第肆拾捌閑 ケモ耳奴隷とラブチュッチュ!
そんなことをしながら、とうとう最後の店にたどり着いた。
村の端っこでひっそりと絨毯を広げただけのその店にはしかし、商品は並んでおらず。
敷物の上に座った男と、丸まって寝ている肌の少し茶色い、ラヴくらいの大きさの女の子がいるだけだった。
一体何が売られているのか、さっぱり分からない。
「あの、ここは何を売ってるんですか?」
「ちょっと魔王」
いつの間にか手を離していたラヴが、店主に声をかける俺を止めようとする。
「なんだよ」
どうして止めたのか、その理由はすぐ分かった。
「ここは奴隷の店さ、ヒヒヒ」
店主はアクセサリー屋の店主より更に下品に、いやらしく微笑む。
「どれい?」
ああ、奴隷……。
この世界には奴隷制度が存在するのか。
よく見れば、丸まって寝ている褐色肌の女の子の首や手足には、頑丈そうな鎖が繋がれていた。
「ということは……」
「ご察しのとおり、この娘がうちの商品さ、ヒヒヒ。この村に来る少し前に捕まえた獣人なんだが少し扱いに困っていてね、今は薬で眠って貰ってるよ、ヒヒヒ」
獣人?
言われてみれば、少女の短髪で真っ黒な毛の頭からは、三角お耳が生えている。
そしてお尻のあたりからも髪と同じ真っ黒で、フサフサの尻尾が生えていた。
「お兄さん、一匹いかがかな? ヒヒヒ」
「胸糞悪いわね、いきましょう魔王」
と、目を鋭くして店主を睨むラヴ。
「いやちょっと待て……」
奴隷か……奴隷だろ?
これはもしかしてあれか? 元いた世界でよく読んだ、あの展開なのか!?
奴隷を買った主人公、しかし彼は奴隷を奴隷として扱わない。
そんな優しいご主人様に奴隷が惚れてだ!
ご主人様大好き、ラブチュッチュ!
俺は黒髪褐色少女を見つめる。
彼女は『ムニャムニャ』となにやら寝言を言っている。
控えめに見ても可愛い、しかもあの三角お耳と、フサフサの尻尾。
よっしゃきたー!!
「買います! ぜひとも買わせてください!」
「ち、ちょっとアンタやめなさいよ!」
「ラヴ、男にはやらなきゃいけないときがあるんだ」
俺はラヴの目を見つめ、力強くそう言った。
するとラヴも
「今がそのときってわけね」
と、力強く答えてくれた。
さすが俺の彼女だ。
「って言うとでも思った?」
お得意の乗り突っ込みだったみたいだ。
「一体何を考えてるのよ」
「俺は純粋にこの子を助けたいと思ってるだけだ。本気なんだ分かってくれラヴ」
念の為に言っておくけど、下心なんてない本当だよ?
いい展開に持っていって、あ~んなことや、こ~んなことをしようなんて決して思っていない……グヘヘ。
「分かったわ、好きにしなさい」
っとゆ~こっとで~。
「おいくら万円ですか?」
「そうだね、一千万万異世界円……」
「たかっ!!」
「と言いたいところだけど、ヒヒヒ。こっちとしても早めに処分したい、九百五十万異世界円でどうだい? ヒヒヒ」
それでも高いんだけど……。
オレの所持金五百異世界円。
「どうしようラヴ」
「知らないわよ、アンタが言い出したことでしょ? あの男と一発ヤレば? そしたら安くしてくれるんじゃない?」
「バカやろう……男同士だぞ?」
店主の男を見ると、彼はニヤッと笑みをこぼした。
「ひいっ!!」
や、やばい! あいつ男もいける口だ!
ほ、掘られる……。
「それだけは嫌だぁぁぁぁ!」
嫌だ、いやだ、イヤダ!
「ラ、ラヴ……」
「何よ情けない声出して……はぁ、まったく。アンタの城の倉庫には高級そうな装備とかいっぱい置いてあったわよ、それと交換すればいいんじゃない?」
「ほ、本当か……?」
「それでもいいわよね、店主」
ラヴは少しきつめの声で、店主に尋ねる。
「ええ、金額に見合っていればそれでも結構、ヒヒヒ」
「よ、よ~し。じゃあ城に戻って金目の物をもってこよう。店主、それまでその子は売らないでくださいよ」
「はいはいわかりました、まあ保障は出来きないがね、ヒヒヒ」