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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第一部 異世界で遊びまSHOW!
68/224

第陸拾伍閑 美女爆弾

 ネネネだった。

 今の状況で一番厄介な奴が来てしまった……。


「あら、まおーさまお一人ですの?」

 と、不思議そうな顔をするネネネ。


「え? どうして?」

「何やら血痕などという物騒な言葉が聞こえたものですので、誰かと言い合いでもしてるのかと」

 どうやらネネネはヴァイオレットに気付いてないらしい。


「ああ、血痕じゃない、結婚だよ」

「ネネネにとってはそちらの方が物騒ですの」

 『あの方はどなたですか?』と、心の中に語りかけてくるヴァイオレットに、『まあ待て、あいつにばれたら厄介だ』とテレパシーを送り返す。

 またぞろこの女は誰だと、問いただされてはたまらないからな。


「まおーさま、ネネネだってまおーさまと繋がっておりますのよ? さっきから誰とこそこそやってるんですの?」

 バレ……てる!? 末恐ろしいな……ネネネなら立派な貴婦人ならぬ、鬼婦人に、いや奇婦人になれそうだ。

 それにしても俺の心読まれ放題じゃないか、プライバシーもクソもねぇ。


「いやんまおーさまったら、心の中でネネネをめちゃくちゃに……」

「してねぇ!」

 とんでもない捏造だ。

 え? 考えてないよ? 考えてないってば。

 魔王様嘘つかない。


熱象ねつぞうだなんて、ぱおーんさまったらいやんですの」

「誰がぱおーんさまだ!」

「まあまあまおーさま、そういきり立たずに」

 誰のせいだと思ってるんだ。


「で、まおーさま、いったいどなたとこそこそヤッてたんですの?」

「……」

 仕方ない、隠し切れないだろうし、正直隠すようなことでもない。


「この子だよ」

 と、俺はネネネの視線を誘導するように、テーブルの上にいる小さな少女、小女のヴァイオレットを手で示す。

 するとネネネは、ワザと強調するように胸を両腕で挟み込みながら前屈みになった。


「まぁまおーさま! この女の子は何ですの!?」

「この小は小人だよ」

「こどもですの!?」

 俺と同じリアクションするなよ……。


「とうとう生まれたんですのね、ネネネとまおーさまのこどもが」

「魔王さん、これは魔王さんの斜め上を行くリアクションです……」

 とんでもねぇと言ったような顔で、そう言うヴァイオレット。

 まぁ俺からすれば、これもまだ予想の範囲内なんだけど。


「まおーさま、どうしてこどもが産まれたのを教えてくださらなかったんですの!?」

 いや、こどもを産んで気付かない君の方に問題が……じゃない。


「よく見ろネネネ、この子と漢字をよく見るんだ。この子は俺達のこどもじゃない、ただの小人こびとだ」

タダ(無料)のとは失礼ですね、私はそんなに安くありません」

 なら、指輪一個の小人か。


「あらあら本当ですわね……」

 ネネネはヴァイオレットに顔を近づけ覗きこむ。


「よく見たらネネネの子ではありませんの」

 よく見なくてもてめーの子じゃねぇよ。


「おほほほ、少々マタニティハイだったもので、見間違えましたの」

「お前のはただのハイだ!」

「は~いですの」

 ……はぁ、この噛み合わなさは既に神がかって来たな。


「で、まおーまさどうしてこんなところに小人少女がいて、まおーさまとこそこそヤッてるんですの?」

 ちょくちょく文に悪意を感じる。

 というか切り替えが早すぎだろ、一連の意味不明なやり取りを、あたかもなかったかのような顔で進めやがって。


「あったかもなかったかもですね、魔王さん」

 その点についてはあったと断言したいところだ。


「まおーさま、早くお答え下さいですの」

 えっと何だ? 質問内容は……あぁはいはい。

 なぜ小人少女がここにいて、俺とこそこそやってたか、だな。

 まぁ色々あったんだろうし、詳しいことは知らないけど、譚的に言えば――


「そんな物語を語らないでください、端的にお願いします」

「そうか、ならそうしよう。この小人、ヴァイオレットが城に盗みに入ったのを、俺が捕まえたんだ」

 だから彼女は今ここにいて、俺と会話をしていた。


「この文にこそ悪意を感じます! 端的というより嘆的たんてきです、嘆きたい気分です」

 いくら嘆こうと事実は事実だ。


「泥棒ですの?」

「そうだ」

 うま○棒でもなければ、きなこ棒でもない、ただの泥棒だ。


「ならまおーさまと一緒ですのね」

「そういうことだ……ん? 違う違う、どういうことだ? 俺が泥棒?」

 泥棒と言うならラヴがそうだろうに、いつだったかネネネの危ないスクール水着を盗んだ彼女こそが。


「泥棒ではないとおっしゃいますの?」

「え? 逆に聞くけど俺は泥棒なの? 俺はいったい何を盗んだって言うんだよ」

「それは…………ネネネの心ですの。ポッ」

 ポッっじゃねえ!

 銭○警部もびっくりの回答だよ。

 ここはカリオスト○の城じゃない、魔王の城だ。


「いやぁ魔王さん、私はあなたのことをバカだバカだと言って来ましたが、彼女はとんでもないですね」

 とうとう、とんでもないというような表情が、言葉に変わってしまった。


「何といいますか、彼女は私の予想の斜め上を飛行している、と言いますか垂直落下をしていると言いますか、逆噴射をしています」

 よく分からない例えだけど、通常の軌道から逸れている、つまり常軌を逸している、とそういうことだろうか。

 まったくもって、間違いではない。


「それで、小人ちゃんはどうして、お城にお泥棒にお入りになさったんですの?」

 ネネネは椅子に座り、テーブルの上にいるヴァイオレットに話しかける。

 実にご丁寧な口調の取調べだった。


「それについては話せば長くなるのですが。しかくしかくしかくのかくがかくかくでして」

「通じるか!」

 かくかくしかじかだろ! かくかくしかじかでも通じるか微妙だ。


「そうでしたの、それはお気の毒ですのね」

「はい」

「……っ!?」

 分かってた、通じるのは分かってた。


「と言うことでまおーさま、小人ちゃんのマイホームを作るお手伝いに行きましょうですの」

「行きましょう、手伝って下さい魔王さん」

「なぜそうなった……」

 しかくしかくのかくがかくかくの中で何があったんだ? 


「だってまおーさま、お家がなければ交尾もまともに行えませんもの」

「いやいやちょっと待てよ」

 確かに家がなくなってしまったのは大変なことだ、一日でも早く建て直さないとダメだ。

 でも、だ。


「家イコール交尾をする場所っていう考えを、まずは正して欲しい」

「まあ、まさかまおーさまお外で……」

「さすが変態バカですね」

変態バカって何だ! もう既に原型もとどめてないじゃないか!」

 というかつっこむところはそこじゃない、どうして今の会話でその発想に至るのかというところだ。


「は? 何言ってるんですが魔王さん。バカ(魔王)さん。もともとはバカなんですから原型は留めてるじゃないですか」

 随分な言い草だなほんと……しかも本気のジト目だし。

 ラヴが可愛く思えてくるよ。

 いやラヴは可愛いんだけどね、可愛いんだけど今はそういうことを言いたいんじゃない。


「言葉のあやとりですね」

 話がもつれるから黙ってて欲しいところだ。

 大体どうしてここまで言われて、俺はこの子を助けないといけないんだ?


「何ですか魔王さん、私がこんなにもお願いしてるというのに、助けてくれないんですか? 見損ないました」

「お願いされた覚えもなければ、見損なわれるほどの付き合いでもない」

「あなたは変わりました、あの何でもくれたあなたは素晴らしかった。ロープいや、ヒモになりたいほどに」

 結局自分のことばっかりじゃないか、俺だってなれるもんならヒモになりたいよ。


「まおーさま、ネネネも産み損ないましたの」

「だろうな!」

 まったくもうまったくもう……。


「まぁまぁ魔王さんそう怒らないでくださいよ、今までのは全部冗談ですから。ね?」

「またイッツジョークなのかよ」

「イエス! イッツジョークです!」

「「HAHAHA!!」」

 ……ふむ、何だかこれで全部許してしまいそうになるから、ビックリだ。


「そういうことですから、今までのことは謝ります、そしてお願いします」

 ヴァイオレットは腰掛けていたスプーンから立ち上がると、深々とお辞儀をした。


「なにせ雨の多い時季ですので、早く建て直したいんです、どうか手伝っては貰えないでしょうか?」

「……分かった、分かったよ。家作り、手伝うよ」

「本当ですか!?」

「ああ」

 城の近くで困ってる人、困ってる小人がいるんだ、それを知って助けないわけにもいかない。


「その代わり、質問に答えて貰った分のお金は、これでチャラだ」

「分かりました、そうと決まれば善は急げです」

 ヴァイオレットは荷物をまとめると、俺の腕を登り始め、肩に腰掛けた。


「さあ出発進行ですよ魔王さん。レッツゴーです!」

 切り替えの早い奴だ……。


「レッツゴーですのー!」

「ネネネも行くのか!?」

「もちろんネネネもイキますの」

 こりゃ一筋縄では行かなさそうだな。


「ロープだけにですか?」

「違うよ」

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