第伍拾閑 奴隷少女ゲットだぜ!
「あ~痛い」
剣で切り裂かれた頬が痛い、でも当たったのが頬でよかった、心臓とかだったら遺体になってたよ。
「ご、ごめんなさい! もうっ、何度も謝ったでしょう!?」
「へいへい」
重たい荷物を持ちながらラヴと二人、奴隷ちゃんを引き取るために、再び奴隷商のもとへ向かう。
あれから色々と物色し、選別し、交換するものを決めた。
選んだのは、ネネネが入っていた装飾過多な鎧一式、剣を数本に、宝石類をを数十個。
いつぞやのドラゴンの羽も高く売れるということだったが、他に使い道があるかもしれないと、今回は残しておくことにした。
「よっこらしょ」
「よいしょ」
ドスンという音を立て、それらの荷物を奴隷商の前に置く。
「ヒヒヒ、これはこれはお帰りなさい」
「これでどうだ?」
「ではでは、ヒヒヒ」
奴隷商は置かれた荷物を鑑定するかのように、見始める。
褐色黒髪ケモノちゃんは、未だに敷物の上で丸まって寝ていた。
俺には彼女の、ショートの黒髪などは目に入らない。
あのたまにピクピクっと動く三角の耳、そしてパタパタと地面を叩くフサフサの尻尾。
早くさわりたいっ! 早くモフモフしたいっ!
お、おっと間違えた……俺の目的はそんなことじゃない、彼女を助けてあげることだ。
早く鎖を取ってあげたいっ! 早く自由にしてあげたいっ!
そして、そしてっ……ぬぉぉぉぉ!!
「何クネクネしてるのよ気持ち悪い」
「いえ、何でもありません……」
危ない危ない自重自重、ラヴの胸くらい自重しないと。
「ヒヒヒ」
鑑定が全て終わったのか、俺が持ってきた物を地面に置くと、商人はニヤニヤと笑った。
「鎧一式、剣が長剣・短剣合わせて四本、装飾品・宝石類が合わせて十三点……ふむいいだろう、商談成立だ、ヒヒヒ」
商人はそう言うと、それらの荷物を後ろにあった馬車のようなものに積み込み始める。
「そいつはもうアンタのものだ、好きに持ってって、好きに使うといい。と言ってもしばらくは薬で寝てるがね。ああ、あと鎖の鍵も渡しておくよ、ヒヒヒ」
ということなので俺は商人から鍵を受け取り、丸まって寝ている元奴隷少女を抱きかかえる。
「ムニャムニャ……」
とうとうゲットだぜ! ピッピカチュウだぜ!
こ、こんな近くに耳が……これはあれだな……犬だ!
一体これから、どんな素晴らしい生活が待ち受けているんだろう。
『ご主人様~』わぁ~おだ!
「よし、早く帰ろうラヴ」
「……」
しかしラヴはなにやら考え事をするように、褐色少女をじっと見ている。
「ラヴ?」
「……え? あ、ああ、ええ。」
「どうかしたのか?」
「いや、その子、どこかで見たような…………まあいいわ帰りましょう」




