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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SPRING:春】
202/224

第佰玖拾玖閑 一風呂浴びるのも一苦労

 ベルの仕事に手抜かりはなく、シャワーからはしっかりお湯が出たし、湯船にもちゃんとお湯が溜まった。

 そしてその溜まった湯に浸かる、俺、逸花、ベル。

 それとネネネ、ルージュ、クゥ。

 ちなみにお騒がせ三姉妹が帰ってきたのは、ついさっきのことだ。

 朝帰りとは不良娘たちである。


 聞くところによると、捕まえたハーピーたちと意気投合して仲良くなったらしく、夜通し宴で暴れまくったのだとか何とか。

 たくましくて頼もしいやつらだ……。

 しかしそのせいで、体は砂埃で汚れ放題。

 そんなわけで帰ってきて早々、風呂に突っ込んだのだった。

 まあ丁度風呂を沸かしていたので、タイミング的にはナイスだったが。


「いやぁ~しっかし贅沢な風呂だなぁ~!」

 風呂の縁にもたれかかり、ぐーっとのびをするベル。


「確かになぁ」

 一般家庭の風呂と比較すると、贅沢過ぎる風呂である。

 しかも明るい午前中から風呂に入るという普段なかなかしない体験をしているので、その贅沢感はより一層増している。


「と言うか“贅沢”で思い出したけどベル。どうして女のお前が、男湯に入ることを“選択”した?」

 俺が入っているここはもちろん男湯だ。

 まあ普段女がここにいることが当たり前になり過ぎているせいで、ツッコミが頭も体も洗った後という今更なタイミングになってしまったけど。

 なぜ彼女が当然のようにここにいる?

 おかしいだろう。

 おかしいと言えば今普通に俺の隣に座っている、ネネネとルージュとクゥと逸花も、十分におかしいけど。


「女湯にも湯ははってあるだろう?」

 そこにはラヴとエメラダがいるのだから、彼女たちと一緒に入ればいいのに。

 女比率はこっちの方が高いけど……ただ何度も言うけどここは男湯だ。


「おいおいせっかくお湯が出たって言うのに、水臭いこと言うなって魔王! 親友だろ!?」

「いやでもね……」

「湯を溜めたことだし、今度はその中で、友好を温めようぜ! 裸の付き合いってやつさ!」

「友好は温めるものじゃなくて、深めるものだ」

 温めるのは、旧交だったっけ?

 まあ正直、どっちでもいいけど。


「そうだっけ!? じゃや友情を温めようぜ!」

 何かまた変ってる気がする。


「ちなみに“友情”が“愛情”に変った場合、“裸の付き合い”は“裸の突き合い”に変るらしいぞ! 私はこう見えても大人だから、ちょっとえっちなことも知ってるんだ!」

 にっしっしと笑うベル。

 卑猥なことを言っているのにそれをそれと感じさせないこの雰囲気は、大人ではなく、どちらかと言うと無邪気な子どもみたいだ。


「さてたっくん」

 と口を開いたのはもちろん逸花。


「ハイ」

 嫌な予感しかしない……。

 多分、なぜベルが風呂にいるのかを問われるのだろう。


「そろそろ私のターンでいいかな?」

 逸花のターンは、始まったらそれ以降全てお前のターンになりそうだからやめて欲しい。

 と言いたいところだけど。

 だけどそんなことを言ったところで、一体何になるというんだ。

 そんな要望が通るとは、思えない。


「この女房に、そんな要望が通るとは思えない。ふふっ面白い駄洒落だね」

 そんなことは一言も言っていない。


「言ったことにしておいた方が、たっくん的には都合がいーと思うけどなー」

「は、ははは。こ、このにゅ、乳房に、そんな棒が通るとは思えない……」

 何だか色々噛んでしまった。


「それってどーいう意味かな? 私の胸が、圧迫力が強くて棒が通る隙間もないくらいにおーきいって褒めてくれてると、そー受け取ってもいーのかな?」

 いや、そういうわけじゃないんだけど。ただ噛んだだけなんだけど。

 それに逸花の胸はそれなりに大きさはあるけど、棒が通らないほどの圧迫力を有するほどではないし。

 だがここは――!


「そ、そうそう、そういう意味だよ、逸花ちゃんナイスバディ!」

「ふふったっくんに褒められるなんて。私は気分が良くなったよたっくん」

 単純――

「でもだからと言って、許さないけどねー」

 ――じゃないんだなこれが……。


「さてたっくん、ここからが本題だよ。何を聞かれるのかは、もー分かってるんだよね? まー念のために口に出しておくよ」

 もちろん逸花は、どーしてベルちゃんが男湯にいるのかな? と思っていたとおりの言葉を口にした。


「さあ、どうしてだろうね?」

 正直俺にも分からないので、ベルに視線を向けると、彼女は

「親友だからだ!」

 と答えた。


「だってさ」

「だってさ、じゃないよーたっくん。桃ちゃんたちと一緒にお風呂に入ってるのを許したのは、彼女たちが家族だったからだよ? ベルちゃんは家族じゃないでしょ? ならこれは許されない行為じゃないのかな?」

「えっと、それは……」

「このままだと彼女にとってたっくんは“新友”じゃなくて、死んだ友、略して“死ん友(しんゆう)”になっちゃうよ?」

 死ん友って……ほとんど略せてないよ、縮んだの“だ”だけだよ。


「何だ魔王もう死ぬのか? ご冥福をお祈りするぜ!」

 もっと違うことを祈れよベル!


「ねーたっくん、“祈る”と“折る”って、字が似てるよね」

「おいちょっと待て逸花、そこでどうして俺の腕を掴む!?」

「え? 好きな人の腕を掴むのは、当たり前のことじゃないのかな?」

「違うよね!? その掴み方、明らかに腕折ろうとしてる掴み方だよね!?」

「さーたっくん、そうなりたくなかったら、必死に言い訳をしてね?」

 こんな理不尽な状況で、言い訳をさせてくれることを優しいと感じてしまった俺は、少しおかしいのかもしれない。

 さて、言い訳ね。

 人類皆家族!

 ……はダメか。

 じゃあ。


「えっとほら、家族、つまり親族の親と、親友の親は同じ字だから――」

「その言い訳で? ほんとーにいーの?」

 ……ダメか。


「あ、間違えた。そのいーわけで、いーわけ? なーんちゃってね」

 そんな駄洒落は、ラヴにでも言っておいて欲しいところだ。


「と言うか逸花、この件に関して俺は何も悪くないだろ!? 俺が一緒に入ろうって言ったわけじゃないんだから」

 確かに風呂に入っていけとは言ったけど。

 グヘヘ……ベルちゃん一緒にお風呂入ろう?

 とは一言も言っていない。

 男湯にベルが入ってきたのは、全て彼女が勝手にしたことだ。


「でも彼女が男湯に入ってきているのを知ってて、止めなかったでしょ?」

「それは逸花も同じだろ?」

 服を脱いでいるときでも、体を洗っているときでも、ここは男湯だから向こうへ行けと言うチャンスはいくらでもあったはずだ。

 でもそれをしなかった。

 俺もだけど、逸花も。


「むぅ……そこを突かれると痛いなぁ。正直私も、桃ちゃんたちがフツーに男湯に入ってるからと言うか、自分自身がフツーに男湯に入ってるから、女が男湯に入ることに違和感がなくなってきてるんだよね」

「だろう? 俺の気持ちが少しは分かってきただろう?」

 非日常も、毎日続けばそれはもう日常になってしまう。

 慣れとは非常に恐ろしいものなのだ。


「うん、今じゃ女湯に入ってる金ちゃんたちの方がよっぽど違和感があるよ」

 いや、俺は、そこにはさすがに違和感はないけど。


「じゃーまー今回は許してあげよう」

 逸花も甘くなったものだ。

 すっかりこの世界に、この世界のバカ共に染まりつつある。

 こうやって少しずつ、まともになってくれれば、丸くなってくれればいいけど。


「ちょっと待ってくださいですのまおーさま。さっきから普通に話していますけど、そもそもその女は誰なんですの」

 今更思い出したかのように声を上げたのはネネネ。


「どうして魔王城に、ネネネの見知らぬ女がいるんですの!? まさか正妻であるネネネが城を留守の間に連れ込んで、遊んでいらっしゃったんですの!?」

「違うよ」

 と言うかいつからお前は俺の正妻になった。


「そうなんですのね!?」

 違うって言ってるだろうに……。


「こうなったら、まおーさまには正妻の制裁を加えますの! オッパンチ!」

 自分の胸で俺の腕を殴る彼女。


「何がオッパンチだ! やめろ!」

「ならばパンチチですの!」

 一緒ですけど!?


「あのなあネネネ、この子はドワーフ。この子を城に連れてきたのは、風呂を直してもらうためだ。やましいことをするためじゃない」

 彼女が城にいるのはそれが理由。

 他には何もない。


「あらそうでしたの。でしたら制裁を加えるのはやめて、性器を咥えるとしますの」

「やめろ!」

 まったくもうまったくもう。


「しかしアスタよ」

 今度はルージュが、疑惑の目を俺に向ける。


「エルフっ娘のときにも同じようなことを言って、結局一緒に暮らしておるが?」

 あー……確かにエメラダのときも、薬を作ってもらったお礼に呼んだだけで他意はないとか言ってたっけ。


「でもほらそれは俺のじゃなくて、エメラダの意思があっての結果だし」

「まさかアスタよ。ワシが城に居らんうちに、ロリポジションの首を挿げ替えるつもりじゃったのか!?」

 挿げ替えるって。

 確かにルージュとベルの体型は似ているけど。


「そんなわけないだろ? ルージュは唯一無二だ」

「唯一無乳? 何を言っとるアスタ、無乳ならもう一人おるぞ?」

「それ以上はやめておけルージュ」

 ラヴがキレる。壁を隔てた向こう側にいるとは言え、胸のこととなるとあいつは鋭い。

 と言うか、朝から二人揃って胸の話ばかりするな。


「違うのだネネねーちゃんにルージュねーちゃん、多分アシュタは新しい奴隷を買ったのだ」

「買ってないよ!?」

 人聞きの悪い。


「買っただろ!」

 そこでツッコミを入れてきたのはベル。


「いや、買ってないからね!?」

「はあ!? 魔王は私の腕を買ったんじゃないのかよ!? だから私に修理を頼んだんだろ!?」

「そう言う意味ではそう……なのかな?」

 いや、ベルに修理をお願いしたのは、彼女の腕を買ったからではなかったと思うけど。


「アシュタは胸を買ったのだ?」

「いやクゥちゃん、胸じゃなくて腕ね」

 腕は買えても、胸は買えない。

 ラヴは、買えるもんなら買いたいだろうなぁ……胸。

 ってだから、胸の話ばかりするなって。

 そろそろラヴが――


「アンタたち!」

 ほらきた。ほらキレた。


「朝からムネムネってうるさいのよ! せめてネムネムって言ってなさいよ!」

 女湯から、ラヴの怒号が響く。


「落ち着けってラヴ」

「落ち着いてるわよ!」

「胸が?」

「……アンタお風呂から出たら容赦しないわよ。よーく首を洗って出てきなさい」

 は、はは、ははは、はははは。

 はぁ……。


「まおーさま、ネネネがよーく洗って差し上げますの。乳首」

「遠慮するよ!」

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

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