表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王INTER:冬】
159/224

第佰伍拾陸閑 お家は戦地

 さて、どうやら彼女たち青チーム、いや、バカとか言われたからこの際アホチームと呼ぼう。

 アホチームの作戦は、一番手前でラヴが防御、その後ろからクゥが攻撃、更にその後ろからエメラダがたまを補給。

 と、一見するとこういうことらしい。


「……まあいいや、じゃない……まずいや」

 ラヴの剣による強固な防御、クゥの強肩による強力な攻撃。

 更にそこに、賢明なエメラダによる、懸命な支援。

 そもそもその気になれば、エメラダは攻防の全てを一手に担うことも可能だろう。

 それにラヴとエメラダのこと、準備時間に何かしらの作戦を立てて来ているのは明白。

 完璧じゃないか……誰だアホチームか言ったの!

 対する俺達と言えば、誰が攻撃するのか、誰が防御をするのか、そんな作戦以前の話し合いさえしていない。

 まさにバカチームだ。


「なぁネネネ、死にたくなければ、少し集中して雪合戦をしない?」

 ここはもはやお家ではなく戦地。

 ネネネの相手をしながらでは、ネネネに腕を拘束されながらでは、到底生き残れない。


「チューの発注をいたしますの」

「分かった受注するから」


「ブチュー?」

「ブチューする、後でする。だから今は俺の腕を離して、そして雪合戦をしてくれ」


「本当ですの!? 約束ですのよ?」

「ああ約束だ」


「やりましたわ、チューゲッチューですの!!」

「……」

 何だか勢いに任せて、とんでもない約束をしてしまったような気がしないでもないけど。

 まあ仕方がない、背に腹は代えられない。

 

「ふむ……少々嫌な予感がするのう……。おい年増にアスタ、早う攻撃せんか。一斉射撃じゃ、今ならまだ間に合うやもしれん」

 ようやくネネネに開放されたことにホッとする暇もなく、ルージュの珍しく焦ったような声が俺の耳に届く。


「嫌な予感って、どうしたルージュ」

「エルフっ娘を見てみよ」

 促され、ラヴとクゥの更に後ろにいる、エメラダに目をやる。

 エメラダはそこでせっせと雪だまを作って――??


「んんっ?」

 俺が驚いたのは、彼女の雪だまを作る早さにだとか、作った雪だまの量にだとかではない。

 その大きさにだ。

 大量の雪だまにではなく、重量級の雪だまに驚いた。

 エメラダは勇者とケルベロスの後ろで、済ました顔をしてよいしょよいしょと、まるで“雪だるま”を作るかのごとく雪だまを転がしている。

 見るからに重量のありそうな雪だま。


「まさかあんなものを投げようと?」

「そうじゃろうな。一気に畳み掛けるつもりじゃろう。毛玉のバカ力なら、それが可能じゃろうし」

 なるほど。相手の再起不能を以て勝敗の決まるこの雪合戦。

 たかが雪を固めたたま程度では、たとえ当たったところで大したダメージも与えられず、いつ決着がつくかも分からない。

 まあクゥの放つたまならその限りではないんだろうけど。

 ただそれも“当たったら”の話だ、どんな凄い威力でも当たらなければ意味がない。


 一度に投げられるたまの数はせいぜい二個。無理して四個いけるか? ってところだろう。

 視界の開けたこの場所では、避けられてしまう可能性の方が高い。

 それならばその力を使って、避けても避けきれない巨大なたまを投げ、まとめて生き埋めにしてしまおうと、そういうわけか。 


「あのたまを完成させてはならん、アスタ、エルフっ娘を狙うぞ!」

「了解! やるぞネネネ!」

「ハイですの!」

 クゥの攻撃をかわしながら、一斉に雪だまを投げまくる俺、ルージュ、ネネネ。

 知恵もなく防御もせずただひたすらに攻撃しているだけなのなら、いっそのことバカチームではなくバーサーカーチームにでもなってやる!

 幸い雪だまには困らない。


「うぉぉぉぉ!」

 と意気込んだまではよかったが、雪だまはエメラダに到達するどころか

「ふんっ、ここからは一個も通さないわ!」

 クゥにさえ届かないままに、ラヴに全て打ち落とされてしまう。


「くそう、雪だまでは埒があかぬ」

 悔しそうに歯噛みするルージュ。

 遊びに真剣そのものだ。


「と言うかババア、たとえエメラダちゃんに当たったとしても、戦闘不能にすることは不可能ですの」

 ネネネも何だかんだ真剣だ。

 まあラヴなんて、真剣どころか、本当の剣を、真剣を使っているわけだけど……。


「分かっておる……こうなったら」

 ルージュは何だか物凄く悪いことを思いついたかのように、口元を釣り上げた。


「年増、しばらく防御を、時間稼ぎをしておれ」

「それが人にモノを頼むときの態度ですの? まったく、仕方がありませんわね」

 言って、俺とルージュの前に立つネネネ。


「え、ネネネ防御とか出来るの?」

「ええ、少しの間なら。コレで」

 ヒラヒラと、お尻から伸びた黒い悪魔の尻尾を揺らす。


「まあネネネは愛ちゃんの胸と違って、壁ではなく――」

 そしてその尾をムチのようにしならせ

「――お山ですけ、どっ!」

 飛んできた雪だまを弾き飛ばした。


「ちょっと! 誰が壁よ!」

 ネネネはおほほのほと笑いながら、次々に飛来する雪だまを打ち落としていく。


「やるなぁ」

「ようし、その調子でもうしばらく頑張っておれ」

 ふとルージュの方に視線をやると、彼女の体からは炎に似た、赤いオーラのようなものが噴出していた。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ