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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SPRING:春】
204/224

第弐佰壱閑 居るのに、犬

 五月。

 月が五つ出る五月。

 の朝。


「いやぁそれにしてもエメラダ、山菜いっぱい採れてよかったな」

 背負ったカゴには“たけのこ”や“こごみ”といった、山の幸がたっぷり。

 今朝、日が昇ってすぐにエメラダと二人で山に入り、採ってきたのだ。

 夜中に体を揺すられて目を覚ましたら、エメラダが俺の上に覆いかぶさっていて、『どうした?』って訪ねたら『いく……』って言われたときは、それはそれは慌てたけども。

 まさか『いく』の示すところが山菜採りだったとは。

 カゴの中の山菜を見て、改めてどんな料理になるのか楽しみだなと思いながら、魔王城の庭を城の入り口へと向かい歩く。


「アスタロウは、山菜より三歳の方が良かった……?」

「いやエメラダさん、朝早くから三歳をとってきたとか、もうそれただの犯罪ですからね?」

「……そう」

「そう」

 と言うかお前は、俺を何だと思っているんだ。


「ならアスタロウは犯罪者……」

「なぜ!?」

「……たけの『こ』に、『こ』ごみをとってきた」

 子ってか? 誰がそんな屁理屈を言えと。

 と言うかとってきたのはエメラダも同じなわけで、そうなってくるとお前も犯罪者になるわけだけど。

 しかも主犯。


「そ、それにしても結構汚れてしまったな」

 整備されていない山に分け入る山菜採りは重労働で、五月の早朝とは言え汗もたくさんかいたし。


「城に戻って荷物を置いたら、まずは風呂に入って汚れを落とそう」

 もちろん風呂に入ると言っても、湯は溜めずに、シャワーだけだけど。


「アスタロウがまず入るのは……風呂ではなく牢」

「採ってきたもの全部山に返してきましょうか!?」

 とかそんなことを言いつつ庭を歩いていると

「あずだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 三歳よりはもう少し成長した、七歳くらいの紅髪の少女がどこからともなく現れて、そして物凄い形相で俺に向かって走ってくる。


「ルージュ……?」

「どこへ行っておったんじゃあ!」

「おっと」

 彼女は今にも泣きそうな声で叫びながら、俺の首に飛びついてきた。


「どうした、俺がいなくてそんなに寂しかったのか?」

「違うわい!」

 即答……傷付きますよ。


「ならどうしたんだよ」

「貧窮事態じゃ!」

「貧窮事態? 俺たちそんなに生活に困ってるか? 食べ物もほら、いっぱい採ってきたぞ?」

 ルージュがあまり好きじゃない、野菜だけども。


「間違えた、緊急事態じゃ!」

「緊急事態?」

「そうじゃ! 城に飢餓が迫っておる!」

「飢餓って、だから食べ物なら今採ってきたって」

 ルージュがあまり好きじゃない、野菜だけども。


「間違えた、城に危機が迫っておる、じゃ!」

「危機? 一体何を言ってるんだルージュ。 もう少し落ち着いて――」

「これが落ち着いていられるか! あれを見よ!」

「その前にルージュ、俺を見よ!」

「冗談を言っておる場合じゃないのじゃ!」

 ペシンと俺の額を叩く彼女。

 今日はどうにもノリが悪い。


「で? どこを見ろって?」

「あそこじゃ!」

「ん?」

 ルージュの指差す方向を見てみるも、そこには何もない。

 いつもと変らない城の庭が、芝の庭があって、奥にはいつもと変らない畑があるだけだ。


「何もないけど?」

「ある! もうすぐ来る!」

 来る?


「なぁルージュ、冗談を言ってるばっ――」

 ルージュの指差した方向から聞こえたドシンという大きな音に、俺は思わず言葉を飲み込んだ。

 そして耳を済ませてみると、続けて聞こえる、ドシンドシンというまるで足音のようなもの。

 気のせいか、地面が揺れてるような。いや気のせいじゃない、地面は確実に揺れている。


「き、きおった……」

 俺にしがみ付くルージュの腕に、力が入る。


「おいルージュ、一体何が――!?」

 突如城の影から、壁から、()()は顔を出した。

 それを見てとりあえず俺は

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 叫んでみた。

 叫んでみたのだけど、一体あれは何なのだろう。

 目算で十メートルほどもの高さのある。

 巨大で。

 真っ黒な。


「犬?」

 犬か?

 犬だ。

文字数少なくてごめんなさい。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

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