第佰拾漆閑 NOムラムラ! YES絶頂!
「後、町の名前のことなのですが」
ああそうか、もうネネネが付けた『ム~ラ村』も、『町』になったなら使えないわけだ。
「何にするんだ? 何か候補とかあるのか?」
「いえ、何だかんだで、もう決まりました」
「え!? もう決めちゃったの!?」
「はい。何ですか? もしかして魔王様は、何もしていないのに、図々しくも町の名前だけは決めたかったと? 魔王城ならぬ、魔王町とか言っちゃいたかったりしたんですか?」
「別に、そういうわけじゃないけど……」
それにそれならそれで、魔王城ならぬ『魔王町』よりも『アスタウン』の方がいいし、ファンタジーっぽいし。
……いや、これは微妙だな。
「で、町の名前は何になったんだ?」
「はい。何だかんだで、いくつか候補を上げ、住民投票で決めることになったのですが、前・村長、現・町長が『ム~ラ村』という名前を大変気に入ってたみたいですので、その候補は、ネイドリームにお願いをしました」
いつの間に。
と言うかネネネに候補を上げさせたって、嫌な予感しかしない……。
「そして何だかんだの住民投票の結果、候補から選ばれたのは『絶町』
と言うことで、何だかんだでこの町の名前は『絶町』となりました!!」
なりました!! と、声高らかに宣言するゲイル。
「どうしてネネネに候補を上げさせた!!」
こうなるのは、分かっていただろうに。
いや、こうなって欲しかったからこそ、ネネネを選んだのか……。
「ちなみに他の候補は?」
「かん町やら、きんた町やらです」
「そ、そうか……」
その中だと、確かに絶町が一番マシな気もするけど。
何だよ絶町って、ム~ラ村のムラムラが、欲求が、解消されちゃった感じか?
「まぁ、何だかんだで絶町と呼ぶ者もいます」
「へぇ……」
まあ、それなら、魔王城に辿り着くための最後の町って感じで、ぴったりかな?
「何だかんだで――」
「あのなぁゲイル、その“何だかんだ”って言うのは何なんだよ、もっと簡潔に話せないのか?」
「完結ならしましたけど」
「え? 終わったの?」
「ええ、一応。ひとまず町自体についての報告は終わりました」
後は、と彼。
「魔王様に対する町民の、住民のご意見ご要望などを少々。少々と言うか一つですが」
「俺に意見? 要望?」
「いや“不満”でしょうか」
「不満……?」
何だよ、絶頂したくせにまだ不満があるのか、ムラムラなのか。
「俺、何かしたか?」
「お心当たりは?」
ない。
首を振る。
「原因は、ここら辺りにあるのですが」
分からない。
首を傾げる。
「もっと言えば不満と言うより、不安なのですが」
不安、それは今朝、自分が起きていの一番に感じた感情だった。
胃が痛くなるほどに。
「あ……」
心当たりがあった。
ここら辺りにあった。
正確には、魔王城の庭にあった。
「あの花か」
庭の、巨大な、花。
「そうです。突如として現れたあの巨大な物体に対して、植物体に対して住民は恐怖を覚え、今朝から駆除してくれとの苦情が殺到しております。何なんですかあれは、何とかしてください魔王様」
「いやぁ、何なんですかと問われても、何とかしてくれと言われてもねぇ……」
引っこ抜く……のは無理だし。
なら切り倒すか? ただそれだとミスって町に倒れた場合、間違いなく町は消え去るだろうけど……。
それなら除草剤か? 効くか? それにそもそもそんなものはあるのか?
と言うか、あの花、エメラダに貰ったものなんだよな。
大切に育ててたんだよな……。
「う~ん……」
「こ」
「やめろゲイル」
人が真剣に悩んでるときに。
「魔王様、ウメコとウ○コって似てません? と言うか、同じじゃありません?」
そりゃそこを伏字にすれば同じだろうな……。
「だからやめろって、曲がりなりにもお前の妻だろ?」
「あんなものまがいものです」
「アスタマ……」
俺とゲイルの汚い会話に割って入る、綺麗なエメラダの声。
『アスタマ』って……何だその『カスタマー』みたいな名前。
俺はお客様にサービスをする窓口か何かか?
「何でしょう?」




