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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王TUMN:秋】
124/224

第佰弐拾壱閑 ゲートオープン!!

「それでカバさん」

 よっこらしょと、カバンを背負い直しながらヴァイオレット。


「その本来の目的とは? カバさんは、そんなに大きなカバンを背負って、どこへ?」

「だから言ってるじゃないか、のぼるって。俺はこれを登って、雲の上に行くんだよ」

 これ、と、俺は眼前にそびえ立つ塔を指さした。


「ほほう、そうでしたか。まあ、お見かけしたときから、何となくそうなんではないかと思ってはいましたが」

「で、ヴァイオレット。君こそ、そんなに大量の荷物を持って、どこへ行くんだ?」

 彼女の背中には、俺と同じく大きなカバン。

 更に腰には大量のロープなどなどがくくりつけられていて、見ているだけで重たそうだ。

 何だろう、城で大規模な盗みでもしようとしているのだろうか。


「う~ん、これこそJACKですかね」

 ジャック?


「あ、切り裂きの方じゃありませんよ?」

 切り裂きジャックじゃないジャック。


「つまり、豆の木と?」

 ジャックと豆の木。


「ええそうです、私も魔王さんと同じで、それを登って、雲の上に行こうと思いまして」

 それ、と彼女も俺がしたのと同じように、塔を指さす。

 まぁそれは、豆の木じゃなくて、花の茎だけど。


「そしてお宝を強奪(ジャック)してこようかと思いまして」

 フヒヒ、と悪そうな笑みを浮かべる彼女。

 結局盗みを働きに行くつもりか……。

 ふむ、とにかく、目的は違えど、目的地は同じと。

 まあ俺も俺で、ヴァイオレットの目的地は、俺と同じなんではないかという予想はしていたのだけど。

 ただ、この小人に、個体ならぬ小体こたいに、目の前の巨大な花を登りきれるのかが、はなはだ疑問だ。


「ですよね~、私も正直登れないと思っていたんですよ。ですので、目的地を変更します。私は山に登ります!」

「山?」

「はい。まぁ、山は山でも登るのは魔王さん。いえ、魔王山あなたですが」

 ヴァイオレットは言うが早いか、俺の足元まで駆け寄り、そして服の裾をつかんで、素早く俺の体を登っていく。


 脚から腰へ。

「よいしょ」


 腰から背中へ。

「よいしょよいしょ」


 背中から首へ。

「よいしょよいしょよいしょ」


 そして最後に頭上へ。

「ふぅ、無事頂上に辿り着きました」

「……」

「魔王山登頂成功です」

 言って、俺の頭頂部にカバンを下ろし、腰も下ろす彼女。


「何だよヴァイオレット、お前はそこに座って楽して、後は俺に登らそうってか?」

「はい? 何言ってるんですかバカさんカバさん。私の目的地はあくまでも魔王山の頂ですよ?」

「なら座ってないで早く降りていただきたい、下山していただきたい。登頂は成功したんだろ?」

 それなら次にするべきことは、下山だ。


「下山……? あぁあぁ下位隅底目(げいぐうていもく)カバ科の魔王山、略して下山ですね」

 そんな略し方があってたまるか!


「まぁいいじゃないですか、お願いしますよ魔王さん。いえ、今の状況からすると、お馬さんと言った方がいいですかね?」

 そして私はジャックじゃなくて、ジョッキーです、とヴァイオレット。

 いやまあ確かに、俺の元の名前は桜満おうまですけども、桜満さんですけども。


「お馬さんバッカバッカですね」

「お馬さんはパッカパッかだ」 

 まったく、人のことを山だの馬だのと好き放題言ってくれる。

 (おっぱい)を持っているのも、馬の尻尾(ポニーテール)を持ってるのも、自分の方だろうに。


「やれやれ、分かったよ。それじゃあ落馬しないように、しっかり手綱(かみのけ)に掴まっておけよ?」

「わーい! 各馬一斉(しゅ っ ぱ つ)にスタート(し ん こ う)でーす!」

 かくしてようやく俺とヴァイオレットは、いや、俺は、天高くそびえ立つ塔を登り始めた。

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