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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第一部 異世界で遊びま章
38/224

第参拾伍閑 ドリルと妹とクラゲと戦闘機と

「あはははは~」

 ん? 何だ?


「捕まえてごらんなさ~い魔王~」

 砂浜でビキニを着たラヴが、そんなことを言いながらスローモーションで走っている。

 どんなビキニかはご想像にお任せするとして、ラヴがビキニ……?

 俺は悟った。


「これは夢だ」

 おいおい今更水着回ですか? さんざんお風呂で裸回やってきましたよ?

 まあとにかく、夢なら何をしてもいいんじゃないか?

 よしひとまずラヴを追いかけてみるか。


「グヘヘヘ~待て~ラヴ~捕まえてやる~」

「きゃ~」

 キラキラと太陽の光を反射する透き通った水。

 心地よい波の音に、ほのかに漂う潮の香り。

 眩しいほどに真っ白な砂。

 目の前には長い金髪を風になびかせ走る美女。

 そんなシュチュエーションで、ラヴはドリルのように回転し始めて、砂の中へ消えてった……。


「っておい!」

 何だってんだよ……まったく夢ってやつはとんでもないな。

 シュールな水着回だぜ。

 わけが分からず立ち尽くしていると


「おにーちゃん」

 そう言って誰かが俺の海パンを引っ張ってくる、いつの間に俺は海パンを穿いていたんだ。

 下を向くとそこにいたのは紅い髪の幼女、ルージュだった。

 いつもと同じような白黒でヒラヒラ付きの、小さい子向け水着を身にまとっている。

 おにーちゃんって……まあ夢だしね、気にしてたらきりがない。


「どうしたの? ルージュ」

 困ったように眉根を寄せる彼女、その顔はいつもと違ってものすごく幼女らしかった。


「おしっこ」

「おしっこ?」

 あ~おしっこがしたかったんだ、小さい子じゃなくても濡れた水着脱ぐのって大変だからね。

 よしよし。


「おしっこは海の中に入ってすればいいよ」

 そう教えてあげるとルージュは


「は~い」

 と、元気良く手を上げ返事をして、海の方へ駆けて行く。

 うんうん、元気な返事で大変よろしい。

 あ、良い子は真似しないでね……。

 しばらくしてすっきりしたような、はじけた笑顔で戻ってくるルージュ。


「しっかりできた?」

「うん! できたよおにーちゃん!」

 か……可愛い!

 俺は思わず、我が愛しの妹であるルージュに抱きついた。


「く、苦しいよおにーちゃん」

「あっいけないいけない、ごめんね?」

「うん、許してあげるっ!」

 ぐはぁっ!!

 俺はこのとき、一生かけてこの子を守っていくと誓った。


「あ、そうだ!」

 突然何かを思い出したようにルージュ。


「どうしたの?」

「お水流してくるの忘れちゃった」

 あらあら、おしっこをしたらお水を流さないとって……海の水は勝手に流れていくし、そもそも故意に流せないでしょ?


「流してくるねおにーちゃん」

「え? ちょっと……」

 足早に海へ戻っていくルージュ。

 ルージュが走って行った方をよく見ると、海から一本の棒が突き出ていた。


「ん? 何だアレ」

 ルージュはその棒についた赤いボタンのようなものを押した。

 しばらくすると、ゴゴゴゴゴという大きな音が鳴り響き、地面は揺れ、海には波が立ち始める。

 そしてより一層大きな音がしたと思った瞬間、海の水はまるでトイレを流したときのように、勢いよく渦を巻いてどこかに吸い込まれていく。

 吸い込まれて一度全てなくなった水は、これまたトイレよろしく戻ってきて、元通りの綺麗な海に戻った。


「おいおいマジですか……」

 規模がデカ過ぎる。

 というか……。

 どこを探しても、愛しの妹ルージュの姿が見つからない。

 渦に巻き込まれて、どこかに流されてしまったんだ。


「くそ! くそぉぉぉぉ!!」

 俺は地面にひざまずき、拳を強く打ち付けた。


「うあぁぁぁぁ!!」

 守るって……誓ったのに!

 ちっとも守ってなんてやれなかった!


「う、うぐっ…………ま、しょうがないか」

 夢だし。

 俺は涙を拭い、力強く立ち上がると、明日への一歩を踏み出した。

 な~んてね。


「さ、次はどうしたもんか」

 さながら夢見る乙女のように、一向に夢から覚める気配がない。

 なんだよどっかのお姫様みたいに眠ってるのか俺は?

 王子様のキスで目覚めるのか?

 嫌だな……俺男とキスする趣味なんてないよ。

 せめて玉子様とのキスくらいにしておいてもらいたい。

 あ、そのときは半熟でよろしく。

 そんなことを考えていると岩場の影からなにやら声が聞こえてくる。


「ウメコ~」

 ゲッ……。


「ダメよゲイルゥ~こんな場所で、誰かに見つかっちゃうぅ~」

「でももう僕我慢できないよ」

「あぁ~ゲイルゥ~」

「ウメコ~」

 ……人の夢の中でまで何やってくれちゃってるんだよ。

 いやそれにしても、せっかくの水着回だけどウメコの水着だけは絶対に見たくないな。

 なぜかって?

 だって想像してみなよ、はい目を瞑って。

 あ、目をつ瞑ったら文字読めないや。

 とにかく想像してみてよ、二足歩行のカバみたいな人間がビキニ着て、化粧してウッフ~ンってウィンクしてるところ。

 ほら見えてきた?

 こんなの別に見たくないでしょ?

 岩場の影じゃなくて草葉の陰からにしてくれれば、まだマシなのに。


「オウェ……」

 ちょっと気持ち悪くなってきた。

 気分転換気分転換。

 そう思って海の方を眺めてみると、波間に漂う何かが目に入った。

 近づいてみると、そこに浮いていたのは紺色のスクール水着を着た……。

 エメラダだった。

 胸の名前を書く部分には、平仮名で『えめらだ』と書かれてある。

 何してんだろう、エメラダは無表情のままでボーっと海に浮いている。


「エメラダ、なにしてるの?」

「クラゲ」

 彼女は首を振りながら、平坦な声でそれだけ言う。


「クラゲ?」

「エメラダじゃないクラゲ」

「クラゲなの?」

「そう」

 エメラダはコクコクと頷く。


「そ、そうなんだ」

 よく分からん。


「クラゲさん今日の海はどんな感じですか?」

 俺がそう尋ねると、エメラダは少し嬉しそうな顔をした……ような気がする、気のせいかもしれない。


「今日は水温と塩分濃度が高くていい」

 水温についてはいいとして、塩分濃度が高いと何がいいんだろう。


「そうよかったね」

「……」

 無言で頷くエメラダ。


「アスタロウもクラゲ?」

 え? この子はもしかして俺がクラゲかどうかを尋ねているのか?

 そうに違いない、見て分からないですか?


「違うよ、俺は人間だよ」

「そう」

 そうです。


「ならいいこと教えられない」

「え?」

 な、何だよいいことって!?

 聞いといた方がいいのか? お得なのか?

 まさか亀を助けた浦島さんみたいに、クラゲとお話した俺を竜宮城へ連れて行ってくれたりするのか?

 とにかく“いいこと”が何であれ、いいことなんだから聞いといて損はないはず。


「エメラダ……じゃなかった、クラゲさん? 俺もクラゲだよ?」

「本当に?」

 じーっと、俺に宝石のような瞳を向ける彼女。


「ほ、本当だよ」

 俺は手足をウネウネさせて、精一杯クラゲを演じた。


「そう、なら教えてあげる」

 そう言ってエメラダは、ゆっくりと沖の方を指差した。


「あそこに人魚がいる」

 何だって!?

 エメラダクラゲはそれだけ言うと、仰向けのまま海に潜りどこかへ泳いでいった。

 せめてうつ伏せで泳いでくれ……。


 エメラダが指さした方を見てみると、確かに少し沖にある岩の上に、人影が見える。

 それもピンクの……嫌な予感しかしない。

 でもまあ行って見るか。

 と、いうことで俺は歩いて沖の方まで行ってみることにした。

 もちろん海の中をね。

 綺麗なサンゴや色とりどりの魚を横目に、進んで行く。

 すっげ~綺麗だ、息もできるし。

 これは夢だからできることだね。

 まあ本物はもっと綺麗なんだろうな、こんなものはテレビで見ただけの記憶を寄せ集めて作った、妄想に過ぎないもん。

 あ~本物の海に行きたいな、この異世界に来てからまだ一度も見たことないし。

 今度場所を教えて貰って行こう。

 と、まあ、そんなことを考えているうちに目的地へ到着。


「思えば長い道のりだった……」

 バカなことをつぶやきながら、ザッパ~ンッ!! という効果音を立てて海の上に出る。

 岩の上に座っていたのは案の定ネネネだった。


「あらあらまおーさま」

「やあネネネ、君は人魚のモノマネ?」

 超際どい貝殻の水着を身にまとい、足には尾ヒレまでつけている。


「いいえまおーさま、人魚姫のモノマネではないですの」

 いや姫とは言ってないけどね。


「じゃあなんなんだよ」

「飛行機ですの」

「飛行機?」

「ええそれも、せ・ん・と・う・き」

 ネネネは立ち上がって両手を横に広げたかと思うと、いきなり空を飛び始めた。


「キィィィィンですの~おーっほっほっほっほっほ」

 尾ヒレだと思っていたのは飛行機の尾翼だった。

 でたらめだよまったく。

 ネネネは旋回すると俺の方に向かって飛んで来る。


「さあまおーさま、お食らいになってくださいですの~」

「え? な、何!?」

「ちくびーむっ!!」

 そんなネネネの掛け声と共に、彼女の胸の先から白いビームのようなものが放たれる。


「う、嘘だろ!?」

 そのビームは目の前にある大きな岩を易々と溶かしてしまった。


「おーっほっほっほっほっほ! さあまおーさま!」

「じょ、冗談じゃねぇ!」

 あんなもの食らってたまるか!

 俺はネネネに背を向け全力で海の上を駆け出した。


「ちくびーむ! ちくびーむ!」

 チュドン! チュドン!


「うわぁぁぁぁ」

 ビームが放たれるたびに海面が大きく水しぶきを上げる。

 そして俺は波に足をつまずかせ、盛大に顔から転んでしまう。

 波でつまづく!?


「そんなことあってたまるか!」

「ちくびーむ!!」

 後ろを振り返ると、ネネネのビームがもう目の前まで迫っていた。


「うわぁぁぁぁ! 何じゃこりゃぁぁぁぁ!」

「おーっほっほっほっほっほっほ!」

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