表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SUMMAR:夏】  
105/224

第佰弐閑 魚影にギョエー!

 てなわけで、幾多の行く立てを経て、もう何度目になるか分からないけど釣り勝負再開。

 一体何度中断すれば気が済むんだ。

 今晩の食材集めが、遅々として進まない。


「乳ですの?」

「ああそうだな、ラヴの乳の成長速度くらいゆっくりで進まないよ」

 まあラヴの胸はもう成長しないような気が、しないでもな――

「――ぃっ!?」

 何だ……今、背中に物凄い悪寒が走ったぞ……ブルブル。


 と、雑談をかわしながら、川に糸を垂らすこと腹時計で数分。


「お?」

 竿から手に、ツンツンと今までになかったような感覚が伝わって来る。

 とうとう来たかな? と、思った瞬間。

 竿が、糸が、一気に水の中へと引き込まれた。


「うおっ!?」

 例によって例の如く、魚を釣ってるから言ったわけじゃないけど。


「うおっ!」

 さかなだ! うおだ! ぎょだ!

 俺の頭の中にはどこかで見たような魚釣りゲームのように、『HIT!』の文字が浮かんでいた。


「よっしゃ来たぁぁぁぁ!」

 俺は立ち上がり、力いっぱい竿を持ち上げる。

 しかし竿が小刻みに暴れるばかりで、魚はなかなか水面から姿を現そうとしない。


「これはおっきいぞ!」

「ああんまおーさまおっきいですのぉ……ぽっ」

「そんなことを言ってないで、ちょっと手伝ってくれないかな?」

「分かりましたの」

 ネネネは竿を掴んだ俺の手の上に、自分の両手を重ねる。


「まおーさまとの、初めての共同作業ですのよ……ぽぽっ」

「ケーキ入刀じゃないんだよ!」

「ケーキ乳頭ですの」

 古いよ……。


「ボクも手伝うのだ!」

 横に座っていたクゥも、自分の竿を投げ出し、俺の竿に手を添える。


「ババアと毛玉なんぞに任せてられるか!」

 ヒョイと立ち上がり、ルージュも負けじと竿を掴む。


「よし! みんなで引くぞ!」


「「「「せーの!」」」」


 四人での初めての共同作業だった。一夫多妻だ。

 糸は切れることなく、無事、簡単に持ち上がり、川から引き上げられた物体が水飛沫をあげ飛翔する。


「よっしゃー! とーったどー!」

 頭の中に今度は『GET!』の文字が浮かぶ。

 釣れたのは、お約束のような長靴でもなければ、タイヤでもない。

 それにわけの分からない、生物でもない。

 ちゃんとした、れっきとした、お魚さんだった。

 なんて名前のお魚さんかは分からないけど、お魚さんだった。

 しかも結構大きい。


「まぁおっきいですのぉ。まるでまおーさまのまおーさまのようですわぁ」

「お魚さんなのだ!」

 初めて釣れた魚に、目を輝かし喜ぶ彼女たち。


「はっはっはっは! 大漁ではないが、大魚たいぎょじゃのう!」

 ルージュも少し機嫌を取り戻したみたいだ。


「いやぁ、やっと釣れたな」

 俺も、宙吊りのままぴちゃぴちゃと暴れる魚を見て、失いかけていたやる気が戻ってきた。


「やるのぉアスタ、しかしワシらも負けてはおれん。のう年増よ」

「そうですわねババア。勝ってまおーさまを手に入れますのよ」

 はっはっは、おっほっほ、と時代劇の悪い奴らみたいに怪しい笑い声を出して、竿を握りなおす二人。


「やれやれ……。よいしょっと」

 魚の口から針を取り、持ってきた籐のカゴに入れる。

 そして俺も次の魚を釣るべく、再び川に釣り糸を投げ入れた。

 それにしても、やっと二匹目か。

 人数分釣るのに、後一体どれだけ時間がかかるのやら。

 釣らないといけないのは、後一体、じゃなくて、後四体だ。

 まあ帰るのが遅くなるのはいいとして、魚の鮮度が、魚が痛まないかが心配だ。

 いくら森の中が、川の傍が涼しいからと言っても、生ものは怖い。

 酒の肴のお話なら、記憶の鮮度が落ちても構わないし、痛まないから心配はいらないんだけど。

 何か魚の鮮度を保つ方法はないだろうか……と、頭の中をこねくり回し、いじくり倒す。


「う~ん……」

「どうしたアスタ」

 と、ルージュが唸る俺に声をかける。


「いやぁ、その……そうだ! 血抜きだ! 血抜きだよルージュ!」

 確かテレビで、漁船では魚の鮮度を保つため、釣れた、捕れた魚はすぐ血抜きをして、冷凍をしているって聞いたことがある。


「たぬきじゃと!?」

「いや、生憎たぬきは釣り上げてないんだ」

「死ぬ気?」

「抜くのは俺の血じゃないよ!」

「そうか。で、血抜きがどうしたんじゃ?」

「え、あ、いや……」

 あれ? 伝説のコンビがやってこないぞ……まあいいか。


「そのですね、魚の鮮魚……じゃなかった、鮮度を保つには、どうすればいいかなって」

「それで血抜きと?」

「そう」

 まあ、その方法を使ってるのを見たのは、海の魚のときばかりで、川の魚にも有効かどうかは知らないけど……。

 なんにしろ、何もしないよりはマシだろう。と思う。

 だから冷凍までは出来ないけど、血抜きぐらいはしたい。


「ルージュ、魚からいい感じに血だけを吸うことって出来る?」

 ただ、血抜きをするにしても、やり方なんて分からない。

 だから血のことは、血のスペシャリストに頼るしかない。

 横にはスペシャリストのネネネやのスペシャリストクゥ、そして城に帰ればのスペシャリストのラヴや、のスペシャリストエメラダもいる。

 けど今回は、血のスペシャリスト、吸血鬼、ルージュに頼ろう。

 血の扱いなら、吸血鬼だろう。

 なんなら『扱血鬼』と書いて、『きゅうけつき』と読んでもいいくらいだ。


「ふむ……」

 竿を地面に置き、腕を組むルージュ。


「血を吸うことは出来んこともない。じゃがしかし、その“いい感じ”というのがよく分からんの」

「えーっと、そこは俺にもよくわからないと言うか、何と言うか……」

 自分で言っておきながらこんなことを言うのもなんだけど、どうなれば“いい感じ”なんだ?


「……ふむふむ」

 ならこれでどうじゃ? と、ルージュは組んでいた腕を解き、ピンッと人差し指を立てた。


「 さかな

 魚 魚」 

「何だその“蟲”みたいな感じの漢字」


「カッコいい漢字、じゃ」

「俺が言ってるのは、“漢字”じゃなくて“感じ”だ」


「(カッコ)いい感じ?」

「感じはいいけどカッコを取れ!」


「カッコいい感じ?」

()(そっち)じゃない!」


「いい感じ?」

「今度は顔がカッコいい!?」


「いい感じ?」

「今度はポーズがカッコいい!? って分かり辛いよもういいよ!」


「「どうもありがとうございました~」」

 伝説のコンビ、満を持しての登場だった……。


「カッコいい漢字でも、カッコいい感じでもないのなら、いい感じと言うのは、どんな感じなんじゃ? 可愛い感じかの?」

「それも違う」

 可愛い感じって『しゃかにゃ』とかにでもするつもりか?


「う~ん……いい感じ……いい感じっていうのは、干からびない程度に、しっかり血を抜くって感じかな?」

「ふむふむ、まああれじゃの……了解じゃ」

 本当に分かってくれたのだろうか。


「さて、そうとなれば、ちゅーっと一杯やるとするかのう」

 そんな、お酒をクーッと一杯みたいなノリで、血を吸われてもね……。


「まあ、よろしく頼むよ。よっこらせっと」

 俺は籐のカゴから、釣ったばかりの魚を取り出し、ルージュに渡す。

 彼女はそれを受け取り、細い両腕で抱きしめると

「はむ」

 鋭い牙で魚の頭にカプリとかぶりついた。

 そして小さなお口でチューチューと魚の血を吸い出す。

 ルージュが一度口にした魚を後で食べるのかと想像しても、グヘヘとはならない。

 俺は紳士だ……グヘヘ。

 さてさて、いい感じに血を吸い出してくれているな。

 干からびたりして食べられなくなる心配は、なさそうだ。


「ぷはぁ。やはり魚の血は、血じゃから言うわけではないが、ちぃと生臭いの。人

間の血の方がええわい」

 そんなことを言うルージュには少し申し訳なかったが

「こっちもお願い出来る?」

 俺はクゥが捕って来た方の魚も、ルージュに渡す。


「ふんっ……毛玉の触ったような魚を口にするのは、嫌じゃのぉ」

 受け取った魚を、凄く嫌そうな目で見下ろす彼女。


「まぁまぁ、そう言わずに。頼むよルージュ」

「まあアスタの頼みじゃ、仕方ない。じゃが川の水で洗ってからじゃ」

 ルージュは魚を抱え立ち上がると、水の傍まで行き、しゃがんで魚を川の中につけ、そして……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ