第肆拾壱閑 ヴラヴラヴラッシング 高
「で、ガラケーじゃなかった。村長さんさっき言ってた別件ってな――オウェッ!!」
「次はネネネですの」
そう言って俺の膝に飛び乗ってきたネネネ。
まともに話が進められるわけなかった。
「何やってんだよ!」
「ネネネも梳き梳き、夜伽夜伽して欲しいんですの」
彼女は俺の膝の上に座り、上半身だけをひねってこっちを向く。
なんだよ夜伽夜伽って……。
はぁ……ここでどれだけ断ろうと、結局やるはめになるんだろうからなぁ。
村長には悪いけど、仕方ない。
「分かったよ、夜伽はしないけど髪は梳いてやる」
「きゃはっネネネ嬉しすぎてイッちゃいそうですの」
「逝っちゃえ!」
ああ……横にいるラヴの殺気がものすごいんだけど。
やばいな、きっと『この変態がっ!!』とか思ってるんだろう。
分かってる、分かってるけど~分からない。
「まぁまぁラヴ、そんなに心配しなくても後でラヴ梳いてあげるから」
「なっこの変態がっ! そんな心配してないわよ!」
よし、進めるか。
「お待たせしました村長さん。で、別件というのは?」
俺はネネネの肩越しに村長さんに話しかけた。
ネネネの桜色の髪の毛も、綺麗だな何て思いつつね。
「それはですね、魔王殿にドラゴン退治をご依頼しようと思いまして」
「ドラゴン退治!? なぜ俺が?」
なぜ俺がドラゴンなんかと対峙しなくちゃいけないんだ?
倒せるの? ドラゴンって強いんじゃないの?
「は? 倒してくれないんですかドラゴン。ゲイル話が違うぞ」
「おかしいですね」
村長とゲイルは何やら二人でコソコソと話し始めた。
「では私が魔王様に確認して参ります」
ゲイルはそう言うと、俺の方へ近づいてきた。
「困りますよ魔王様」
ゲイルは俺のそばで小さな声で話し始める。
「何がだよ」
「私にだって体裁というものがあるんですから」
今更お前にどんな体裁があるって言うんだ。
貞操でも守ってろ。
「で、いったい何がどうなったら俺がドラゴン退治をするなんて話になるんだ?」
「それはですね私が村長に、魔王様は村に迷惑をかけていた罪滅ぼしとして、村人の言うことなら何でも聞くと教えたからです」
「お前のせいかよ!」
本当にこいつは……勝手なことばっかりしやがって。
「し、しかし魔王様にとって悪い話じゃないはずです。この機会に村人との関係をもっとよくしてはいかがでしょう」
まあ確かに何でも引き受けるのはちょっと厳しいにしても、罪滅ぼしはしなくちゃいけないし。
村人との関係も良くしなくちゃいけない。
マイナスがゼロになり始めているわけだけど、それをこれからはプラスにしていかなくちゃダメなんだ。
「よし……分かった」
俺がそう返事すると、ゲイルは静かに村長の横に戻っていった。
今日は珍しくゲイルがまともだということも分かった。
初登場以来じゃないかな?
「じゃあ村長さん、ひとまず依頼についての話を聞かせてくれませんか」
「はいはい、分かりました……」
村長はガラケーのような声で、ゆっくりと話し始めた。
「二日ほど前からですね、北の山からやってきた凶暴なドラゴンが、村の畑を荒らして行くのですよ」
凶暴なドラゴンがやってきてよく被害が畑だけで済んだな……。
「このままでは村の作物は育たず、私達は餓死してしまいます」
そうだな、それに村で作物が取れないということは、俺達が貰う分の食べ物もなくなるわけだ。
それはまずいな。
「ということで、そのドラゴンを退治して欲しいのです」
退治ね……。
「ビームで」
ビームでね……。
「ビームで!?」
なぜ? 何?
「どうして、ビームなんですか?」
「は? ビームで倒してくれないのですか?」
村長はまるで俺を挑発するかのようだ。
何だあのガラケー村長!
逆パカしてやりてぇ!
「おいゲイル話が違うじゃないか」
「おかしいですね」
再び村長とゲイルがコソコソ話しをし始めた。
そしてこれまた再びゲイルが俺の方へ近づいてくる。
「困りますよ魔王様」
「何がだ!」
「魔王様はドラゴンをビームで倒してくださると、言ってあるのですから」
何のこだわりだよ!
結局ゲイルのせいなんだな。
「はぁ……分かった分かった」
俺は手をヒラヒラしゲイルを村長の横に戻らせた。
どうしてビームなんだ?
そもそもビームなんて撃てるのか?
「ネネネはビームって撃てるか?」
俺の膝の上にいるネネネは、上半身だけをこちらに向ける。
「ええ一応、ネネネもそこら辺の魔物よりは魔力を持ってますもの」
「俺も撃てるかな?」
「まあまおーさま何を仰いますの」
そうだよね、撃てるよね魔王なんだし……。
「毎晩まおーさまの大砲から、ビームを放っていらっしゃるではないですの」
「放ってないよ!」
俺は一度だってネネネに我が大砲をお見舞いした覚えはない。
あぁ……ラヴの視線が痛い。
「で……魔王殿、倒してくださるのですかな? ビームで」
と、急かすように村長。
「あ……ああ、はい倒しますよ。倒しますとも、ビームで!」
まあみんなもいるし大丈夫だろう。
頼りになる勇者貧乳、怒ったら怖い隠れ巨乳。
そして何より恐ろしいのは、ギャグパワーで何でもやりかねない幼乳と豊乳だ。
ホント何をしでかすか分かったもんじゃない……。
とにかく乳が選り取り見取りだ。
まあこれだけ乳が揃ってりゃ、俺が魔力を使えなくても心配はないだろう。
「そうですか倒してくれますか、では北の山へ行きましょう。今から。」
今からね……。
「今から!?」




