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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第一部 異世界で遊びま章
64/224

第陸拾壱閑 日常に潜む非日常

 そうして紆余曲折、右往左往、上下左右、縦横無尽を経て無駄に広い廊下。

 ラヴとエメラダが作ったお菓子、薬草マフィンとハーブティーを囲むように、円になって座る、俺、ラヴ、ネネネ、ルージュ、エメラダ、クゥ。

 どうでもいいけど、薬草マフィンって何だか字面が危ない。


「で、一体何をするの?」

 お茶の香りをかぎながらラヴ。


「トランプだよ」

「トランプ?」

 ラヴは首を傾げ、それにつられるように、ネネネとエメラダとクゥも首を傾げた。

 ふむ……ルージュがトランプについて言及はしなかったから、異世界にもトランプはあるのかと思ってたけど、どうやら違ったらしい。

 ルージュがトランプを知ってたのは、亀の甲より年の功という名の、メタのおかげだろう。


「トランプというのはだな……」

 俺はそれから小一時間ほど、トランプが出来てから現代に至るまでの歴史を語った、と言えば嘘になる。

 だってそうだろ? 問題なのはトランプとは何か、じゃない。

 だから俺が言ったことは、要約しなくてもこうだ。


「この数字の書かれたカードで遊ぶ」

 問題なのはカードについて、じゃなくて遊び方とそのルージュだ。

 ルージュじゃない、ルールだ。


「今回はその中でも一番簡単な、ババ抜きっていう遊びをしようと思う」

「またワシは除け者か?」

 涙目で俺を見上げるルージュ……分かってて言ってるだろ。


「まぁまおーさま、ババアだけ抜き、だなんて、()()()

「誰がババアだけ抜きって言った!」

「仲間はずれなんてアンタ最低ね」

 と、蔑むような目で俺を見るラヴ。


「いや、ちが――」

「アスタロウ……」

 静かに首を振るエメラダ。


「あ、いやだから――」

「アシュタ、仲間はずれはよくないのだ」

 え、あ、ちょ、ど、どうして!?


「どうしてこの展開で、俺が悪者にならなきゃいけないわけ!? ババっていうのはだな、ジョーカーのこと、ババアのことじゃない」

 などと必死に弁明を繰り返し、話を逸らすようにそのままルールの説明をした。

 ルールについては皆意外とすぐに理解してくれた……と思いたい。

 少なくともラヴとエメラダ、最初から知っていたであろうルージュについては、そう言える。

 でも一部頭の中お花畑’s(おはなばたけーず)のネネネとクゥはどうだろう……まぁ大丈夫か。


 そんなこんなで、ようやくトランプ、ババ抜きを始めたわけだけど、正直話にならない。

 トランプって遊びはどんなものでも、相手との駆け引きが重要。

 つまり相手にどんなカードを持っているのか見透かされないように、ポーカーフェイスでいるのが基本だと思う。

 もちろんババ抜きだって例外じゃない、誰がジョーカーを持っているのか、どれがジョーカーなのか、相手に悟られないようにしなきゃいけない。

 でも彼女たちにはそれが全く出来ない……。


 ラヴはジョーカーが来たら、ポーカーフェイスでいようと必死になり、逆に白々しくてバレバレ。

「ラヴ、またジョーカー引いたんだね」

「な、何のことだかさっぱりだわー」

 とんでもない棒読みだ。


 ネネネは「おーっほっほっほっほ」と、高笑い。

「どうしたんだよネネネ、急に大きな声出して」

「いえねまおーさま、こうしてネネネの手中にババアが収まっているかと思うと、少々気分が良くなってしまったんですの」

 何て器の小さいやつだ。

 というか、ババは持ってちゃいけないし、持ってることを堂々と言ってもいけないと思うんだけど。

「あらまおーさま、イッてもいいんですのよ?」

 はいはい。


 ルージュは「あすたぁ……」と、涙目になる。

「まぁまぁルージュ」

「これがあの、類は友を呼ぶ、と言うやつなのかのぉ」

 ババアつながりですか、ババ友ですか。ジョーカー集めてババ会でも開きますか。


 唯一いつも表情が変わらないエメラダ、彼女は強いだろうと思ったけど、これが酷い。

 ポーカーフェイスではあるんだよ?

 でもジョーカーが来た瞬間、目にも留まらぬ速さで、手裏剣のように投げ捨ててしまうんだもの。

「エ、エメラダさん、どうして投げちゃうんですか?」

「……?」

 彼女は何を言ってるのアスタロウ、と言いたげに首をかしげる。

「アスタロウ……これは持っていてはダメなのもの……」

 だからって投げるとは、とんでもない……試合放棄だよ……。


 クゥに至っては、やっぱりルールがいまいち分かってなかったらしく、「見て見てアシュタ、来たらダメなやつ来たよ~!!」なんて喜んで見せてくる。

「よかったね」

「うん! よかったのだ!」

 しっぽが凄い揺れてる、本当に喜んでるのか……能天気というか無邪気というか、バカだ。


 まぁ全員がレベル低過ぎて、引くくらいに低過ぎて、逆に成り立ってるからいいか。

 それに何より、皆楽しそうだし。



「とうとうこの時が来たのう年増、けちょんけちょんにしてやるわい!」

「おーっほっほっほっほ、その言葉そっくりそのままお返ししますの。勝つのはネネネですのよ!」

 最後に残ったのは、ネネネとルージュ。

 立ち上がり、背景に炎のエフェクトが見えるほどに白熱した二人。

 二人はただのトランプ勝負で、まるで最終決戦でもするかのような大仰なセリフを吐いてみせる。


「「いざ尋常に、勝負!」」

 ネネネはカードを一枚、ルージュはカードを二枚持っている。

 そしてカードを引くのは……あ、あれ……カードを引くのはルージュだ。

 つまり

「あすたぁ……」

 勝負は引くまでもなく決まっていた。


「おーっほっほっほっほ。どうやらネネネの勝ちのようですわね」

「ふっ、こんな子供の遊びで真剣になりおって、ワザと負けてやったのがわからんのか、この年増が」

 ふっと鼻で笑い、これまでのお返し、と言わんばかりにネネネを挑発するルージュ。


「な、何ですって!?」

「お? 今、吸ってと言ったかの? やってやろうか?」

「キィィィィ! やってやりますの」

 そこでにやりと笑うネネネ。


「ワンちゃんが! さぁあのババアと遊ぶんですのよワンちゃん!」

 そう指示を出したネネネだったがしかし、クゥは

「ボクはもう眠いのだ」

 と言って、丸まって寝てしまう。


「え、どういうことですの!? ワンちゃん。ワンちゃん!」

「おやすみなのだ~」

「はっはっはっはっは、これで終わりじゃ年増」

 どうやらネネネの、対ルージュ迎撃用戦闘型生物兵器も、完璧というわけではないみたいだ。

 まぁ犬というものは、基本的に一日十数時間寝るらしいからな。


「幼女の力なめるなよっ!」

「いぃぃぃぃやぁぁぁぁですのぉぉぉぉ」

 何をしても結局こうなるんですね、君たちは。


「ねぇ魔王、あの子達はほっといてトランプやりましょう」

 散らばったトランプをかき集めるラヴ。


「何だよ気に入ったのか?」

「ち、違うわよ! ただ少し気に入っただけ」

 気に入ってんじゃないか……。


「そうだな、そうしよう。エメラダもやるか」

「……」

 エメラダは飽きたのか、無言で首を横に振り、お茶をすする。

 俺とラヴはこの後二人で、暴れるネネネとルージュ、寝るクゥと、それをよしよしするエメラダを横目に、夜までずっとババ抜きを続けた。


「あっダメ! そっちは引いちゃダメ!」

 もちろん俺の全勝、実に幸せだった。

 だって目の前でラヴの百面相を、拝むことが出来たからね……グヘヘ。


 そして俺は思った、これからもこんな騒がしい日々が一生続くんだろうと、こんな楽しい毎日が死ぬまで続くんだろうと。

 そう信じて疑うことはなかった。


「――よ――――がで――ぞ――テヘッ」

「え? ラヴ何か言った?」

「いいえ、何も。そんなことより早く次のゲームしましょうよ」

「あ、ああ」

 なんだったんだ? まあいっか……。

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