第伍拾玖閑 外が雨なら中で遊べばいいじゃない
「あーそーべーアースーター」
夢のような朝食後、外は雨が降っていて特に何もすることがない俺は、何の用途のために作られたのか分からない、ただただ無駄に広い廊下に、大の字になって寝転んでいた。
横には同じく大の字になって爆睡しているネネネ。
窓の近くに置いてあるソファーの上には、丸まって寝るクゥ。
「かーまーえー」
そして、大の字になって寝ている俺の腹の上には、遊べや構えとうるさいルージュ。
彼女は俺の腹の上に座り、その白黒縞々ニーソを履いた小さな足で、俺の頬をグリグリ。
「遊ぶったって、何するんだよ。中で出来ることは少ないし、外は雨だぞ?」
「亀?」
「甲水か!?」
「鮫?」
「鮫水か!?」
「攻め?」
「攻水か!?」
「ダメ?」
「請う水……か!?」
「ああ、雨じゃな」
「何だよそれ、もうええわ」
「「どうも、ありがとうございました~」」
伝説のコンビ雨天決行のライブだった……。
「よし、アスタ外に行くぞ!」
「なぜそうなった!?」
雨が降っていることに、気がついたんじゃなかったのか。
「外には甘水が溜まっておるからの、楽しいに決まっておる」
「違う、雨水だ。降っているのは飴じゃなくて、雨だ」
「じゃあ外には行かんのか?」
「行かないよ、たまにはこうやってのんびり過ごすのもいいだろ?」
このイカれた世界に来てからというもの、慌ただしくて仕方がない。
「う~」
つまらんのぉ、と、ふてくされたように俺のお腹の上に、うつ伏せで寝転がるルージュ。
そんなだらだらとしている俺達に
「アンタ達何してるのよ」
と、ラヴの声。
首だけで声のする方を向くと、ラヴは呆れたような目で俺達を見下げていた。
彼女は、お菓子を作る材料を倉庫から取って戻ってきたのだろう、たくさんの荷物を抱えている。
「やあラヴ」
「聞いてくれママよ、パパが遊んでくれんのじゃ」
「あらかわいそうね~って誰がママよ! こ、こここ、こんな変態と夫婦なんてごめんだわ!」
俺もラヴが妻だと困るな……命がいくつあっても足りなさそうだし。
「ア、アンタも、ゴロゴロしてるだけなら遊んであげなさいよ!」
「何して?」
城の中で何をして遊べばいいんだ、囲碁か? 将棋か? オセロか? チェスか? トランプか?
「ん~そうね……」
と、首をひねり思案顔のラヴ。
「そういえば、倉庫にボールがあったじゃない」
「ああ……」
確かこの前、倉庫で宝を漁ってるときに、バスケットボールのようなものがあった気がする。
「なんじゃと!? アスタよなぜ今までそれを黙っておったのじゃ」
「いや、だから外は雨が降ってるんだよ? ボールはお外で使うものであって、お家の中では使いません」
ネネネに言わせれば、ボールは家の中でこそ使うものなのかも知れないけど……。
「これだけ広ければ大丈夫じゃ」
まぁ確かに広いけどね……キャッチボールくらい優に出来そうなくらい広けどね。
君たち加減知らないでしょ?
「よしアスタ、今すぐボールを取りに行くぞ!」
ルージュは言うが早いか、寝転がっている俺の服の襟を掴み、引き摺りながら歩き始めた。




