表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第一部 異世界で遊びま章
42/224

第参拾玖閑 魔王城・ニアー・ザ・ガーデン

 と、いうことで畑へ向かうべく外へ。


「う~いい天気だな~」

 俺は思わずグーッと伸びをした。

 気持ちがいい。

 澄み切った空気、青々とした木々、広がる青空。

 そして元気に微笑む太陽。

 そんな太陽を見て俺も笑ってしまう、ふっどこのポエマーだよってね。

 

 元気な太陽とは逆に、俺の畑の作物たちはいつも全然元気がない。

 結局種を植えてから色々ありすぎたせいで、育て方が雑になってしまった。

 そのせいで、実りはあるものの、みんな形が歪で小ぶり。

 そしてそのほとんどがおいしくなかった。

 まあしっかり手塩にかけて育てたとしても、うまくいったかは疑問だけど。

 畑に着くと人影が見えた。

 エメラダだ。

 彼女は何かをやっている。


「おはよう、エメラダ」

「早くない」

 エメラダは俺を見ることもなくそう言った。


「そ、そうだね」

 そんなに遅くもないはずなんだけど……。


「何やってんの?」

「水」

 ほう、なるほど、水をやっていると。

 よくみると彼女が持っていたのは、ボコボコのじょうろだった。


「助かるよエメラダ、ありがとう」

 野菜に水をあげるという俺の仕事が、ひとつ減った。


「助けたのはアスタロウじゃない、植物」

「え?」

「植物が可哀想」

「そうなんだよ……でもいまいちやり方がわからなくて」

 俺も見てて可哀想だと思う。

 でも野菜の育て方なんて知らない。

 だからどうすればいいか考えて自問自答したところで、結局正しい答えは出てこないんだよね。


「私は分かる」

「本当?」

「本当。エルフは自然と共に生きる、だから植物の育て方はみんな知ってる」

 へぇ、そんなことも出来るのか。

 薬草も詳しいし、森に住んでるくらいだから考えてみればそうか。


「畑ちょうだい」

「畑が欲しいの?」

「ダメ?」

 エメラダは少しだけ首を傾ける。

 相変わらず眠たそうな目だけど、すごく綺麗だ。


「いや、別にいいけど……」

 畑なんて欲しいのか?

 あげるのはいいとして、もしあげたら畑で住みだしたりしないだろうか。

 いやない……ない……か?

 いや~この子達に限ってまともな考えは通用しないからな。

 きっと荒川の下の連中みたいに、魔王城・ニアー・ザ・ガーデンになって、物語をひとつ展開させるに決まってる。


「お礼……」

 エメラダはボソッとつぶやく。

 まだお礼の話を持ち出すのか……。

 助けて貰った身でこんなことを言うのもなんだけど、お礼なら十分してきたと思うんだよね。

 まぁ別にお礼じゃなくても畑ぐらい上げるんだけど。

 俺が育てるより、エメラダが育てた方がいいだろうし。

 よし!


「じゃあ、その代わりにその目をちょうだい」

「目は取れない」

 ふっふっふここまでは予想どおりだ、狙いはここからだ!


「それじゃあ、胸を触らせて」

「別にいい。はい」

 うんうん、そうだろうそうだろう……って、へ?

 てへ!?

 彼女は俺に向かって胸を突き出していた。

 嘘だよ冗談だよ、ちょっと困らせようとしただけだよ。

 それなのに別にいいって……こっちが別にいいよ。

 なんだろう、俺の人間性を試しているのか?

 いや、魔王性を試しているのか。

 魔王性だとしたらここで胸の一つでも揉むべきなんだろう。

 もっと言えば二つとも揉むべきなんだろうけど。


「ごめんなさい」

 俺は土下寝をした。


「触るのは遠慮させていただきます……」

「そう」

 エメラダは自分で自分の胸をモニュモニュと揉んだ。

 真顔で。

 ラヴが見たら発狂しそうだな。

 まったくけしからん。


「アスタロウはヘタレ……」

「え? 何だって?」

 ふっ出してやったぜ、ハーレム系主人公の必殺技『難聴イヤー・イヤー・イヤー


「と、とにかく畑はエメラダにあげるよ」

「本当?」

「ああ本当さ、これからは畑のことは君に頼んだよ」

「……」

 エメラダは少し嬉しそうに頷いた。

 うん、まあこれで長らく放置してあった畑の問題を、解決できそうだ。

 少なくなってきた食料の問題も大分緩和されるだろう。


「よし」

 とりあえず城に戻うと立ち上がったときだった。

 我が愛しの魔王城の方から、大きな爆発音が聞こえた。


「何だ!?」

 城の方を見ると、観音開きに開かれた窓からモクモクと煙が出ている。


「けほっけほっ」

 そしてその窓からひょっこりとネネネが顔を出した。


「あらまおーさま、おはようですの」

「おはよう。朝から元気だねぇ」

「まおーさまのまおーさまも、朝から元気でしたの」

 ぽっと頬を赤らめるネネネ。


「ハイハイ、そうですか」

「そういえば今朝、ネネネ達の子供がハイハイしましたの」

「嘘だね!」

 まず子供がいないよ。

 もしかしてジャッ君か?

 あいつとうとう動き出したのか?


「そんなことより何してるんだよ」

「そうでしたわ、助けてくださいですのまおーさま、ババアが暴れて――ウェ」

「おお、やっと目覚めたかアスタよ」

 ネネネを押しのけるようにして、窓から顔を出したルージュ。


「おはようルージュ」

 さっきからおはようって言うたびに、隣で呪文のようにエメラダが『早くない』って言うんだけど、なんとか必殺技で聞こえないようにしてる。


「何やってんの?」

「おいかけっこじゃ!」


「どこがですの!?」

「おぬしは黙っとれ!」

 ルージュがネネネの頭をポカンっという効果音と共に殴りつけた。

「痛いですの!」


「楽しそうで何よりだよ……」

「全然楽しくないですの!」

「はっはっはっは!」

 あ、そういえば……。


「ルージュ、これ着けるの忘れてるよ」

 俺はポケットから、朝拾った黒いリボンを取り出す。

 するとルージュは小さな両手で、自分の頭をペタペタとさわった。

 可愛い。


「本当じゃ、忘れとったわい」

 可愛い。


「すまんがアスタ、後で着けてくれんかのぉ?」

 かーわーいーいー。


「……おいアスタ!」 

「え? あ、うん……かわい、じゃなくて、わかった」

 危ない危ないルージュの魅力に取り込まれるところだった。

 いや、これだけ聞くと俺がロリコンみたいだけど、そうじゃない。

 決してそうじゃないんだ。

 吸血鬼の特性に魅了チャームってのがあるって聞いたことがある。

 そのせいだ。

 そう……うん、そう。

 ふとルージュを見ると、え? 何で見たかって?

 魅了だよ。

 彼女は遠くを見つめている。


「アスタ、城に向かって誰か来ておるぞ」

「お客さん?」

 と、エメラダ。


「さあ?」

 誰だろう。

 客が来る予定なんてないし、そもそも客なんて来たことないし……。

 嫌な予感がするなぁ。

 ……いや、嫌な予感しかしないなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ