第佰伍拾壱閑 『次は……剥がして』
前話の文字数が少なかったので、本日(2015/3/5)二回目の更新をしました。
それからしばらくして、雪をどける作業は終わった。
雪の下から現れたビニールトンネルは案の定、雪の重みに耐えられずぺしゃんこになって、野菜を圧迫していた。
俺とラヴとクゥは、エメラダに指示を受けながら作業を続ける。
「よし、次はたて直しだ」
次の作業は、倒れた支柱を立て直し、トンネルを建て直すこと。
それに当たって、まずは覆いかぶさっているビニールを剥がさないといけないのだが。
俺がいざ剥がそうと、ビニールを掴んだときだった。
「早まっちゃだめなのだアシュタ。謝った方がいいのだ」
またもやクゥの手が、肩に置かれる。
「次はどうしたんですか……?」
「続きは、エメラダねーちゃんに任せるのだ」
また……本当に何を言っているんだこの仔は……。
「クゥちゃん、エメラダは、本当にそんなことを言ってたかな?」
任せろ的なことを。
確か指示は『次は……剥がして』だったと思うのだけど。
現にエメラダだけじゃなくて、ラヴもビニールを剥がし始めているけど。
「言ってたのだ」
「嘘をつけ!」
確かにエメラダに任せた方が俺達は楽だけど、そんなことをしていたら野菜がダメになってしまう。
一人ですぐに終えられるような広さの畑じゃないんだから。
「嘘じゃないのだ! 本当に言ってたのだ! 『続きは……任して』って」
「惜し……くない!」
全然惜しくない。全然違う。
お前の頭に付いている、そのよく音の拾えそうな三角お耳はただの飾りか!
「おかしくないのだ?」
「いや、おかしい。エメラダが言ってたのは『続きは……任して』じゃなくて『次は……剥がして』だ」
次はこのビニールを一旦剥がして、支柱を立て直せる状態にするのだと、クゥに説明してやる。
すると彼女は
「分かったのだ」
そう言って、今度は普通に作業を始めた。
まあ、エメラダも言葉足らずなところもあるし、仕方がないか。
「何してるのだ、アシュタも早くするのだ」
「ん、あぁ、うん」
と言うわけで、俺もビニールを剥がし始める。ビニール剥がしをし始める。
その作業は意外とすぐに終わり、次は支柱を立て直す作業だ。
エメラダにしっかり指示を受けながら
「……アスタロウはあれを持って」
「了解」
倒れてしまっただけの細い鉄製の支柱はそのまま立て直し。
「勇者はこっちを持って……」
「はい」
折れてしまったそれは、新しいのと変えて立て直す。
「犬は……これを持って」
「犬じゃないのだ!」
「……持て」
「お手みたいに言わないで欲しいのだ!」
「……持て」
「待てみたいに言わないで欲しいのだ!」
とか、そんな感じで、いつもどおり何やかんやと言いながら、支柱を立て。
最後に立てた支柱に、再度ビニールを被せる。
休憩を挟むことなく作業を続けること数時間。
「アスタロウ……シュウリョウ」
という、エメラダの微妙な号令を持って、全ての作業は終わりを迎えた。
読んでくださって、ありがとうございました。




