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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第一部 異世界で遊びま章
59/224

第伍拾陸閑 彼女たちは銭湯と戦闘を勘違いしている

「はぁ~」

「気持ちええのぉ~」

 例によって例の如く、食後風呂にやってきた俺。

 二十五メートルプールと見間違うほどのただただ広い浴槽の縁に、ルージュと二人で並んでもたれかかり、大きくため息をつく。


「それにしてもアスタよ」

 と、既に当たり前のように男風呂に入っているルージュ。


「何だよ」

 それを既に当たり前のように扱っている俺も、どうかとは思うけど……。

 まあ、理不尽な光の反射や、不条理な湯気なんていう、わけの分からない大人の事情みたいなもので、彼女の体は見事に隠されてるから、問題はない。


「いいかげん、新しい女子おなごが入ってきたら、次のシーンは風呂というのは、どうなのじゃ?」

「メタな発言はやめろ」

「ネタ?」

「メタだ」

 まぁ確かに、ネタ的な発言ではあるかもしれないけど。


「大体ルージュ、お前はどうして知っててはいけないようなことを、たくさん知ってるんだ?」

 伝説のコンビの、多分ボケ担当であるブラッドレッド・ボルドー・ルージュは、ネタでたまに知ってるはずのない、いや、知っててはいけないようなモノを使ってボケをする。

 それがなぜなのか、新キャラ登場→風呂の流れより、そっちの方が気になるよ。


「アスタよ、ワシは千に届かんというほどの歳を重ね生きておるんじゃぞ? そのくらい当たり前じゃ」

「おばあちゃんの知恵袋的な何かですか……」

「そうじゃ」

 そうですか、ルージュちゃんは七+九百九十歳ですからね。

 いや、でもだからと言って、歳を重ねた程度で世界を超越するほどの知識を手に入れられると、困るといいますか、何と言いますか……。


「と言うか今更だけど、九百九十七歳って、お前は鶴かよ」

「鶴ではない、ツルペタではあるがの」

 まぁワシの知識については、あまり気にするでない。

 ルージュはそう言うと、逃げ出すように、風呂の縁を蹴りスィーと泳いで行ってしまう。



「おーっほっほっほっほ、やっぱりワンちゃんとは気が合いますのね」

 ルージュの姿が湯気で見えなくなったと思ったら、今度は後ろからネネネとクゥの声が聞こえた。


「うん、子があるのだ」

 子があるじゃねえ、気が合うだ。

「そうですのよ、ネネネとまおーさまの間には子供がいますのよ」

「赤ちゃんなのだ?」

「いないよ!」

 嘘つきと、嘘を信じちゃう子のペアって、最悪で最凶だな……まじで災厄だよ。


「いないいないばぁなのだ?」

「いないいないまでは合ってるけど、ばぁは違う」

 そんなことをして遊んであげる子供はいない。


「あらあらまおーさま」

「あらあらアシュタ」

 まるで打ち合わせたかのように、二人して首を傾げる。


「あらあらまおーさまじゃねえ」

 ネネネは、その美しいバストも、見事にくびれたお腹も、真っ白な太ももも、自分で隠すつもりはない。

 全ては湯気と光、つまりは大人の事情まかせ。


「あらあらアシュタでもねえ」

 クゥも、その芸術品のような美乳も、綺麗な形のおへそも、健康的に焼けた褐色の四肢も、まったく隠すつもりはなさそうだ。

 そう全ては、世界の意のままに。もちろん俺にも見えていない。

 ならなぜ描写してるのかって?

 シルエットと、足りない場所は妄想と想像と努力で補っているんだよ。


「ココは女湯じゃない男湯だ、分かってるのか? 特にクゥ」

「分かってるのだ」

「ならどうしてこっちに来た!?」

 君は女の子でしょうが……。


「アシュタと一緒にお風呂入りたかったのだ!」

「そんな都合のいいことがあるか!」

 こういうときに使うんだな、それなんてエロゲって。


「だってアシュタと一緒に遊びたかったのだ、お風呂は楽しいのだ!」

 ふむ、なるほど。

 確かに子供の頃は、風呂って結構楽しかったイメージがあるな……。

 一種のプールや、水遊び的な感覚だったのかもしれない。

 おもちゃなんか持ち込んだりして、のぼせるのも忘れて遊んだもんだ。

 分かった分かった、じゃあそこはいいとしよう。


「そのアシュタってのは何だ?」

 俺の名前はアスタですよ?

 アインシュタインの略ですか? 舌出した方がいいですか?


「アスタと」

 クゥは、右手の人差し指を立てる。

「ご主人様で」

 逆の手も、右手と同じように人差し指を立てる。

「アシュタなのだ?」

 そして、立てた右手と左手の人差し指をごっつんこ。

 なぜ疑問系?


「マスタの方がよかったのだ?」

「マスタ?」

「アスタとマスターで、マスタなのだ?」

 だからなぜ疑問系? と言うのは置いといて。

 なるほど。ほぼマスターの要素しかないような気もするけど。

 それだけに、マスタの方がアシュタよりご主人様っぽくていい。


「マスタと呼んで――」

「ねえまおーさま、マスタって並べ替えると卑猥ですわね」

「アシュタと呼んでくれ」

 アシュタの方が、マスタより異世界っぽいし、魔王っぽいし。

 こう、エメラダのアスタロウと合わせて『アシュタロス』的な。


「分かったのだ」

「うん。まあ好きに呼んでくれたらいいけど」

 俺は再び縁にもたれかかり、肩までお湯につかる。


「アスタよ、足を着かずに往復出来たぞ」

 と、湯気の中から徐々に姿を現すルージュ。


「ひいっ……」

 しかし彼女は俺の後ろに視線を向けると、クゥの存在に気付いたのか、立ち止まってしまう。


「おい年増、ケルベロスなどを連れて来るでない、風呂に毛が浮いてたまらんわい」

 ルージュは、ネネネをキッと睨みつける。


「どうしてネネネに言うんですの? ワンちゃんが自分でこっちがいいと言ったんですのよ?」

「嘘を言えこの大年増が、お主がそそのかしたんじゃろうが」

「何ですって!?」

「お? なんじゃ? やるのか?」

「やってやりますの……」

 マジですか……またですか……。


「ワンちゃんが! さぁワンちゃん、またまたあそこのババアが遊んでくださるんですのよ、GOですの!」

「わ~いなのだ!」

 ルージュ目指して、風呂に飛び込むクゥ。


「ちょ、お、おにゅし、く、来るでない!」

 水を掻き分け、逃げ出すルージュ。


「まてまて~なのだ~」

 じゃぶじゃぶと、それを追いかけるクゥ。


「ひ、卑怯じゃぞこの年増!」

「まてまて~」

「おーっほっほっほっほっほっほ。これでネネネはまおーさまと二人きりで、ゆっくりお風呂に入れますの。ね、まおーさま」

 風呂につかり、つついと俺の方に寄って来るネネネ。

 すると突然今までネネネがいた場所が、ドカンっと大きな音を立て爆発し、水しぶきが大きな柱をつくる。


「ひ、ひぃっ!?」

「な、何ですの!?」

「わからない」

 俺のオナラではないことは、確かだけど。


「おのれ年増が……」

 声のする方を見上げると、ルージュがまっ赤なオーラをその身にまとい、宙に浮いている。

 そして瞳を妖しく光らせ、牙をむき出しにし、低くうなる。


「覚えておれと言うたじゃろうに……」

 どうやら爆発の原因はルージュのようだ。

 彼女の広げた小さな手の平には、その手より更に小さく、血のようにあかい球体が浮いている。


「おいおいネネネ、ルージュ怒ってるぞ」

「おほほほ、大丈夫ですのネネネにはワンちゃんがいますもの。さぁまおーさま、あんなババアはほっといて、ネネネとゆっくりお話しますのよ」

 君はゆっくり会話なんて出来ないでしょ? そもそも会話にならねえ……。

 と、言うか。


「そんなのんきなこと言ってる場合じゃなさそうだぞ?」

「どうしてですの?」

「だって、ほら……」

 ルージュによってだろう、クゥは完全にされ、湯船に仰向けで浮いている……。


「あらあら……おほほのほ」

「死ね年増が! 雨弾ロリポップ!!」

 ルージュがそう叫んだ瞬間、彼女の周りに先ほどと同じ球体が、いくつも出来上がっていく。

 そしてその紅い球は、一斉にネネネに降り注ぐ。


「いぃぃぃぃやぁぁぁぁですのぉぉぉぉ!!」

ねやぁぁぁぁ!!」

 必死で逃げるネネネの通った後には、ドドドドという幾重にも重なった爆音と、水の柱が並び立つ。

 いや、ホント、まったく、暴れすぎでしょ。

 この二十五メートルプール並みの風呂が、波のあるプールみたいになってるんですけど。

 しばらくしてもルージュの攻撃はやむことなく……。


「助けでですのぉぉぉぉ!」

「わ~っはっはっはっはっはっは」

 ルージュは腰に手を当て、嬉しそうに高笑い。

 立場が逆転しちゃってるよ。

 そして調子に乗ったルージュの攻撃は収まることなく、更に勢いを増してゆき、男湯と女湯を隔てる壁をぶち壊し、とうとうバトルの舞台は女湯へと。


「ちょっとアンタ達何やってんのよ!」

 ラヴの怒号が飛ぶ。

 既にバトルは新たな局面を迎えたみたいだ、爆発音に混じって金属音が聞こえる。

 きっとラヴの剣だ。彼女まで巻き込んで、ドンパチし始めたに違いない。

 爆発と悲鳴は金属音をも交え、轟音は更に大きくなってゆく。


「はぁ~実に平和だ」

 この後ネネネとルージュ、そしてとばっちりでラヴまでもが、エメラダにボコられたのは言うまでもないことだろう。

「「ひぃぃぃぃやぁぁぁぁ~!!」」

「どうして私までぇぇぇぇ!?」

 本当に平和だ。

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