって……」

 な、何て低くて冷たい声だ。


「……ころ

 そう言って、彼女は腰をすとんと落とした。

 あ、終わった。


 しかしそんな俺を助けるように

「おおアスタ、今日は早いの」

「あらまおーさまおはようですの」

「アシュタおはようなのだ!」

 超タイミングよく食事の間に現れた

「お、おお、おはよう」

 ルージュ、ネネネ、クゥの問題児三人組。


「ラヴリン、腹が減ったぞ」

「愛ちゃん今日の朝食は何ですの?」

「エサなのだー!!」

 どうやら完全に体力は回復したらしい、すっかりいつもどおりだ。


「ほ、ほらラヴ、騒がしいのがやってきたぞ。ちゃんとご飯作ってやれよ」

「ちょ、アンタにげ……」

 俺はそれだけ言って食事の間を出て、彼女たちの声を背中に、足早と畑へ向かった。


「あーもう……アンタ達少しは自分で出来るようになりなさいよね」

「嫌じゃ」

「嫌ですの」

「いーやなーのだー!」

「はぁ……。はいはい、ちょっと待ってなさい」

 そう言ったときのラヴの顔がどんな顔だったかなんて、見なくても分かることだった。

 ……多分。そう……多分ね。

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