第弐拾陸閑 正体不明
文字数少ないです、次はもっと増やせると思いますのでご了承ください。
何か分かるかもしれない、そんな期待を持って村に来てはみたものの……。
「分からんのう」
と、腕を組みながらルージュ。
「ブラは何か分からないか?」
「私を下着みたいに呼ばないで」
何!? この世界はブラジャーが通じるのか。
「私も色々と病気については教わったけど、分からないわ」
一応ネネネにも視線を向けてみたが、案の定、首は横に振られる。
俺には聞くまでもないことだろう、異世界どころかもといた世界でだって病気の判断なんてできない。
ゲイルの言うとおり町の人々は端から端まで、正体不明の病気で寝込んでいた。
病状は皆同じで。
ごくごく軽度の発熱と、何かにうなされるようなうめき声を上げている。
ただ全員、苦しいと言うよりはどこか気持ちよさげなのだ。
とにかくどれだけ見ても、治し方はおろか、病名さえも分からない。
それにしても、新種の病気なのか?
この世界の医学はどれくらいのものなんだろう。
それともただ分からないだけ?
それとも理由なんてない?
「アスタとラヴリンの衝突で色々影響が出とるんかもしれんのう、ワシが目覚めたみたいに」
なるほど、一応もっともらしい設定は用意してあるわけだ。
「どうすればいいのかしら」
「まぁ病気を納める方法はある」
「おいおい誰が収納しろって言った」
「こんな病原体さっさと片付けてしまった方がよいじゃろ? ワシがチューッと血を吸ってそれで終わりじゃ」
そのチューッと突き出された唇に、俺がチューッとしたかったのはここだけの秘密だ。
「ダメだ治す方法を教えてくれ」
「方法はワシも知らん、じゃがそれを知ってる奴なら知っている。それは……」
「それは……?」
ルージュは色気たっぷりの笑みで、鋭い牙を舌でなぞる。
「エルフじゃ」
またか。
「あ奴らなら、いい感じに薬草を調合してくれるじゃろう」
「また探すのかよ……医者とかいないの?」
「石屋?」
「いや石材には困ってない」
「遺書?」
「もしかして墓石を購入しようと!?」
「一緒?」
「死ぬときは一緒にってか?」
「一生?」
「ああ、一生一緒にいるよ」
「一所?」
「うん、君と子供のために一所懸命働くよ」
「一子?」
「いや、二人は欲しい」
「あぁはいはい、医者じゃな医者、やっと分かったわい」
「何だよそれ、もうええわ」
「「どうも、ありがとうございました」」
伝説のコンビ久しぶりの営業だった……。
「医者など信じられんわい、エルフの方が確実じゃ」
「いや、でもそのエルフを見つけられなきゃ意味ないじゃん」
九十度茸のときみたいになったらどうするんだよ。
あの時は命に別状のない毒だったからまだしも、今回はどうなるか。
「大丈夫じゃ妖精に聞けばよい」
少しうとうとしていたネネネだったが、ルージュのその言葉に飛び上がり、なにやら落ち着かない様子。
「またネネネに頼るのか?」
……それこそあのときの二の舞になるぞ。
「違うわい、あんな年増の悪魔にはもう頼らん」
そう言われネネネは怒ることを忘れて胸をそっとなでおろした、そう胸を。
どうして二回言ったかって?
別に大事なことだったわけじゃないよ、ただ言いたかっただけさ、胸。
「あの青い髪の妖精のことじゃ」
ああ、そういえば出会ったな、髪の毛の青い妖精ティア、元気にしてるだろうか。
「でも、妖精の方が見つけにくいとか言ってなかったっけ?」
「大丈夫じゃ、妖精は一度見てしまえば見つけるのは難しいものではない」
ほお、そうなんだ。
「アンタ達いつ妖精なんかに出会ったのよ」
「ああ、ラヴが寝込んでるときにちょっとね」
「そう」
ラヴはあのときのことを思い出したくないらしい……。
「今回は性の者である、ラヴリンもおるしの」
「誰がラヴリンよ! 誰が性の者よ! 聖の者よ!」
「あんなにアンアンと大きな声で喘いどったくせに」
「ちょ、ちょっとそれは言わない約束でしょ!?」
「じゃあ盛の者か?」
「盛りついてないわよ! 仕方ないじゃないあれは毒のせいなんだから」
ラヴの顔は怒ってるせいか、恥ずかしいせいか、どんどん赤くなっていく。
「まあまあ二人とも、そこら辺にして早く森に行こう」
暗くなられちゃどうしようもなくなるからな。
「そうじゃな、ん」
「ん?」
ルージュはなにやら俺を見上げ両手を差し出している。
「疲れた、抱っこ」
「うっ……」
あはははは~かぁわいぃなぁ。
このまま抱きしめてギューッとしてすりすりして、一生離さずにいたいところだけど、そんなことをすれば俺がロリコンの変態みたいじゃないか。
だから……。
「や、やれやれしょうがないな」
っとでも言っておこう!
「まおーさま、ネネネも抱いて欲しいですの」
「お前が言うと違う意味にしか聞こえないよ!」
「ま、魔王、アタシも疲れたから――」
「しないよ!?」
と、いうことで、俺達は今度こそエルフに出会うべく、ひとまず妖精に出会いに森へ向かった。




