第弐拾伍閑 異世界のラッパー
「おはようラヴ」
朝食をとりにネネネとルージュと一緒に食事の間へ行くと、既にラヴが朝食を作り終えテーブルに並べ始めていた。
おいおいマジかよ、フッと気を抜くと『あれ? こいつ俺の妻じゃね?』って勘違いしてしまいそうだぜ。
「あら、おはよう」
あれ? 俺こいつと結婚してたっけ?
あぁそうだそうだ、そうだったよ。
あまりにも夢のようなことだったから、いまいち実感がわきにくいけど、こいつは俺の妻だ。
……おっと危ない危ない、思わず気を抜いてしまった。
なんてったって金髪碧眼貧乳だがそこがいい美女が、起きたら俺のために朝食を作ってるんだぜ?
誰でも勘違いしちまうよ、うん。
「おはようですのお母様」
「おはようじゃママ」
「私はアンタ達の母親になった覚えはないわよ!」
「おい年増姉、やはりママのご飯はうまいのぉ」
「そうですわねババア妹、世界一ですわ、ねえまおーさま」
「ん? ああそうだな、確かにかなりうまい」
いや、マジで。
「あ、アンタ達が毎日毎日私に作らせるから嫌でも上達するのよ!」
「ちょっとお待ちなさい! 愛ちゃんが母なら父はまおーさまですの!?」
どうしてそうなるんだ。
「つまり愛ちゃんとまおーさまが夫婦!?」
「ど、どうしてそうなるのよ!」
そうだ、言ってやれラヴ。
「こんな変態男と私が夫婦なんかになるわけないでしょ! 敵よ敵!」
と、ラヴは言ったが、ネネネはそんな言葉などまったく聞く気がない。
「それだけは許しませんの! だってまおーさまの妻はネネネですもの!」
「それこそどうしてそうなるんだ!」
「まあまおーさま、そんなこと言って、昨晩もあつ~い夜を過ごしたではありませんの」
「だから誤解を生むような発言をするな!」
全く熱い夜なんかじゃなかったよ、むしろ寒かったよ。
ネネネが俺の布団全部取っちゃうから!
「豪快でしたわぁ~ん」
「あ、アンタってやっぱり、最低最悪の変態ねっ!」
ラヴは持っていたフォークを俺に振りかぶる。
「ちょ、ちょっと落ち着けって、誤解だよ」
俺は慌てて両手広げ前に突き出し、待て待てとジェスチャーを送る。
「十回じゃない!」
「違う! これこそ誤解だ!」
「五十回!?」
「曲解だ~!!」
まあ朝からなんだかんだとありつつ、やっと朝ごはんを食べ始めたんだけど。
ようやくありつけたと思ったら、またややこしいのが城にやってきた。
「HEY魔王様YOU! COME ON!」
そう言って突然部屋に入ってきた男。
「誰じゃこいつ」
新キャラじゃない。
皆さんもご存知のアイツだ。
「朝早くからどうしたんだよゲイル」
四天王素早さ担当ゲイル・サンダークラップ(既婚)。
「村が大変なんDA・YO!」
今日はラップ調で登場。
「お前の頭も大変そうだな」
「俺は大丈BOO BO BOO!」
どこら辺がが大丈夫なんだ?
「で、村がどうしたって?」
「村に病気がMA・N・E・N! 俺の嫁もKA・N・SE・N!」
「病気? だからお前もそんなんなのか」
「俺は元気さYO! CHECK IT OUT! YO!」
確かに元気なのは認めるけどね、どう考えてもこいつが一番病気だろ。
「それで、俺達にどうしろと?」
「助けて欲しいのHERE WE GO!」
これが人に助けを求める奴の態度かよ……。
まあ、ゲイルの言うことをまとめるとだ、村に病気が蔓延したから助けてくれと。
「病気ぐらい村で対処できないのか?」
村の人たちの方がそういうこと知ってそうだし。
「正体不明のDISEASE! 村人全員SICK IN BED!」
ふむ、村人全員に被害が及んでるのか……確かにそれは助けないといけないな。
「でもゲイルの言うように正体不明の病気なら、俺達が行ってもどうしようもなくないか?」
俺達医者でもなんでもないぜ?
魔王と勇者と夢魔と吸血鬼。
「まあいいじゃない、ひとまず行ってみましょうよ」
青い瞳でじっと俺を見るラヴ。
う~ん、まあ行ってみれば何か分かるかもしれないしな。
ルージュが何か知ってるかもしれないし、ラヴだって勇者だし。
「……そうだな、とりあえずそうしよう」
何より最近少しずつ回復しつつある村人との関係を、更に進展させるいい機会だ。
「さすが勇者様マジRESPECT!」
「アスタ、そろそろこやつ殺ってしもうてもええかの?」
「ああ、ぜひよろしく頼むよ」
「GYAAAAAAAA~!!」
読んでいただいている方々、ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします。