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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SPRING:春】
198/224

第佰玖拾伍閑 詐欺師かと猜疑心

「今何て?」

「何だよ、やっぱり魔王耳が悪いな。だから私がそのドワーフだって」

「またまた嘘なんかついて、大人をからかっちゃダメだぞ?」

 ドワーフって言うと、ヒゲを蓄えた、筋骨隆々の小さいおっさんだろ?

 こんな可愛らしい女の子がドワーフなわけ――


「私は嘘はつかない」

「マジで?」

「まーじでっ!」

 にっしっしと笑って見せるベル。

 ただふざけた様子はない。

 嘘だろ……これが、この子がドワーフ?


「なあラヴどうなんだ? この子、本当にドワーフか?」

 自分の中のドワーフ像と、目の前の少女ドワーフの姿がかけ離れ過ぎていて自分では判断がつかず。

 そもそもドワーフを見たことがないので、見たことがあるであろうラヴに真偽を確かめる。


「そうねぇ……正直ドワーフの女性は子どもと見分けがつかないのよ」

 困った様子のラヴ。

 そう言えばヴァイオレットが、ドワーフは子人だと、子どものような大きさの人だと言っていたけど。

 まさかこのレベルとは。

 本当に、子どもと見分けがつかない。


「男性は毛むくじゃらで、それとなく分かるんだけど」

 毛むくじゃらか、ベルちゃんの髪もかなり多いけど。


「後は、見た目以外だと力が強いのが特徴だけど」

「ああ、そう」

 子どもではありえない強さの力だったよなぁ、耳を蹴られたときも、尻を叩かれたときも。

 やっぱりそうなのか? ドワーフなのか?


「何だ魔王、疑ってんのか? 親友の私の言うことを」

「いやそういうわけじゃないんだけどねベルちゃん、何と言うか、子どもにしか見えないから」

「今さっきそこのパツキンねーちゃんも言ってただろ!? ドワーフの女は子どもと見分けがつかないって!」

 パツキンねーちゃんって。


「私はこんな愛くるしいなりをしているけど、れっきとした大人なんだ! だからベルちゃんじゃなくてベルさんと呼べ!」

「す、すみませんベルさん」

「んーやっぱ堅苦しいからベルでいいや」

 どっちなんだ……。


「まあとにかく私はドワーフだ、信じろ、親友だろ?」

 今出会ったばかりの人で、今出来たばかりの友人なんだけどね。

 親友と言うより、新友なんだけどね。

 まあ時間の濃さだけが、親友の定義ではないだろう。


「分かった信じるよ」

 嘘をつけなさそうな性格っぽいし、嘘をつく理由もよく分からないし。

 いや、詐欺かもしれないけど。

 と言うかそれならそうと、初めからドワーフだと言って欲しかったものだ。

 救世主とか言うから話がややこしくなった。 


「と言うか、え? 何? じゃあ、風呂直してくれるの?」

「だからそう言ってるだろ、何回言わせるんだ? 魔王はバカだって聞いてたけど本当なのか?」

 それはまあ本当です。


「それともまだ疑ってるのか? 私は悲しいぜ……親友にこんなに疑われるなんて!」

「う、疑ってるわけじゃないんだ、ただ虫のいい話だなって」

 風呂が直せないと困っているところに突然現れて、直してやるだなんて。

 (きゅうせいしゅ)と言うより、やっぱり詐欺っぽい。


「んーまあ確かに胡散臭いよな。よし分かった、じゃあ本当のことを言おう」

 え? 何? 今から何をカミングアウトされるの?

 もしかして全部嘘でしたとか? やっぱり詐欺でしたとか? そしてバカにされるとか?

 しかしそうではなかったらしく、ベルは真剣な面持ちで言った。


「魔王城の工事をするのが、私の夢だったんだ」

「夢?」

「そ、どりーむ。小さい頃からのな。だから救世主だとか直してやるとか言ったけど、あれはちょっと嘘だ、ごめん。本当は私がお願いする立場、城を直させて欲しいって。救世主なのも、私じゃなくて魔王」

「俺が救世主?」

「だってそうだろ? 城の工事はしたいけど、そんな機会ほとんどない。機械が故障するかも分からないし、したとしても、修理の仕事が私に回ってくるとは限らない」

 なるほど、俺達にとって都合のいい展開だとばかり思っていたけど、彼女にとっても、降ってわいたような都合のいい話だったわけだ。


「だから頼む魔王! 私に城の修理をさせてくれ!」

 言って、深々と頭を下げるベル。

 ふむ。


「どうする二人とも。まあ断る理由なんてないと思うけど」

「当たり前よ。私たちにとっても、願ってもないような話だわ」

 ラヴはようやく風呂が直るめどが立ったことに安心したのか、ほっと胸を撫で下ろす。


「逸花は?」

「私は何でもいーよ? その女の子に、たっくんが色目を使わなければね」

「は、はは、ははは……使うわけないだろ?」

 合法ロリだけど。

 合法ロリだけど!!

 俺はロリコンじゃないから!!


「と言うわけでベル、君に修理をお願いするよ」

「本当か!? 本当なのか!?」

 下げていた頭を上げ、ベルはその大きな瞳を輝かせる。


「ああ、本当だ。君に頼む」

「よっしゃ頼まれた!」

 ぐいっと、嬉しそうに力こぶを作ってみせる彼女。


「やった! やったぜ! 信じられない! 信じられないぜ魔王! 嘘じゃないだろうな!? あぁ!?」

「信じろよ、親友だろ?」

「いや、信じられない。だから約束をしよう、小指を出せ!」

 そこはそうだなって言えよ……。


「はいはい」

「ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーらはーりたーおす、ゆーびきった! よっしゃ、これでおっけーだ!」

「何か罰が軽いな」

 張り倒すって。


「私は嘘はつかないんだ! もし魔王が嘘をついたとしても、正直針千本なんて飲ませられないだろ? それじゃあ私が嘘をついたことになっちまう」

「そっか」

 だから罰は実現可能な“張り倒す”とね。

 たださっき早々に嘘をついていたような気がしないでもないけど……まあそれはいい。


「さて、じゃあ早速魔王城に戻るとしようか」

 修理に時間もかかることだろうから、作業に取り掛かるのは早いに越したことはないだろう。


「そうだな!」

「ん、でもちょっと待てよ?」

「どうした魔王」

「この場合、対価はどうなるんだ?」

 俺達もベルに城を直してくれと頼んだけど、ベルも俺達に城を直させてくれと頼んだわけで。


「ああ、そのことなら心配するな。対価はもう貰ったも同然だ」

「え……?」

 貰ったも同然?

 何なんだろう、俺はもしかして知らないうちに、城レベルの、何かとんでもないものをあげる約束をしてしまったのだろうか。

 気付かないように上手く会話を運ばれて……まさかやっぱり詐欺? 詐欺なのか?


「魔王は私に魔王城の工事をさせて()()()んだろ? 私の夢を叶えて()()()んだろ? これ以上にないとてつもない対価を、魔王は私にくれるんだ。だろ?」

 ああ、そういうことか。


「ベル、君はいい奴だな」

「当ったり前だ! 何たって魔王の親友だからな!」

 にっと笑うベル。


「じゃあちょっと待っててくれ、道具とか資材とか取ってくるから!」

 そしてそう言って、彼女は洞窟の方へと駆けて行った。

今日も読んでくださり、ありがとうございました。

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