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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SUMMAR:夏】  
82/224

第漆拾玖閑 おヘソを触るとお花を摘みに行きたくなる

 と言うことで俺達は海に、この輝く海に、透き通った海に、やってきたわけだ。


「おいラヴ、俺たちも泳ぎに行こうぜ?」

「……」

 既に俺とラヴ以外は海の中。

 少し遠くで、波の音に混じって彼女たちの楽しそうな声が聞こえる。

 いやネネネとルージュについては、海の“中”と言ってしまっていいんだろうか……?


「早く返しなさいですの!!」

「遅い! 遅いぞ年増! はようせんと乳がどんどん垂れ下がってしまうぞ!」

「キィィィィ!!」」

 あいつら、本当に水上を走って追いかけっこしてるんだよな……。

 ルージュはネネネの巻貝水着を持って、ネネネは乳を持たず(隠さず)に。

 どんだけ浮いてるんだよ、どんな死海だよって。

 まぁ今更驚くことでもないんだけどさ。


「なぁラヴ、聞いてるのか?」

「……」

 なぜか無言で固まり、砂浜に立ち尽くすラヴ。


「おいどうしたんだよラヴ! ラヴって!」

「あ……あう……む、むね……タユンタユン……」

 彼女はうわ言のように、たゆんたゆん、と繰り返す。

 ああはいはいなるほど。ネネネの乳を見て、放心状態になっているというわけか。


「ラヴよ、別に胸なんて大きければいいってもんじゃないぞ? ラヴだって胸はないけど、いい体を持ってるじゃないか」

 ほんとに。この引き締まったお腹に、キメの細やかな肌、何と言っても縦にしゅっとした綺麗なおへそ。


「……」

「う~む」

 仕方ない、放心状態なら好都合。今のうちにラヴのおへそでも観察しておくか。

 気付かれないのをいいことに、お腹すれすれまで顔を近づけ、ラヴのおへその観察日記をつける俺。

 夏休みの課題、自由研究にでもしようか。

 『ラヴちゃんのおへそ日記』


「ふむふむ」

 いやあ、本当に綺麗だ。


「ほうほう」

 いやあ、本当に美しい。


「どれどれ」

 いよぉ、それ!


「ちょんちょん」

 ラヴのおへそをつついてみる。


「ひゃん! ちょ、ちょっと何してるのよ変態!!」

「いや、おへそが綺麗だからつい……」

「つい、じゃないわ……っよ!!」

「ぐほっ……ぅぅ」 

 ラヴさん……おへそをグーパンチでつつくのはどうかと思いますよ……?


「お花摘みに行きたくなったらどうするのよ!?」

 お花摘みに!?


「え……お花なんて摘みに行くの?」

 どうして? せっかく海に来たのに? まあいいけど。


「じゃあ俺も一緒に行こうか?」

「一緒になんて行かないわよ、行けないわよ!」

「え? どうしてだよ、お花摘み行くんだろ? 俺も行くよ」

「やめて、もうやめて……何だか凄く恥ずかしくなってきた、……そうね、そうよ、私が悪かったわよ……変態バカに見栄を張った私が……」

 なぜか急に顔をまっ赤にさせ、ぶつぶつと何かを呟くラヴ。


「どうしたラヴ? お花、一緒に摘みに行こうぜ」

「うるさい黙れこの変態が! お花摘みに行くっていうのは、おトイレに行くっていうことなの!」

「え?」

 お花摘みに行くが? おトイレに行く?

 何だよその隠語、隠語というか暗号?

 全然分からないよ、『お』しか合ってないじゃないか。

 せめて音入れ(レコーディング)に行く、くらいにしておいてもらわないと。

 まあトイレにレコーディングに行くとか、一体全体何の音を収録しに行くんだって話だけど。


「つまりラヴは、おトイレに行きたくなったらどうするの、って言いたかったわけだ」

「そうよ、何度も言わないで」

 ふむふむそうかそうか、確かにおへそを触るとトイレに行きたくなるよな。


「仕方ない、なら俺が連れて行ってやる。よっと」

 俺はラヴちゃんをひょいと持ち上げ、お姫様抱っこをし、そのまま海へと一目散。

 女の子だからやっぱり軽い。


「きゃっ、ちょ、ちょっと何するのよ! 放しなさいよ!」

「まぁまぁそう遠慮するなって」

「ちょ、そう言うことじゃないの! 早く放して!」

「いてっ、痛い、痛いってラヴ」

 ポカポカと、なんて言ったら可愛い過ぎるか……。

 ボコボコと、俺を殴りつけるラヴ。


「こら、そんな暴れるな! 痛いだろ!」

「だったらさっさと放しなさい!」

 海が近づくにつれ、どんどんジタバタと動きが激しくなっていく。

 活きがいいなんてもんじゃない。


「うおっとっと」

 それでも放さない俺は、彼女を取り落とさない俺は、まさに紳士だった。


「放せって言ってるでしょうがっ!!」

「ゴホォッ……」

 ラヴの拳は俺に痛恨の一撃を与えた。

 だからさラヴちゃん……グーパンチでおへそをちょんちょんするのは、やめて……。

 しかしそれでも止まらずにラヴを抱え海へひた走る俺は、やっぱり紳士だった。


「ちょっと、本当に放して! 止まって! いや、いやぁ!」

「どうしたラヴ、そんなに俺のことが嫌いか!?」

「嫌いよ!」

 こんなときにだけ素直なやつだ……。


「嫌いだけど、今は違うの! お願いだから止まって! …………わ、私、泳げないのよ!」

 ラヴがそう叫んだときだった。

 世界が一瞬静止……。

 は、しなかったけど、俺の足は停止した。


「え?」

 今、泳げないって言った?

 ラヴが? 勇者が?

 いやいやまさかそんなわけあるかよ、聞き間違いに違いない。


「ごめんラヴ、もう一回言ってくれる?」

「……私は、お、おお、泳げないのよ」

 俺の腕の中で縮こまり、俯きながらそう呟いたラヴ。

 かぁーいい……。


「トンカチなのか?」

「カナヅチなの!」

 ああそうか、まぁどっちも同じような気も、しないでもないけど。


「いや、カナヅチかどうかは分からないけど、と、とにかく泳げないの……」

 なるほどね、だからあの時海に行くのを嫌がったわけだ。

 その割にはノリノリで水着とか着ちゃってるけど……。


「勇者なのにどうして泳げないんだ?」

 冒険に支障を来たさないんだろうか、ヘタしたら死傷を来たすだろうに。


「何よ!? 悪い?」

「いや別に、泳げないことが悪いとは思わないけど。大体泳げるから何だって話しだし」

「そ、そうよ、そのとおりよ。それに私は、船を操縦できるもの」

「え、船運転できるの?」

 そうよ、と、どうだと言わんばかりに、ラヴは腕を組んでみせる。

 ただ格好が格好、お姫様抱っこされてるだけに、あまり格好はついていない。


「泳ぎ方は習わなかったけど、船の操舵の仕方は完璧に教わったわ」

「それは確かに、泳げるなんかよりずっと凄いかもな」

「そ、そうでもないわよ」

 とか言いながらも、お姫様はまんざらでもなさそうなご様子。


「それならラヴ、泳ぎ方は、俺が教えてやろうか?」

「本当に?」

 と、一瞬目を輝かせたラヴだったが、すぐに訝しげな目で俺を見る。


「でも、アンタなんかに、泳ぎ方を教えることが出来るの?」

「うん、ある程度は……」

 別に俺だって泳ぐのが上手だとか、得意だとか、そういうわけじゃないけど。

 まぁ人並みには泳げるし、少しくらいコツだって教えられる。


「……ま、まあ、別に教わってあげてもいいわよ」

「やれやれ、そうですか。ならお教えさせていただきますよ」

「それはそうと、まず降ろして」

 降ろさなければ三枚に下ろす、とでも言わんばかりの殺気を放つラヴ。


「はい……」

 今から泳ぎ方を教わる相手を襲おうとは、とんでもないやつだ。

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