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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SPRING:春】
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第佰捌拾弐閑 ユリ狼

「いやぁスルメイカとやら、なかなか美味かったのう」

「美味しイカったのだ!」

「イカって、どうしてあんなにステキな匂いがするんでしょう……ぽっ」

「スメルイカなのだ!」

 何やらわけの分からないことを言いつつ、シャワーで体を流すネネネ、ルージュ、クゥの三人。


「ねえたっくん」

「は、はひっ何でしょうか!? 逸花さん」

「家族って言うから、健全な関係だって言うから一緒にいることを取り合えず認めてあげたのに。どー言うこと? これ、全然健全じゃないよねー? どーして一緒にお風呂なんて入ってるのかな?」

「えっと、それは俺にも分からないと言うか何と言うか」

 あいつらがなぜか勝手に女湯ではなくて、男湯に来ているのであって……。


「あらあらまおーさまにいっかちゃん、お湯加減はいかがですの?」

 と、体を流し終えたネネネが湯船に浸かり、そして逸花とは逆の腕、俺の右腕に抱きつく。


「ちょ、ネネネ!」

「あーずるいのだっ、ボクもするのだ!」

 それを見て今度はクゥが、正面から俺の胴体に腕を回す。


「クゥ!」

「ほう」

 ならワシはと、俺の背中にしがみ付くルージュ。


「ルージュまで!」

 仕方がない、こうなったら――


「よし、いくぞ!」


「「「「「合体!」」」」」


 シャキーン!

 さながら、日曜朝からやっている戦隊物の合体ロボ『DXなんちゃらかんちゃららー』だった。

 これであと両足にラヴとエメラダを引っ付ければ、完璧である。


「ってバカ! 何をやってるんだお前らは!!」

 離れろ、外れろと、俺にしがみ付く四人を振りほどく。


「何じゃアスタ、おぬしもノリノリじゃったくせに」

「本当ですのまおーさま。腰、フリフリでしたくせに」

 ノリノリは認めるけど、フリフリは認めないよ!

 まったく。


「何をやってるんだも、まったくも、こっちのセリフだよたっくん」

 ごもっともで、返す言葉もない。


「まさか毎日こんなことをしてたなんて」

 いや、毎日こんなことはしていないんですけど。


「まーたっくんはひとまず置いておくとして。桃ちゃんたち」

 逸花は、切り替え早く既に湯船に肩まで浸かりくつろいでいる、ネネネとルージュとクゥを見下ろす。


「あなた達は放っておいてもいーと思っていたけど、こんな形でたっくんを誘惑してるなんて……やっぱり先に倒す」

「受けて立とうではありませんの」

 ザブンと湯船に波を立て、立ち上がるネネネ。


「ババア、ここはひとまず共闘しませんこと? クゥちゃんも。さあいっかちゃんこれで三対一――」

「嫌じゃ」

 ネネネの言葉を遮り風呂に響くルージュの声。


「どうせ共闘するのなら、ワシはその触角娘、名は逸花じゃったかの? の側につく」

「どういうことですの!?」

「これは年増、おぬしを倒す好機じゃからの」

 ニヤッと笑うルージュに、悔しそうに歯を食いしばるネネネ。


「後期と言う言葉がよく似合いますわね、さすがババア」

「じゃろう? 高貴な姫じゃからの」

「キィィィィ! まあいいですの、あなたはクゥちゃんで無力化出来ますもの」

「ふんっ。たわけが」

 マイペースに気持ちよさそうに風呂に浸かる、いや、風呂に浮かぶクゥを指さすネネネに、ルージュはまたしても余裕の笑みを向けた。


「今やワシは、毛玉(ケルベロス)によるトラウマを克服しておる! …………と思う」

 と思うって。


「とにかく! そこの毛玉を見ても、トラウマが呼び起こされることはないわい!」

「ボクは~トラでも~ウマでも~ないのだ~ケルベロスなのだ~」

「しかも克服したどころか今や超仲良しじゃ! 毎晩ベッドの上でちゅっちゅするほどにのう!」

「そ、そんな……」

 ネネネが目を見開く、多分俺も、同じ顔になっているだろう。


「はっはっはっは驚いたかの? もはやロリの時代は終わった! 今からはユリの時代じゃ! まあそんなわけじゃから、そこの毛玉はワシに対する抑止力足りえん。どころかこちらの味方じゃ」

 まあハッタリだろう。確かにここ最近ルージュとクゥは普通に仲がいいが、そんな毎晩ちゅっちゅするような関係ではないはずだ。

 そもそも一緒に寝ているのだから、ちゅっちゅしていたら気付くだろう。それも毎晩なんて。

 しかしそんなバレバレのハッタリも、おバカなネネネちゃんは信じちゃうのであった。


「ネ、ネネネだって、毎晩まおーさまとちゅっちゅしてますもの!」

「ネネネ、張り合う場所を間違えてる」

 しかもしていない。


「ふふっさーどーする? 桃ちゃん。これで三対一だけど」

 何だか、楽しそうな逸花ちゃんである。


「こ、こうなったら、エメラダちゃんを召喚してやりますの」

 それを聞くと、ルージュは顔を真っ青にして、ぶくぶくとお湯の中に沈んでいく。


「お、おいネネネ……」

 まあ確かに、エメラダは最強の武器だろう。

 幸いなことに今彼女は木の壁一枚隔てた向こう側、女湯にいる。

 『逸花が暴れようとしている』とでも何とでも叫べば、すぐにここにやってくるだろう。

 しかし!


「エメラダは諸刃の剣だぞ!? お前も巻き添えを食らうぞ!?」

 ちなみに俺も。

 喧嘩両成敗、止めなかった奴も成敗、ついでに近くにいる奴も成敗。

 それがエメラダのジャスティス。


「逸花もやめておけ、な? こんなこと、フルチンでするようなことじゃないだろう?」

「まおーさま」

「何だよネネネ」

「ネネネ達にチンは付いておりませんの」

「あ、ああ、そうだったな」

「ネネネ達は、突かれる方ですの」

「……」

「今すぐ訂正してくださいな、フルチチかフル○ンに」

「そっちの方が訂正してお詫びが必要だよ!」

 まったくもうまったくもう。


「と、とにかく逸花、ほら、家族が一緒にお風呂に入るのなんて、普通だろ? 健全じゃないか」

 俺がそう言うと、逸花は渋々だったが頷いた。


「まーそだね、家族が一緒にお風呂に入るのは普通だね。私もついこの間まで、お父さんと一緒にお風呂に入ってたし」

 それは聞き捨て難いなぁ……。


「ちょっとのぼせちゃってたよ、お風呂だけにね。冷静になります、ごめんなさい」

 ふう。

 これで何とか、今日は事無く、無事終われそうだ。

 そう完全に安心仕切っていたのだがしかし。

 風呂から上がり、寝る仕度を全て済ませ

「おやすみ皆」

「おやすみですの」

「おやすみじゃ」

「おおやすうりなのだ」

 眠ろうと、ベッドに寝転がった丁度そのときだった。

 大きな音を立てて、部屋の扉が開かれた。

 何事かと上半身だけを起こして見てみれば、そこに立っていたのは逸花。

 ヒクヒクとしきりに匂いをかぐ彼女。


「逸花?」

 俺が名前を呼ぶと、逸花はこちらに向かって一直線に走ってくる。

 そしてベッドの手前で華麗にジャンプ。

 そのままためらう事無くベッドの上の俺の腹に、お尻から落下。


「ぉぐふっ!? 何じやがるいづが……」

「たっくん、さっき廊下で金ちゃんにきーたんだけど、毎晩この子達と一緒に寝てるんだってね」

「は、はははは。か、家族が一緒に寝るなんて、普通のことだろう?」

 もはや苦し紛れすぎる言い訳だ。


「本当に一緒に寝てるだけかなー? 何だかこの部屋、いかがわしい匂いが」

「いかがわしい?」

「そう、いかくさい」

 逸花は再び、鼻をヒクヒクと動かす。


「そ、それは風呂に入る前――」

「何をしたの?」

「食べたんだよ」

「この子達を?」

「が!」

「餓? そっかーつまり、お風呂に入る前に、餓えていたたっくんが、この子達を食べたと。だからこの部屋はいかくさいと、そーいうこと?」

「じゃないよ!」

「酷いよたっくん。たっくんには私がいるっていうのに……本当に酷い」

 だから人の話を聞けよ。


「でもそんな酷い男でも、私はたっくんを愛してるよたっくん。女は惚れたら終わりなの」

「あ、あの……」

「ちなみに男は掘られたら終わり」

 むしろ何かが始まっちゃうよ!


「イカさん、じゃなくて逸花さん、ちょっといいですか?」

「なーに餓えたたっくん。お庭に植えてあげようか? これぞ植物人間ってね!」

 ひいっ……。


「そうじゃなくてですね、“お風呂に入る前に餓えた俺がこいつらを食べた”じゃなくて、“お風呂に入る前にこいつらがイカを食べた”だから。だからこの部屋イカくさいんだよ」

 と言うかネネネ達も、寝室じゃなくて食事の間で食べろよ。

 わざとか? わざとなのか?


「ふーんそうなんだ。まーいいや、じゃあこの子達と一緒に寝てるのも許してあげる。たっくんの言うとおり家族と一緒に寝るのは普通だしね。かく言う私も、この間までお父さんと一緒に寝てたし」

 ま、まあお風呂よりは普通か。


「シングルベッドで」

 やっぱり聞き捨て難いなぁ……。


「それに暴れたら、銀ちゃんに怒られるしね」

 既にエメラダが、逸花の強力な抑止力となっている。

 エメラダ、恐ろしい子。


「その代わりー、私もこの部屋で一緒に寝かせて?」

「え、一緒に!?」

「何か問題でも?」

「いや……」

 無駄にでかいベッドだ。

 それに一緒に寝ていると言っても、クゥはソファーで寝てるし。

 ルージュは体が小さいし。

 スペース的には、逸花一人など余裕で受け入れ可能だ。

 が、しかし、ネネネとルージュとクゥがなんて言うか。

 そう思って彼女たちに視線を向けてみると、見事に全員寝ていた。

 自由な奴らである。自由過ぎる奴らである。


「問題はなさそーだねたっくん」

 まあ別に、あいつらがいいなら俺は構わない。

 と言うか、俺に選択肢はない。


「あ、ああ」

「たっくん……」

 俺が頷くと、逸花は俺に馬乗りになったまま、慈しむような目で、そっと両手で俺の頬を撫でる。


「あぁ……大好きたっくん。私のたっくん。誰にも渡さない。たっくん、私この子達を倒して、絶対たっくんを落として見せるからね。振り向かせて見せるからね。そして連れて帰る」

「振り向くんじゃなくて、振ったらどうなるんでしょう」

 俺の頬を撫でていた両手が、スルスルと首まで降りてくる。


「その場合でも、落とすよ?」

「いやいや逸花さん、それ落とすの意味が変ってきてないですか?」

 それ、完全に気絶させる方の落とすだよ。


「ふふ、予行演習として、今日はこれで眠りに落としてあげる」

 俺の首に巻かれていた逸花の手に、力が入る。


「ちょっと待って予行演習って! それ就寝じゃなくて下手すれば終身だからね!? 睡眠じゃなくて永眠ですよ!?」

「おやすみーたっくん。良い悪夢(ユメ)を」

「く、くるちい……」

「たっくんが、意識失い、首かっくん。逸花、心の一句。なーんちゃって」

「一字余りかぁぁぁぁ!」

 間違えた。


「言ってる場合かぁぁぁぁ!」

今日も読んでくださり、本当にありがとうございました。

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