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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王TUMN:秋】
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第佰弐拾陸閑 ジョークなトーク

「魔王さんの目的は、あの花自体だったのですね」

 と、ヴァイオレット。


「ん? ああ、そうだ。よっと」

 そういえば、ヴァイオレットには目的地だけで、目的までは教えていなかったっけ。


「それはそうとヴァイオレット。お前の目的、お宝探しはしなくていいのか?」

 彼女は未だに俺の頭の上に乗ったまま。

 まあこんな質問、今更だけど。

 既にキューピーちゃんのつむじが見える高さまで、登ってきてしまっているのだから。


「いやぁ魔王さん、正直私は舐めていました」

「何をだ?」

「アメをです」

 アメかよ……。


「ええ、メロン味をベロンと、チョコ味をチョコっと」

 そのくだらない駄洒落は、うちの勇者様に教えてやって欲しいところだ。

 まぁそんな冗談はさて置き、と彼女。


「舐めていたのは、巨人さんの大きさについてです。あんなに大きいとは、思ってもみませんでした、いませんでした」

 大人だいにんである俺から見ても、一軒家ほどの大きさのあったキューピーちゃん。

 小人のヴァイオレットからしたら、一体どれだけの大きさに見えるのだろうか。


「私から見れば、大きな塔が動いているようにしか見えません」

 あれでまだ子ども、多分だけど、子どもなんだからたまったもんじゃない。

 大人になれば、もっと大きくなるのだろう。


「あんなのが住んでいるお家ですよ、どれだけ大きいのか。と言うかあれですよね」

「どれ?」

「左の、見てくださいよあれ」

 ヴァイオレットに促され、視線を左の方へ向ける。

 すると遠くの方に、点々と、いくつかの家が見えた。

 ただその家、相当大きいのか、遠いはずなのに妙に圧迫感があると言うか何と言うか。

 何だか遠近感が、おかしくなった気分だ。


「あんな家、私の足では、一つの部屋の端から端まで行くのに、一日かかってしまうんではないでしょうか」

「それで? だから、お宝はもう諦めると?」

「ええ、無理です。たとえ運よくお宝を見つけられたとしても、運べません……」

 たとえ俺や、ここに来ているであろうネネネ、ルージュ、クゥが手伝ってそのお宝を運べたとしても、ヴァイオレットの家には入らないだろうしな……。


「あぁ……骨折りゾーンのくたびれ儲けですよ、全く……」

 見なくても、がっくりとうなだれているのが分かるような声だった。

 と言うか、骨折りゾーンのくたびれ儲けって何だ?

 “骨折りゾーン”

 そんな区域、いや苦域、あってたまるか。


「まぁまぁヴァイオレット、そう肩を落とすなって」

「なら涙を落とします」

 その方が、もっと悲しそうなんだけど。


「涙も落とすなって」

「だったら何を落とせと!? テンションですか? テンションを落とせばいいんですか!?」

 いやいや、何も落とさなくてもいいと思うんだけど。

 それに落とす系統の言葉を使うなと、さっき言ったはずなんだけど。


「ああ、分かりました。魔王さんを落とせばいいんですね? そうして私はあのお城を手に入れればいいと」

「ヴァイオレット。一応聞いておくけど、その落とすは、文字どおりの落とすという意味なのか? それとも恋に落とす的な意味なのか?」

 俺を落として殺して城を手に入れるのか、俺を恋に落として悩殺して城の実権を手に入れるのか。


「前者に決まってます! 殺害です!」

 とりあえず、ヴァイオレットが善者ぜんしゃでないことは、分かった。


「たとえ後者だとしても漢字が違います。故意に落とすのです!!」

 まさしく殺害だった。

 掛け値なしの、殺害だった。

 まったく。


「ヴァイオレット、お前は本当に外道げどい奴だな」

「何ですか外道いって……?」

 俺にも分からない、非道ひどいの上位互換みたいなものだろうか。


「せっかく可哀想なお前に、帰ったら城の中の物を何か一つあげようと思っていたのに、やめておこうかな」

「ちょっと待ってください魔王さん! 今のは嘘です! 嘘ですから!」

「何だよ、小人ジョークなのか?」

「イェスです! イッツ小人ジョークです!」

「「HAHAHA!!」」 

 ふむ……こうなってしまった以上仕方がない。

 あげるしかない。


「本当にくださるんですか!?」

「一つだけだぞ?」

「わーい! 魔王さんは、本当にいい人ですね!」

「だろ?」

「はい! 本当にいいです! 都合が!」

 ……なるほど、都合がいいと。

 

「……なぁヴァイオレット」

「はい? どうされました、都合いい魔王さん」

「やっぱり何もあげないよ。さっきの言葉は、取り下げさせて貰う」

「あわわわわ、今のも! 今のも冗談ですから! 本当は、格好いい魔王さんと言おうと思ったんです!」

 都合がいいのは、どっちのことなのやら……。

 まぁいいけどさ。


「そうだろ? 俺は格好いいだろ?」

「はい! 格好の餌食えじきです!」

「……なぁヴァイオレ――」

「あーあーあーあー!」


 とか何とか言っている間に

「ふう……着いた着いた」

 あっという間に、花のもとまで辿り着いた、登り着いた。


 まあ実際のところは、『あっ』と言う間よりも、時間はかかっているのだけど、そんなことはどうでもよくて。

 とにかく、花が雲だけではなく大気圏まで突き抜けていなくて、本当によかった。

 もし花が宇宙で咲いているなんてことになると、もう俺にはどうしようもなくなる。

 出来ることと言えば、『宇宙じゃなくて、うちで咲いてくれよぉ』と嘆くことだけだ。


「さて、種はどこだ?」

「花の中じゃないですか?」

「そうだな」

 天使の羽のような花。

 その花弁を、傷つけないように慎重に掻き分け、俺は花の中へと進入する。


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