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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王TUMN:秋】
131/224

第佰弐拾捌閑 彼女の辞書に「自重」の文字はない。

「それで、まおーさま。まおーさまはどうしてこんなところに? まさかネネネに会いに来てくださったんですの?」

 ネネネはようやく、本当にようやく、まともに話を先に進めた。


「エメラダに頼まれたんだよ。この花の種を採って来てって、この花の絵を描いて来てって」

「ではネネネも」

 まともに話を進め始めたのも束の間、本当に束の間、ネネネは俺の下半身に手を伸ばし始めた。


「何がでは、だ、何をしている」

「いえ、ネネネもまおーさまのお花から、種を採ろうかと思いまして」

「……採らなくていいの。これは花じゃないの」

 俺は彼女の手を取り、その動きを制止する。


「せいし……ぽっ」

「……」

 さて、ネネネのことは、ひとまず放っておいて。

 種は中にあるだろうとふんで、ここに来てみたはいいが、目標の種はどこだ?

 辺りを見渡すもそれらしきものは見当たらない。

 視界に映る種は、花の種ではなく、悩みの種(ネ  ネ  ネ)だけだ。


 と言うか、花の種って、こんなまだ花が生き生きしている時期に、採るものなのか? 採れるものなのか?

 もっと花が枯れてしまって、茶色くなって、カラカラのカリカリになってから採るものだと、採れるものだと思っていたんだけど。

 実際小学生のときに育てたアサガオは、そうして種を採った思い出があるし。


 いや、まあエメラダが採って来いと言うんだから、採れるんだろうけど。

 こんなデタラメな大きさの、見たこともないような種類の花に、地球の常識が通じるとも思えないし。

 だから採れるんだろうけど。

 ただそれならば……種は、どこだ?


「なぁネネネ、この花の中で、種っぽいもの見なかったか?」

「たねっぽいものですの? ……う~ん、見てないですの。たまっぽいものなら見ましたけど」

 たまっぽいもの?

 何だそれは。


「ちょっと待って下さいですの。えっと確かここに……」

 そう言いつつ、胸の谷間に手を突っ込むネネネ。


「んっ……あっ、あんっ……」

「……」

「あぁ、ありましたの。これですの」

 彼女が差し出したその手の平の上に転がっていたのは、二つの、飴玉ほどの大きさの、金色の玉だった。

 たまっぽいもの。玉っぽいもの。

 なるほど玉っぽい。ぽいと言うか、玉だ。


「まおーさまの金玉みたいだったので、拾っておいたんですの、おほほのほ」

「金玉とか言うな」

 それに俺の下半身はこんなに輝きを放ってはいない。


「なら睾丸こうがんですの?」

「たとえ“こうがん”だったとしても、漢字は『黄丸』こっちだ」

金玉きんたまじゃなくて、黄丸きいたまですのね」

 まぁ読み方は黄丸こうがんでも黄丸きいたまでも、どっちでもいいけど……。


「それで、それ、どこで拾ったんだ?」

「拾ったと言うか、オスベとメスベのエッチの手助けをしていたら、急にメスベが光り出して、そしたらこれが出てきたんですのよ」

 ふむ……オスベとメスベ、もといオシベとメシベのエッチの手助けをしていたら出てきた、か。


「ネネネ、エッチの手助けって、受粉の手助けってことでいいんだよな?」

「まあそうとも言いますの」

 となると……。


「あの玉が、種なんではないでしょうか、魔王さん」

 俺と同じ答えを出したヴァイオレット。


「ああ、まあ多分だけど、そうだろうな」

 玉ではなく、種。


「あら、ではこれがまおーさまのお探しの品ですの?」

「うん、多分な。偶然とは言え、ネネネが拾ってくれていて助かったよ」

 種を探す手間が省けたおかげで、随分と時間短縮になった。

 これで絵を描く方に時間を割ける。


 と言うか、そもそも俺だけなら、どれだけ時間をかけても、種を手に入れられなかったかもしれない。

 受粉をさせようだなんて、思いもしなかっただろうから。

 いやぁ、そう思うと、ネネネがここにいてくれて本当によかった。

 こいつの奇行もたまには役に立つ。

 今回の奇行の奇は“奇抜”の奇ではなく、“奇跡”の奇だ。


「たまたま手に入れた玉々(たまたま)だなんて、シャレてますわねまおーさま」

 シャレてるんじゃない、それはただの駄洒落だ。


「そんな駄洒落はラヴにでも……」

 いや、下ネタはラヴには厳禁か。

 確実に切りつけられる。

 それも俺が。


「まぁとにかく、ありがとうなネネネ」

 今度は俺が、ネネネに向かって手の平を差し出した。

 すると彼女は一瞬キョトンと目を丸くしたかと思うと、ワザとらしく体をくねらせ、俺の手の平の上に自分の手の平を重ねた。


「いやいやネネネ、お前は何をしているんだ?」

 どうしてこんな『お嬢さん、僕と一曲踊ってくださいませんか?』『はい』みたいになってるんだよ。


「俺が欲しいのは、置いて欲しいのは、お前の手じゃなくて手の中にある種だよ?」

「ベッドの中で一曲踊りましょう?」

「踊りません。種を俺にください」

「嫌ですの」

 なん……だと!?


「だってネネネがせっかく手に入れた金玉ですもの」

「そうかもしれないけどさ」

 だ・か・ら。

 そう言って、ネネネは悪戯いたずらっぽく、悪魔っぽく微笑む。


「ただで差し上げるのは、嫌ですの。交換しましょう?」

「交換? 何と?」

「まおーさまのき・ん・た・ま。つまり、睾丸と交換ですの。ねっ?」

「ねっ、て出来るか!!」

「……で切る、ですの。剣で切る、ですのよまおーさま」

 ひぃっ!?

 ニッコリだった。

 その笑顔が怖い、可愛くない怖いい。

 何だこいつ、急に逸花みたいになりやがって。

 いやまあ、逸花に比べたら、まだまだ可愛いものだけど。

 あれ? そう言えば、逸花にも去勢されそうになってたんだっけ?


「あのなあネネネ、そんなの無理に決まって――」

「まおーさま……逸花って、誰のことですの?」

「――っ!?」

 ネネネのピンク色の目は、突如として真っ黒に、真っ暗になった。

 それはもう、それこそ、あの遊佐逸花のように。


「や、やめろネネネ。おお、お前までヤンデレ化するな、お前はいやんデレくらいでいてくれ」

 もしネネネが逸花化してしまったら……。

 そんなこと、考えるだけでも恐ろしい。

 つまり両手に花ならぬ、両手に逸花と言うことだ。

 そんなもの、俺にはもうどうしようもない。

 逸花ヤンデレは、一人でさえも対処しきれないのだから。


「いやんいやんですのっ、もう、冗談ですのよまおーさま」

 ニッコリ。

 今度の笑顔は怖くなかった、可愛かった。


「ネネネはまおーさまの貞操は奪っても、精巣までは奪いませんの」

 これも、差し上げますの。

 と、ネネネは俺の手の平の上に、ポンと金の種を置いた。


「あ、ありがとうネネネ」

「その代わり、今夜、ベッドの中で一曲踊ってくださいですの」

「生憎ダンスは得意じゃないどころか、やったこともないんだけど」

「大丈夫ですの、ただ腰を前後に動かすだけですもの。必要とあらば、ネネネがリードいたしますし」

 腰を前後に?

 足を前後に、の聞き間違いか言い間違いならいいのだけど。


 まあ、今夜のことは、今夜考えよう。

 今は花のことだ。

 早く下に下りて、花の絵を描かないと。

 せっかく時間短縮が出来たんだから、こんな所で無駄には出来ない。

 ラヴのお弁当も、食べないとだし。


「ネネネ、俺は下に下りて花の絵を描くけど、お前も行くか?」

「ええ、イキますの」

 ヴァイオレットはもうここには用はないだろ、降りるぞ?

 そう声をかけようと思って頭の上へと意識をやると、かすかにだが『すーすー』と寝息のようなものが聞こえた。


「あらあらヴァイオレットちゃん、眠ってしまってますのね」

 こいつ……静かだと思ったら……。

 まあ小人からすれば、魔王城の庭に来るだけでも大冒険だったんだろうから、仕方ないか。


「よし、それじゃ、下りますか」

 入ってきたのと同じように、真っ白な花びらを押しのけながら、花の外へ出る。


「ねぇまおーさま、まおーさまは、花の絵をお描きになるんですのよね?」

「うん、そうだよ。よいしょっと」

「ネネネも、まおーさまのまおーさまをスケッチしても――」

「しなくていい」


「ならエッチを」

「しなくていい」


「ならワンタッチ」

「しなくていい」


「ぶーですの。ならまおーさまが花を写生なさっている間に、ネネネはまおーさまのまおーさまを射せ――」

「しなくていい!!」

 そんな会話をしつつ、茎を下りて行き。

 未だに花の絵を描いているキューピーちゃんと、報告を兼ねた会話を交わしながら

「よっと」

 雲の上に、着地した瞬間だった。


「うおっ――!?」


 ズボッと。


 ゴボッと。


 突然、足が雲に突き刺さってしまったかような、足が雲を突き抜けてしまったかような感覚にとらわれる。

 そしてそのまま、足は、足どころか体も、雲の中に引き摺り込まれる。

 って、引きずり込まれると言うよりこの感じは――


「お、落ちる!?」

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