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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王TUMN:秋】
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第佰参拾閑 『8』 ナンバー・オブ・ザ・ ビー

「まぁあまりもったいぶっても仕方がないので言うが、お主は死んどらん」

「は……?」


「気絶しているだけじゃ」

「はぁ……?」


「少し報告があったでの、ワシが魂をここに引っ張った。それがお主がここに来た理由じゃ」

 だから死んだわけではない、と重ねて神様は言った。


「はぁぁぁぁ!?」

 慌てふためく俺を見て、神は口に手を当て、笑いを堪えるように肩を震わせる。

 くっ……そ……。


「何だよ嘘八百の神様! 散々俺にいじられた腹いせのつもりか!?」

「はて、何のことじゃ? 今のはお主が勝手に死んだと勘違いしたんじゃろう? ワシは一言もお主が死んだとは言っとらんよ?」

「ぐ……そ、そうかもしれないけど、勘違いする方に誘導しただろ!」

「テヘッ」

 ぬおぉぉぉぉ……あの舌、切り落としてやりたい。

 と言うか堕ちろ、堕天してしまえ。


「大体そんな大切なこと、忘れてたで済まされるのか!?」

「は? そんなことワシは知らん。死んだら終わりなのは、どこの世界でも当たり前じゃろう?」

 まぁ確かにそうだけど……。

 色々言いたいことはあるけど、とりあえず……。


「よかった……」

 安堵で膝の力が抜けて、ガクッとその場に崩れ落ちた。


「そうじゃ、ガクッと、じゃよ」

「……?」

「ほれ、ズボッととか、ゴボッととか言っておったじゃろう?」

 ああ、雲に突き刺さったときの話か。

 何でそんなことを知ってるんだよ……神の癖に。


「神だからじゃ。あれはの、ズボっとでもゴボッとでもなくガクッとじゃ。魂が抜けて、力も抜けたのじゃよ」

「じゃああの浮遊感は……倒れたからと?」

 こくりと頷く神様。


「何だよまったく」

 いつもいつもややこしいことをしてくれるなぁ……。


「ややこしいのはワシの十八番おはこじゃからの」

 お主の真似をすると、八八ややこしい、かの?

 そう言って、神はドヤ顔をするのだった。

 八。

 やっぱりさっきの意趣返しじゃねぇか。

 まったくもうまったくもう。


「と言うか神様、呼ぶのはいいけどさ、今度はもっと時と場合を考えてくれよ」

 俺だって暇ではないのだ。

 今だって花のことで色々と焦っている最中だというのに。

 気絶している間に、花が切り倒されたらどうする。

 それに今回は地面に倒れたから、正確には雲だけど、地面に倒れただけだったからよかったものの、もし俺が風呂に入ってるときとかだったら、大変なことになってるぞ。


「座ってるときとか、寝てるときが好ましいな」

「ワシじゃってそれくらい分かっておるわ。と言うかそもそも、ワシはお前さんをここに呼ぶつもりはなかったのじゃ」

 ならなぜ呼んだんだよ……。


「いやの、うちの助手てんしが、報告をしてやれ報告をしてやれとうるさいもんでな」

 神様はチラッと、横目でナース天使さんの方を見た。

 ナース服を着ている人にむかって助手とか言うと、何だかまるで歯科助手みたいだな。

 まぁそういう人たちも白衣の天使とか呼ばれることがあるから、それもあながち間違いではないのか。


「歯科助手ではなくミカ助手じゃよ、桜満明日太」

「ああ、そうでしたね」

 ミカエル。


「それで、報告って?」

 まさか、元の世界に帰る準備が出来たとか……?


「いや、お主の思っているようなことではない。本当にただの報告じゃ」

 報告……帰る準備が出来た、それ以外一体俺に何の報告が?


「まぁ元の世界に帰る準備についてのことなのじゃがの。ほれ、お主を前に元の世界に戻したとき、情報が、状況がうまく伝達できんで、急じゃとか何とか言っておったじゃろう? じゃからの、今回はしっかりと準備の進捗状況を伝えよと、天使がそう言うんじゃよ」

「元の世界に帰る準備の進捗状況の報告?」

「そのとおりです」

 神様の横に並んでいたミカ様が、一歩前に出る。

 アンタやっぱりミカじゃなくてカミだよ、神様だよ。

 何ていい人なんだ……。


「神の話が長いので、私が報告させていただきます。率直に言って、時間がかかります。かかっています」

「はぁ……」

「前と同じやり方ではばれかねませんので、色々と違う方法を模索しているのですが、なかなか」

 俺にとってはそっちの方が嬉しいんだけど、この天使様、神のミスのせいで、大変な思いをしているんだろうな。


「いや、でも、頑張ってくださっているところ悪いんですけど、元の世界(むこう)に行ってもまたすぐに戻って来ますよ? 降りますよ?」

 降りる。飛び降りる。

 降りて、昇る。

 天に昇る。

 そして戻る。

 異世界へ。

 俺の世界へ。


「簡単に言ってくれるのぉ……こっちの気も知らんで」

「いやいや……」

 やっぱり何だか俺のせいみたいになってるけど、さっきも言ったとおり、こんな状況になってしまっているのは、元はと言えば神のせいなのだけど。

 一度ならず二度までも失敗をした、神のせいなのだけど。


「む、むぅ……そ、そうじゃ桜満明日太よ、ちょいとこれを見てみぃ」

 神は話を逸らすかのようにそう言うと、天に手をかざした。

 すると神の頭上に、どこからともなく楕円形のモニターのようなものが現れる。

 そしてそのモニターに映し出されていたのは、血の気の引いた青白い顔で白いベッドに横たわる俺と――


「たっくん、たっくん、たっくん、たっくん」

「いっ――!?」

 その隣でりんごを剥く、幼馴染。

 明るい茶髪のサイドテール。

 遊佐逸花の姿だった。

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