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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SPRING:春】
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第佰玖拾肆閑 もしやメシア?

「本当にどうしたものか……」

「あの洞窟、どうにかしてやりましょうか」

「どうどう、落ち着けってラヴ」

 勇者らしからぬ、ラヴらしからぬ発言だ。

 それだけ風呂が直らないことに、焦っているのだろう。


「金ちゃん、後は導火線に火を点けるだけだよ? そしたらどーんってねっ」

「逸花!」

 何てことを言うんだ。


「ねーたっくん。もう一回ピンポン押して言ってきてよ」

「何と?」

「ダイナマイトとダイヤモンド、どっちが欲しい?」

「ダイヤだよ!」

 ピンポンに出ていきなりそんなこと聞かれるとか、怖すぎだよ。

 そんなの考えるまでもなくダイヤだよ。


「あのな逸花、武力行使はしないの」

「じゃー権力行使は? たっくん魔王なんでしょ?」

「……生憎、魔王にそんな権力はない」

 今日だって初っ端にあほうとか言われてるし。


「なら私のこの剣力(けんりょく)で――」

「それを武力と言うんだラヴ」

 今使うべきは賢力(けんりょく)、頭だ。

 どうすれば状況を打開できるかを考えるんだ。


「はあ……しかしどうしよう」

 ラヴの中に、諦めると言う選択肢はなさそうだし。

 はっ――

 クゥちゃんの犬力(けんりょく)萌え萌えパワーで!

 ……いや無理か。

 あいつはそんなタイプじゃない。

 あいつが持っているのは萌えパワーではなく、ただの純粋なパワーだ。

 それならばそのパワー、拳力(けんりょく)で扉をぶち壊して……ってこれは武力だし。


「う~ん……」

 こうなったら神頼みしかないか? 困ったときの神頼みって言うし。


「おお神よ、迷える子羊を救いたまえー」

「よお、話は聞いたぜっ!」

「っ!?」

 神に祈りをささげていると、突然、背中を叩かれた。

 こんな都合のいいときだけ神頼みをしたせいで罰が当たったのかと驚いて振り返ってみると、そこには、岩に腰を下ろした俺と目線が同じ高さの、小さな女の子が立っていた。


「私に任せな!」

 彼女は腰に届くほどにたっぷりと伸ばした緑の髪を揺らしながら、俺にグッドサインを向ける。

 がしかし――


「誰!?」

 こんな子ども、俺の知り合いの中にはいないはずだけど。

 ラヴと逸花にも視線を送ってみるが、彼女たちも知らないと首を横に振る。


「誰って、わたしわたし! 私だよ私!」

 詐欺か? オレオレ詐欺的な何かなのか?

 いやそれとも魔王の知り合いだろうか。


「えっと、ごめん誰だったっけ?」

「へ? あれ? さっき自己紹介しなかったっけ?」

 彼女はふざけた様子なく、真剣に首を傾げている。


「いや、してないと思うけど」

「ああそっか、ごめんごめん。うっかりしてた」

 何なんだこの子は……どうやら魔王の知り合いでもなさそうだけど。

 うっかりのレベルなのかそれは。


「じゃあ改めて自己紹介するから、君の穴かっぽじってよーく聞きてくれたまえ!」

「君の穴じゃなくて、耳の穴ね」

「そうだっけ? そうだったな、ごめんごめん」

 いやまあ大きな意味では、一応間違いではなけど……。


「じゃあえっと何だ? 黄泉の穴かっぽじってよーく聞いてくれたまえ!」

 何だかかっこよくなってる。


「私は! 救世主だ!」

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。


「さて、帰ろうか」

「ええ、帰りましょう」

「そーだね、帰ろー」

 あれはやっぱり詐欺だ。

 オレオレ詐欺ではなく、宗教詐欺だ。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 冗談で言っているわけじゃないんだ!」

 冗談でないのなら、尚更無視して帰るべきだろう。

 俺達三人は、その子に背を向け歩き始める。


「なあ待てってば!」

 詐欺師の言葉には、耳を傾けてはいけない。


「なあって!」

 詐欺師の言葉には、決して耳を傾けてはいけない。


「待てって言ってんのが聞こえないのかぁぁぁぁ!」

「いてぇぇぇぇ!」

 突如、顔面の側面、耳の辺りに衝撃がはしる。


「何しやがる!」

「キックだ」

「そんなこと聞いてないわ!」

「聞いたじゃねえか!」

「俺が聞いたのは、何でこんなことをするのかってことだ」

「あ? そうか。それはアレだ。耳聞こえないみたいだから、聞こえやすくしてやろうと思って」

「余計聞こえなくなるからね!?」

 今キーンッってなってるから。


「そうなのか? それは悪かった、ごめんごめん」

 はははと後頭部をかく女の子。

 しかしこの女の子、小さいくせになんて力だ。

 この体を以てしても、かなり痛かったんだけど。


「で、何? 君は一体何なの?」

「だから言ってるだろ? 救世主だって」

「……分かった。とりあえずそこは分かったから。名前は?」

「それは言えない! 知らない人に名前は教えちゃいけないって両親から教わってきたからな!」

 自分から声をかけてきて、名乗れないって何だよ。

 そんな奴の話なんて聞けるわけがない。


「さて、帰るか」

「ちょ、嘘じゃない! 嘘じゃないんだ! 本当にそう教わったんだ!」

 バカなのだろうか、この子は。


「分かったそれも信じるから。でもほら、俺達もうこんなに喋ったし、友達だろ? 知らない人じゃないだろ?」

「そうだな! 親友だな!」

 バカなんだろうなぁ……。


「ちなみに俺の名前は魔王アスタだ。君は?」

「魔王は親友の名前も知らないのか? あぁ?」

「帰るぞ」

「待て待て! 私はベルだ!」

 ベル、ね。


「で、そのベルちゃんはこんな所で何をしてるのかな? 迷子?」

「迷子なのはお前だろ? あ、ごめん、お前じゃなくて、まおえ、じゃなくて、まおう。そう、魔王だろ? さっき言ってたもんな、狼よ迷える子羊を食いたまえって」

 言ってないよ?


「だから私が救世主になってやろうって言ってるんじゃねえか」

「いまいち話が見えてこないんだけど?」

「だから、直して欲しいんだろ? 風呂を。私が直してやる」

「直してやるってベルちゃん、君に直せるのか?」

「ああ直せるぜ、何たって救世主だからな!」

 はっはっはっはと快活に笑って、バシバシ俺のケツを叩く彼女。

 やっぱり力が強い。


「本気で言ってるのか?」

 風呂を直せる? こんな小さな、ルージュと変らない大きさの子どもが?

 それに――


「あれはドワーフの技術で、ドワーフしか直せないって聞いたけど」

「何言ってんだよ魔王! 私がそのドワーフだろ?」

「え?」

 え

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

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