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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第一部 異世界で遊びまSHOW!
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第陸拾捌閑 メイドイン魔王

 そうして、すったもんだの末――

「すったもんだあったもんだ、です」


 ようやく木を集めた俺達は――

「あんな壮大な出来事を、かなり要約しますね」


 ヴァイオレットに案内され、魔王城から程近い彼女の家、小人達の集落がある場所へと来ていた。

「私は小人達の集落ガール」


「ってさっきからうるさいんだよ! 喋ってないで、さっさと作業やっちまおうぜ!」

「やっち魔王ですか?」

「……もう俺、お前食っち魔王かな」

「わ、私を食べても過去は変えられないと言ったはずです」

 本当に過去を変えたくなってきたよ、この子と出会ったと言うか、出遭ったことをなかったことにしたい。

 本当に饒舌じょうぜつな小人だ。


「饒舌と言うより、上舌じょうぜつと言って貰いたいです」

「無理だね、お前はただくだらない駄洒落を連発してるだけだろ」

 上手くも何ともない。

 さて、と……。


 ヴァイオレットに案内され辿り着いた、その集落の場所、魔王城近くの林付近。

 草木が乱立したその場所にはしかし、家と呼べるようなものは建っておらず、使えなくなってしまった家を解体したときに出たであろう、小さな木がそこらじゅうに散乱しているだけだった。

 散乱と言ってもそこはさすが小人、そんなに目に見えて散らかってるわけではない。

 俺から見れば、公園の隅に子供がポイ捨てしたお菓子のゴミが溜まってる、程度の散らかりよう。

 マナーのなってない人間が、花火のゴミをそのまま放置して行った、程度の散らかりようだ。


「失礼しちゃいます、それでも私たちにとっては一大事です」

「ああ、そうだな悪かったよ」

 それにゴミのポイ捨ても、その程度のもの、で済ませられるような問題じゃない。


「いえ、まぁいいんですけどね、毎年のことですので」

 毎年のことなのかよ……。


「で、ヴァイオレット、俺は何をすればいい?」

 木を集めて、加工することはできても、俺に建築の技術は微塵たりともない、誰かに指示を、師事をしてもらわないと。

 まぁ小学生の工作程度の家でいいなら、作れないこともないけど。


「それについては大丈夫です、降ろしていただいてもいいですか」

「ああ」

 俺は肩の上のヴァイオレットを手のひらに乗せ、そっと地面に下ろした。


「少々お待ち下さい」

 ヴァイオレットはそう言うと、林の方へ駆けて行った。

 そうして待つこと数分……。

 目の前の林の、木の根元や草の間からひょっこり顔を出したのは、ヴァイオレットと、七人の小人よろしく、七人の小人……そのままだ。


「お待たせしました。この人たちは大工さんですので、何をすればいいかは彼らに聞いてください」

 ちなみに真ん中のは私の父です、とヴァイオレット。


「わかった」

 いかにも力持ちだと言わんばかりの体格をした、青年小人や、いかにも棟梁とうりょうだと言わんばかりの、いかつい顔をしたおじさん小人。

 彼らは大工と言うだけあって、手には小さなハンマーや、ノコギリ、ノミにかんななんかを持っている。


「あーえっと、お父さん……」

 ひとまず挨拶をしようと、真ん中の、いかにも棟梁とうりょうなヴァイオレットの父に声をかける。


「僕に娘さんをください」

「お父さん、私のお腹にはもう赤ちゃんがいるの」

「よかろう、娘を大切にしてやってくれ」

 何て、寸劇も交えつつ……。


「じゃあ、俺が木を切りますんで、大きさや形の支持はお願いします」

 俺がそう言うと、棟梁顔のお父さんは一歩前に出る。


「分かりました、手伝っていただきありがとうございます」

 そして軽く頭をさげた。

 と、言うことで、お父さんに指示を受けながら、のこぎりでのこのこしたり、ノコギリでギリギリして、木を切り始めた俺。

 お父さんには『貴様にお父さんと呼ばれる筋合いはない』、何てことは言われてない。


「にしてもヴァイオレット」

「ハイハイ何でしょう魔王さん」

「どうして毎年家がダメになるのが分かってて、川の近くに家を建てるんだよ」

 目と鼻の先には、今でもまだ流れが少し速い、川が見えている。


「魔王さん人間の体のほとんどは、何でできているか知っていますか?」

 ん? いきなりどうしたんだ……?


「何ですか魔王さん、バカさん。まさか分からない、と言うわけではないですよね?」

 既にバカ呼ばわりも、気にならない俺だった。


「えーっと……水分だろ?」

「…………」

 え……何その沈黙、もしかして間違ってるとか?


「正解です、さすがですね魔王さん」

 と、ニッコリ笑う彼女。

 やっぱりバカにされてるとしか思えない。


「魔王さんの体の六割がバカで構成されてるのと同じで、人間の体の約六割は水分で出来ています。それは魔族でも同じです」

 つまり私たち小人の体の約六割は、水分で出来ています、と彼女は言う。

 ふむ、まぁそれはいいとしよう……。


「じゃあ本当にそうか、確かめさせてくれ。そうだな、まずはその服が邪魔だ」

 俺はヴァイオレットが着ている、白いワンピースをぺリっとめくる。


「きゃぁぁぁぁ! 何するんですか!! どこの変態バカですか!!!」

 ここの変態だ。


「ごめんごめん間違えた」

「イッツジョークですか?」

「ああ、イッツ変態ジョークだ」

「変態はシャレになりませんっ」

 どうやら『HAHAHA!!』とは、ならなかったらしい。


「悪かったよ。俺が本当に言いたかったのは、それでも、君たちの体の約六割が水分で出来ていたとしても、もっと川から離れた場所に家を建ててもいいじゃないか、と言うことだ」

 もっと、川が氾濫しても被害の及ばない、林の奥の方に立てればいいじゃないか。


「簡単に言ってくれちゃいますね、この魔王ヤローは。分かりますか? バカりますか? 体の構造が人間と同じと言うことは、私たちも毎日水分が必要なんです! 私たちは川に水を汲みに行くんです、そんなに遠くにしたら大変じゃないですか! 魔王さんにしては数歩でも、私たちにはアドベンチャーですよ! 毎日が大冒険ですよ!」

 魔王城に行くのなんて、長、超、大冒険でしたよと、ヴァイオレットはまるで氾濫した川のように、止めどなくそう捲くし立てた。

 激流に飲まれた気分……ではなかった。


「なるほど……」

 ドラゴンの一歩が俺達の数歩分であったように、俺達の一歩は小人の数歩、いや、数十歩分だというわけだ。


「そういうことです、だから仕方なく川の近くに家を建てるのです」

 いや……命の水を得るために、命を張るとか、本末転倒だろそれ。

 命じゃなくて、水を張れよ。

 何だか、他に対処のしようがあるような気も、しないでもないんだけど。


「それにこれには他にも利点があります」

「利点?」

 ヴァイオレットは小さな人差し指をピーンと立てた。


「毎年新しい家に住めるのです」

 そう言って目をギロリと輝かす彼女。

 キュピーンッという効果音まで聞こえるほどだ。

 でも分からない、その価値観は分からない。

 俺なら住み慣れた所の方がいい。


「じゃあさヴァイオレット、穴を掘って奥のほうに水を引いてこればいいんじゃないのか?」

「まだ分かりませんか、バカ。私たちがそれを作るには時間がかかりすぎます。そして出来たとしても、小さすぎて雨でも降ればすぐに埋まってしまいます」

「なら俺達が作ろうか?」

 と言っても、うまくできるだろうか……?

 穴は掘れるけど、それだけじゃただの汚い水たまりみたいになるだろうし。

 いい感じに元の川と繋いで、用水路みないなものが出来ないだろうか。

 こう、石で周りを固めたりすれば――


「そういうのは、技術屋の子人ドワーフさんの領分ですね」

「分かってるなら、なぜ頼まない」

「言ったでしょう、私たちの行動範囲は酷く狭いと」

 そうか……ならその辺のことはまた今度、何とかしよう。

 とか何とか、ペチャクチャ一見無駄な話をしてる間に、木を全て切り終わった。

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