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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王TUMN:秋】
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第佰参拾壱閑 三日でも四日でもいつかちゃん

「ここはお主の病室じゃ」

「いやいやいやいや神様、これのどこが病室だよ!」

 話を逸らした方向が逸花とか、洒落にもなってないけど、そこに映る病室のありさまの方が正直洒落になってない。

 その病室には、俺と逸花を中心に、まるで何かの儀式でも始めるかのごとく、魔方陣が描かれていた。

 しかもりんごで。

 洒落にはなってないが、まあ、オシャレではあるかな……。


「たっくん、たっくん、たっくん、たっくん」

「ご覧のとおり、遊佐様はご乱心なさっています」

「乱心してるのはこっちですよ天使さん……」

 やっぱり本物のヤンデレを見てしまえば、ネネネなんていやんデレ以外のなんでもない。

 まだまだ可愛いもんだということが、思い知らされる。

 ま、まぁ確かに逸花も乱心しているのだろう、いつもおかしいけど、今はいつもよりおかしい。


「たっくん、りんご剥けたよ?」

 逸花は寝ている俺に向かって、丁寧に剥かれたりんごを向ける。


「ねーたっくん、ねーってば。もーたっくん、たっくん、最近私の剥いたりんご、全然食べてくれなくなったよね?」

 ええ、まぁ一応死んでますからね。


「おかげでこんな凄いりんごアートが出来ちゃったよ?」

 凄すぎるだろう。

 りんごであんなに本格的な魔法陣を描くとか、もうそれ才能だよ。

 と言うかその魔方陣どこかで――


「どうかな? この間たっくんの部屋で見つけた絵を真似してみたんだけど」

 ああ、俺が異世界へと行こうと試みた名残か。

 いや、それより、勝手に部屋に入るなよ!


「……はぁあ、りんご、どうして食べてくれないの? たっくんの大好物でしょー? 前は一日に五百個くらい食べてくれたのに」

 いや、逸花さん、俺別にりんご大好物でもないし、たとえ大好物だったとしても、一日に五百個も食べられないよ?


「もしかして他のところに女でもつくって、その人のところでりんご食べてるのかなー?」

 異世界でりんごは……食べたな、ラヴだったかエメラダだったかに剥いてもらって。


「ねーたっくん、もし次ぎやったら、私も同じことするかもしれないよ? って言ったよね?」

 逸花は、ぶすり、とりんごに果物ナイフを突き刺し。

 そして

「……ねぇ!?」

 ぎょろり、と。

 こちら( ・ ・ ・)を向いた。


「――っ!?」

 逸花の真っ黒な目と、モニター越しに目が合う。


「たっくん?」

「ひぃっ!?」

 逸花のそんな声を最後に、モニターは、テレビの電源を落としたように、ぷつりと姿を消した。


「お、おい神様、今逸花と目が……何なんだよ今のモニター、向こうからも見えてるのか?」

 てっきり、見えていないものだと思っていたのだけど。


「バカなことを言うな、目など合うはずがない。お主の言うとおり、向こうからはこちらを認識できはせん」

「そ、そうか……」

 じゃあ俺の勘違いと言うか、偶然目が合ったように見えただけか。


「それにしても桜満明日太よ、お主なかなか落ち着いておるの、もっとパニックになると思っておったが」

 神様は面白くないのと言って、髭に触れた。

 人が慌てるのを見て楽しむ神が、どこにいる。


「ここにおる、てへっ」

「……神様、俺が慌ててないように見えるって、そんなわけがないだろう。もしそう見えるなら、それは慌て過ぎてそう見えるだけだ」

 速過ぎて、遅く見えるのと同じ。


「大体なんであんなものを見せたんだよ」

「まあちょっとな」

 まさか、俺がパニックになるのを見たいがためにじゃないだろうな?

 まったく、なんて神だ。


「ところで神様、一つ聞いていい?」

「何じゃ、やっぱり冷静ではないか」

 まぁ、そう見える理由のひとつには、逸花への慣れもあるのかもしれない。

 確かに怖かったけど、いつも概ねあんな感じだし……。


「あの女子おなごも怖いが、慣れというものも怖いの。それで、何じゃ?」

「えっと、まあそんなに重要なことでもないんだけど。俺って一応死んでるんだよな?」

「おお、そうじゃが? 体は完全に機能を停止しておる、心臓から脳から、何もかもの」

「ならどうして病室で普通に寝かされているんだ?」

 心臓が止まっている、死んでいるのに。

 なぜ病院の先生や、逸花、そして周りの人間はおかしいと思わない。

 病院の機械はどうなっているんだ。


 それに活動していないってことは、俺の体、腐っていったりしないのか。

 とか、もっと、上げだしたらキリがないくらいの疑問が、一気に押し寄せてきたのだけど。


「ふむ……理由を話せば長くなるし、そして話してもいまいち理解できんじゃろうからのぉ。まぁ簡単に言うと」

 ただ俺のそれらの悩みは、神の次の一言で、あっさりと片付けられてしまうのだった。


「神の力のおかげ、じゃの」

 なんて使い勝手のよさそうな言葉なんだ!!


「まぁじゃからの、お主の立ち位置は本当に不安定なのじゃ。もう一度言うが、異世界で死んだらもう終わりじゃ。分かったか? 伝えたぞ? 後から文句を言おうと、ワシは知らんからの」

「分かりましたよ」

 文句は言わない。

 神の言うとおり、死んだら終わりなのはどこでも同じだ。

 それにむしろそっちの方が都合がいい。

 俺はあの異世界で、本気で生きて行くと決めているのだから。


「神、そろそろ」

 そう神に告げる天使さん。


「うむ……時間じゃ桜満明日太おうまあすた。ワシも暇ではない。それにお主も、いつまでもここにいては危ない」

 神がそう言うと同時に、俺の体は白く光り始める。


「また近いうちにの」

「ああ」

 本当は二度と会いたくないのだけど。


「今度会ったら、また八の巣にしてやるよ」

 それを聞いて神は、口を、さすがに八の字には出来なかったのか、への字に曲げた。



 ◆◇◆



「ふん……ワシとてお主会うのは嫌じゃわい」

「い、ですか? 神」

「これ、天使まで止めんか」

めんか、ですか?」

「…………」


「冗談は置いておいて。神、桜満明日太様は、素直に元の世界に帰ってくれるでしょうか? 後腐れなく、彼を元の世界に帰すことはできるでしょうか?」


「そうじゃな、そこじゃな。人が人と離れ離れになってしまうことの悲しさを、あ奴はよく知っとる。じゃから自分がいなくなった後の、取り残された遊佐逸花ゆさいつかの姿を見せればあるいは、と思っとったのじゃが……あの遊佐逸花とやらがの……アレは一体何者じゃ」


「曲者、いや、化物ですかね。キーパーソンと言うよりーパーソンです。せめて奇異パーソンくらいであれば、まだよかったのでしょうけど。…………神」

「うむ。これは大分面倒くさいのぉ」

「貴様のせいですよ」

「天使よ……ようやく様を付けてくれたと思うたら……」

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