表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第一部 異世界で遊びま章
50/224

第肆拾漆閑 ラヴとラブラブ

 そんなこんなで俺とラヴは二人で村に来たわけだけど……。

「うわ~」

 俺がこの世界に来たばかりのときは、小さくてボロボロで人なんて数えるほどしかいなかったこの村。

 しかし今はどうだろう、キャラバンのおかげとはいえ、かつてないほどの賑わいを見せている。

 まるで祭りみたいだ、老若男女いろんな人が所狭しと歩いている。


「凄いでしょ?」

 ラヴは少し誇らしげだ。


「ああ凄い」

 村からはみ出すほどの店? でいいのかな?

 まぁ店だ。

 その様子は、テントを張るもの、テーブルを並べているものから敷物を敷いているだけのものと様々だ。

 そしてそこに並べられたたくさんの商品の数々。

 これも出店のようでより一層祭り感が出てて、何だかテンションが上がってきた。

 来てみてよかった、一体何が売ってあるんだろう。


「何かいいものがあったら俺も買ってみようかな」

 実は少し前、魔王じぶんの部屋にある、机の引き出しでお金を見つけたんだ。


「まずは見て周りましょう」

「ああ」

 と、いうことで俺達は端から順に、店を回っていくことにした。


 各店に並べられた商品は、フライパンや鍋、食器といったものから、花瓶やランプなんかのインテリアや雑貨、洗剤なんかの日用品、薬草等の医療品に医薬品、野菜や果物といった食品、そして装飾品などのこまごましたものまで、種類が豊富に取り揃えられていた。

 そしてそのどれもが手作りの一品ものといった感じの、とても趣のある商品ばかり。

 異国情緒と言うか、異世界情緒溢れるとでも言えばいいんだろうか。

 もしかしたら異世界的にはこれが普通なのかもしれないけど、俺には目に映る全てが輝いて見えた。

 ほんっとうに凄い!

 そんなことを頭の中で考えつつ、ラヴと雑談をしながら店を回っていると、彼女は


「これ可愛い!」

 と言って一つのアクセサリー屋みたいなところで立ち止まった。

 どうやらお目当てのものが見つかったみたいだ。

 彼女が持っているのはゴム? のびるからゴムだと思うけど、ゴムなのに宝石のようにキラキラしている、そんな不思議な商品。


「ねぇどっちの色がいいと思う?」

 ラヴは同じ商品を色違いで二つ手に持っている。

 片方が赤、もう一方が青。

 でたよ、女の人のこの質問。

 まさに地獄……。

 性質たちが悪いよ、既に答えは決まってるくせに、結局人の話なんて聞かないくせに。

 逆を言えば文句を言われ、正解しても本当にそうかと問い詰められる。

 意見を変更しようもんなら更に厄介になること間違いなしだ。


「聞いてるの?」

 ラヴは自分の顔の位置で、両手に持った二つのゴムをプラプラさせている。

 マジか……せっかくここまで珍しくまともに進んでるっていうのに、ここで間違えたら一気に無駄になるよ。

 と言うか普通に進みすぎじゃね?

 よしよしオーケーだ……。


「ラヴ、君が一番輝いているよ」

 俺は目を少女マンガ風にし、背景にバラを撒き散らしながらそう答えた。


「まじめに答えて」

「はい」

 普通に進んでるからこの辺で一回ひっくり返しておこうかと思ったけど、どうやら彼女は本気らしい。

 仕方ない、姉ちゃんや幼馴染の女の子の買い物に付き合わされてきたから、こんな質問に対する対処法は分かっている。


「どっちも似合うと思うけど、ラヴはどっちが気になるんだ?」

「う~ん、私は青が気になってるんだけど……」

 よしよし、これで準備は終わりだ。


「一度両方着けてみたら?」

「そうするわ」

 ラヴは金色の髪の毛を後ろ手でまとめあげると、手馴れた手つきで髪をくくる。

 ラヴさんうなじが魅力的っす、ハンパねぇっす。


「どう?」

 赤、青と両方着け終わると彼女は俺に問いかけてくる。


「うん、青の方が目の色とも合ってって、似合ってるよ」

 俺がそう言うと

「じゃあ青にする」

 と、少し安心したように微笑むラヴ。

 よしよし、成功したみたいだ……。

 成功? 嘘……だろ?

 ……まあいっか。


「おじさんこれください」

 ラヴは店主らしき髭の生えた中年のおじさんに、青いゴムを渡す。

 すると店主は

「お嬢ちゃんお目が高いね!」

 何てありきたりなセリフを吐いた。


「それは王都で名のある職人が手作りで作った一品だよ」

「いくらですか?」

 ラヴは不安げな顔をする。


「二千五百異世界円だよ」

「に、にせん……最近まともにモンスター倒してなかったからなぁ……」

 彼女は手元のお金を見てがっくりと肩を落とした。

 そんなことよりも俺は、この異世界の通貨の名前が『異世界円』だということに驚きだよ。

 なんだよそれ『○○ドル』見たいなものか?


「もう少し安くならないの?」

「それでギリギリだね。まぁお嬢ちゃんが一発ヤラせてくれるなら話は別だかな、グワッハッハッハ!」

 店主は髭をいじくりながら、下品に笑う。

 クソッたれな奴だな、髭じゃなくて違うもんいじくり倒しておけばいいものの。

 大体ラヴがそんなことするわけな――


「分かりました、じゃあ一発――」

「う~、やめてよラヴ~、お願いだからやめてよ~」

 俺はラヴを止めようと彼女に泣きついた、いや抱きついた。

 実に芝居がかっていた。


「何どさくさに紛れて抱きついてんのよっ!」

「いてっ……」

 殴られた。

 善意なのに、百パーセントの善意なのに。


「冗談は置いといて、実を売るような真似はよしなよ」

「実は売らないわよ、身は売るかもしれないけど!」

「そうだったね、みのってないもんね……乳」

「殺すわよ」

「はい……」

 俺の目の前には剣が突き付けられていた。

 こうなってはお手上げだ、文字通りのお手上げ(ハンズアップ)だ。


「と、とにかくさ、それ欲しいなら俺が買ってあげるから」

 俺はポケットから、もって来たお金を取り出す。

 誤解の無いように言っておくけど四次元じゃない、普通のポケットだ。


「おじさん、これで足りますよね?」

 俺が持っていたのは“1000”と書かれた紙が三枚。

 きっとこれで三千異世界円なんだろう。


「ああ足りるとも、しかもお釣りまで返ってきちゃうんだなこれが」

 店主は肩をすくめておどけてみせる。

 なぜそんなに得意げなのか……お釣りが返ってくることくらいは俺でも分かる、というか返ってこなければ詐欺だ。


「な? これでいいだろ?」

 しかしラヴは不満げだ。


「ダ、ダメよアンタに借りなんて作りたくない。それにアンタも何か買いたい物あったんでしょ?」

「いや、ざっと見た感じこれといって欲しいものはなかったよ」

「でも……」

 う~ん難しい子だ。

 よしわかった。


「じゃあこうしよう、俺がそのゴムを君に買わせてくれよ。俺が勝手に買いたいだけだから、借りでもなんでもない、だろ?」

 それでも彼女は少し不満げだったが、俺は無理やり会計を済ませる。


「おじさんこの青いの一つね」

「ハイよ」

 店主に三千異世界円を渡し、五百異世界円を受け取る。


「あ、ありがとう……」

 彼女はうつむきながらそうつぶやき、買った青いゴムで髪の毛をくくる。


「ぽっ……」

 あっれ~? あれあれ?

 おっかしいな~、何だかドキドキしてきたぞ?

 あれ? この子俺の彼女だっけ?

 ああ、そうだそうだ、この子俺の彼女だ。

 そんな大事なことを忘れるとは。


「さあ、行こうラヴ」

 俺は調子に乗って手を差し伸べる。

 手がちょん切られることも覚悟したがしかし、ラヴは俺の手をちょんと掴んだ。

 今日の彼女は実に素直だ。


「お~てぇて~つ~ないで~」

 更に調子に乗った俺は、幼稚園で歌ったことのあるような歌を歌いながら、繋いだ手をブンブンと振り回し、人ごみの中を突き進んだ。

 本当に迷惑な二人組みが、ここにはいた。

 いや、迷惑なのは俺だけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ