第拾弐閑 ネネネの手手手
「まおーさま、ネネネ疲れたですの」
「さっき休憩したばかりだろ」
あれから一ヵ月後、村や周りのあれやこれがようやく落ち着いてきたので、俺とネネネは自分たちの食料を確保すべく畑を耕し始めていた。
「手手手痛いですの」
「自分の名前みたいに言うな」
確かにちょっと似てるけど。
「大体ネネネは俺にサービスをする妖精なんだろ? じゃあ文句言わずに手伝ってくれよ」
自分が食べる分でもあるんだから。
「ネネネはエッチなサービスをする妖精ですの」
「エッチな、つまり性的なサービスだろ?」
「そうですの」
「政的なサービスだろ?」
城の主たる俺が自給自足で村の人々の負担を緩和する。
立派な政治的活動じゃないか……きっと。
「ブ~ですの!」
「まあそう言うなって」
幸い土地だけは広い城の敷地、畑の場所の確保は容易い。
作物の種だって倉庫にはたくさんあった。
でもなぁ、素人が畑作ったところで野菜とかができると思えないんだよな……。
長年やってきてるプロの農家さんだって、その年のちょっとした気候の変化でできる量が変わってくるくらいだ。
地球の漫画で手に入れた付け焼刃の知識で、山の落ち葉とか拾って来てはみたものの。
肥料ってそれだけでいいのか?
小学生のときやった夏休みの自由研究のアサガオにだって、ちゃんとした肥料入れた覚えがあるのだけど。
大体どれくらい掘ればいいんだ。
そしてどのくらいの間隔で植えればいいんだ。
と言うか耕してすぐ植えていいのか?
「あーっわっかんねー、こんなんで出来るのか?」
「きっとネネネとまおーさまの子供が出来るほうが早いですわ」
「お前との間に子供をつくる気はないよ!?」
「……っ!?」
え? なにその裏切られたような顔。
「酷いですわまおーさま。子供たちだけで球団二つに監督、コーチその他もろもろと、観客をまかなえるくらいの数は欲しいっておっしゃったじゃないですの」
「……」
嘘が酷過ぎてどうにも言えねえな、むしろ生んで欲しいよその量。
一人で少子化を食い止めてくれ。
てか、どれくらいのペースで生んでんのそれ。
一番最後の子が生まれたとき、一番初めの子はいったいいくつなんだ!
「それに今ネネネのお腹には待望の第一子がいるというのに、この重労働……」
「嘘つくな! 誰も待ち望んでねえ!」
いや本当だよ? ネネネには一切手を出してないからね?
妻にひどいことをするDV夫とかじゃないから。
「望んでないのに子供をつくってしまうハイト区間」
「どこの区間だ!」
「B地区」
なんだよマラソンでもしてる気分になってきた。
B地区ハイト区間 区間賞受賞。
「受精」
「黙れ!」
「まぁまぁまおーさま、そうキャッキャせずに」
「いやキャッキャはしてないんだよ、カッカはしてるかもしれないけど」
区間賞を受賞したわけじゃないんだから。
「愛ちゃんに聞いてみてはどうです?」
「愛ちゃん?」
はてはて異世界で俺に愛ちゃんなんていう知り合いはいたっけ?
確か中学の同級生にならそんなやつがいた気がするな。
ああ、あいつ魔物みたいな顔してたから、もしかしたら魔物としてこっちの世界に来てるのか?
「田舎勇者のことですの」
「ラヴ? あいつがどうして愛ちゃんなんだよ」
「ラブリーだからですの」
ああそういうことか。
あだ名をつけるほど仲良くなってくれたのはいいけど、それ聞いてラヴ怒らないのだろうか。
「愛ちゃんなら田舎者だから、農業はお手のもののはずですわ」
「ふん……」
まあラヴが田舎者かどうかは置いといて、彼女なら何か知ってるかもしれない。なんたって勇者様なんだし。腹が減っては戦は出来ないと言う。
「ラヴどこにいるか知ってる?」
「朝から厨二病にこもってましたけど」
「どこだよそこ」
厨二病“が”こもってるんならまだしも。
「十二楽坊?」
「いつからラヴは古楽器演奏女性音楽グループに入った」
「あっ厨房ですわ」
最初からそうじゃないかとは思ってたけどね、うん。
「じゃあラヴにちょっと話聞いてくるから、その間休憩でもしといてくれ」
「ネネネも行きますの」
「お願いだからここにいてくれ、お前が来ると話がややこしくなるから!」
俺に抱きつくネネネを無理やり引き剥がす。
「ネネネはまおーさまがいないと、やや恋しくなりますの」
「なんだよやや恋しくなるって!」
まじで話が進まないよ……。




