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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SUMMAR:夏】  
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第佰陸閑 便 in ビン

「はい。これはお母さんが海で拾ってきたんですけど」

「え? 海で?」

「え? あ、はい」

「お母さんって、泉の女神様だよね?」

 女神様と言うか、妖精の女王様だっけ?


「はい、そうですよ。泉で、あなたが落としたのは、これですか? これですか? ってやってます」

「なのに海で拾ったの?」

「泉も、川で海と繋がってますから」

「……まあ確かにね」

 そういう問題なのだろうか……。

 それに、普段泉で、淡水で暮らしている女王様が、海なんかに行って大丈夫なのだろうか。

 魚にも淡水魚と海水魚がいるわけだ。

 海には海で何らかの妖精がいるとしたら、やっぱり妖精にも、淡水妖精と海水妖精がいると思うんだけどな。

 この場合淡水女王と海水女王か。

 淡水魚が海水に入るのと危険なのと同じように、淡水女王が海水に入っても大丈夫なのだろうか。


「それにお母さんは妖精の女王、泉の精と言っても、水場ならどこへでも自由に行き来出来ます」

 妖精だけに要請があればどこでも行けるんです、とティアは言う。


「へぇ、そうなんだ」

「はい。もちろん、トイレでもですよ」

 それは嫌だな……。

 それにトイレで出て来られるって、一体女王様何を拾ったんだ……。

 普通ちゃいろのアレに金のアレに銀のアレか……?


「まおーさまネネネには分かりますの。金の玉と金の玉と銀の玉ですのよ」

「違うだろ!?」

 俺が想像していたのは、それじゃない。

 まあ……言うかもなとは思ってたけど。

 金の玉がしっかりちゃっかり二つあるのが、憎たらしい。

 大体、金の玉は百歩譲っていいとして、いやそもそも落とさないからよくないんだけど、いいとして。

 銀の玉って何だ、パチンコの玉か?


「チン……コッ」

「コッって何だ!? せめてポッにしろ!」

「チンポッ……」

「繋げるな!」

「あぁん、ネネネ、まおーさまと繋がりたいですの」

「やめろ!」

 まったくもう、まったくもう。


「あ、あの。魔王さん、話を続けても……いいですか?」

 俺を見上げて少し涙目の妖精ちゃん。

 そりゃ涙目にもなる、こんな小さな幼女ならぬ妖女に聞かせるような話ではない。


「ああ、ごめんよティア。どうぞ、続けて」

 彼女は、ハイと返事をすると、話し始めた。


「お母さんは普段時間のあるときは、海でゴミ拾いをしています」

 いい人と言うか、いい妖精さんだな。


「そしてそのゴミを持ち主に返しています」

 間違ってはいない、全然間違ってはいないけど……。


「で、そのときに、そのビンを拾ったらしいのですが、そのビンの中に手紙のような、お便りのようなものが入っていたんです」

 言われて気付いたけど、よく見ればクゥの持っている透明なビンの中には、何やら折り畳まれた紙のような物が入っていた。


「不思議に思ってお母さんがその中身を確認したら、魔王さん宛てだったみたいなんです」

「それでビンを、便びんを俺に届けようと」

「はい、そうです。お母さんはお仕事で忙しいので、私に行って来てくれと」

 そうだったのか。


「でも私が運ぶには、ビンは少し大きくて」

「それで川に落ちて本当に逝きそうになっていたのか……」

 はい、と頷き俯くティア。


「ごめんなさい」

「いや、全然構わないよ。ちゃんとこうやって届けてくれたんだから。ありがとう」

 それにティアが悪いと言うより、女王様、お母様、もう少しどうにかならなかったのか……?

 ビンの大きさにしてもそうだけど、あなたの娘さん重度の極度の方向音痴ですよ。

 と言うかそもそも、王女であるところの、プリプリのプリンのようなプリンセスであるところのティアを、そんなお使い感覚で、使い魔感覚で、一人でどこかへ行かしていいものなのだろうか。

 今回も、もしティアがブリブリのブリのようなブリンセスだったら、クゥに食べられていたかもしれない。

 いや、ブリは海水魚なんだったっけ。

 そんなことよりも、だ。

 手紙の内容だ。

 内容が無いよう、なんて使い古された駄洒落を思い出したけど、今はそんなことはどうでもいい。

 ラヴなら腹を抱えて喜びそうな駄洒落だけど、今はそんなことはどうでもいい。


「それでティア、手紙には、何て書いてあったんだ?」

「あ、いえティアは知らないんです。妖精でも、間違えました、あくまでも、読んだのはお母さんですから。魔王さんがご自分で確かめてください」

「わかった」

 クゥからビンを受け取り、コルクのようなフタを開けて、中身、手紙を取り出し、広げる。


「誰からの手紙じゃ?」

 その手紙に興味を示したのか、俺の体によじ登って手紙を覗き込むルージュ。


「えーっと……」

 そうだ。そこだ。まず誰からの手紙なのだろうか。

 言うまでも無く、俺にこの異世界で、わざわざこんな形で手紙をよこす知り合いなどいない。

 そうなると魔王の知人だろうか。

 隣に痴女じみた痴人であるところの、ネネネならいるんだけどな。

 痴人なんて言うと、ネネネが理性のない奴みたいに聞こえるかもしれないけど、ネネネは決してそんな奴じゃ――

 いや『あぁんまおーさま、ネネネ最近生理が来ないんですのぉ』なんて言ってるところを見ると、それもあながち間違いじゃないのか……。

 何であれ、今はネネネのことよりも、手紙の送り主のことだ。

 と、広げた手紙に目を落とし、差出人の名前を探す。


 そこに書いてあった名前は……。

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