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異☆世界転生~愛すべきバカ共の戯れ!!~  作者: 高辺 ヒロ
第二部 異世界で暮らしま章      【魔王SUMMAR:夏】  
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第佰壱閑 こんなお供は嫌だ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 額に汗を浮かべ、ぜーぜーと肩で息をするゴスロリのロリ、ルージュ。


「おーっほっほっほっほ、随分と楽しそうでしたわねババア」

「ルージュさん楽しかったのだ?」

 無事着陸したルージュに詰め寄るネネネとクゥ。


「黙れアホ犬! バカ犬! ボケ犬! 何を言っとるんじゃ!? 何をしてくれとるんじゃ!? 楽しいわけないじゃろうが!」

 珍しくルージュが目を見開いて吠えている。犬のように吠えている。


「この脳の中まで毛だらけの毛玉が!」

 脳筋ならぬ脳毛なのだろうか。


「ルージュさん何言ってるのだ、脳に毛は生えないのだ、毛が生えるのは心臓なのだ」

 クゥは本当におバカさんなのかな? たまに難しいことを知ってたりするけど。


「おおそうじゃな、おぬしの心臓には毛が生えとるわい!」

 確かに、クゥちゃんこんな場面なのに、随分と図太い発言だ。

 まあクゥからしたらこれがいつもどおり。素だ。図太いじゃなくて、素太い。

 いや彼女の素は“太”じゃなくて、“犬”なのか。


「大体そんなことおぬしに言われんでもわかっとるわ! 脳に毛が生えとるというのは、一種の表現じゃ! それにそんなことを言い始めたら、心臓にじゃって毛は生えんわい!」

「一種の暴言なのだ?」

「ああ暴言じゃ! 表現で暴言じゃ! しかしのワシからしたら暴言を言う正当性がある! 正当防衛ならぬ正当暴言じゃ!」

 ルージュはその小さくてロリロリのお口、ロリ口で、勢いよく捲くし立てた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 そして言い終わると、再び肩で息をする。


「……もうええ……もうやじゃ……あすたぁ……」

 あかい髪もボサボサ、顔もゲッソリで、すっかり疲弊しきった様子の彼女。


「あははは……大丈夫?」

「大丈夫じゃないわい、じゃからケルベロスは嫌いなんじゃ」

 せっかく慣れ始めてきてたと思ったのにな……。

 すっかりトラウマを思い出してしまったと言うか、更に上塗りされたと言うか。


「こんなことになるんじゃったら、勝負になど誘うてやらねばよかったわい」

 吐き捨てるようにそう言うルージュ。


「ま、まぁそう言うなよルージュ。クゥだって悪気があってやったわけじゃないだろうし」

「悪気がないのが余計嫌なんじゃ……」

「……確かにね」

 クゥとしては、ただ遊んでいただけ。大きな獲物がかかって、喜んでいただけ。

 悪気はないけど、ないからこそたちが悪い。

 自覚を持った悪意、害意よりよっぽど面倒くさい。

 小さな子供みたいなものだ。小さな子が笑って虫をつぶすようなもの。

 あえて犬に例えるなら、子犬が嬉しそうにしっぽを振って部屋を荒らすようなもの、だろうか。

 そこには何の悪意も害意もない。無垢さゆえの、純真さゆえの残酷さ。


「本当に犬猿の仲ですのね、ババア」

 おほほのほ、と嬉しそうに笑うネネネ。


「黙れ、猿はおぬしじゃろう、年増猿が。まあ三歩進んで二歩譲ったとして――」

 全然譲らないな……。


「――ワシが猿ならおぬしは蟹じゃ、年増よ。おぬしなどぽぽいのぽいで殺してやるわい」 

 猿蟹合戦か。そうなるとぽぽいのぽいって、柿でも投げてるのかな。

 でも、犬、猿、と来たら普通はキジだろう。桃太郎。

 クゥを犬、ネネネを猿だとするなら、吸血鬼の幼児、雉ならぬ『鬼児きじ』のルージュがいるんだから、クゥネネネルージュで丁度いいのに。

 そこにモモタロウならぬ、俺、アスタロウが入れば、完璧なのに。

 異世界昔話『明日太郎』の完成なのに。

 今回は、猿蟹合戦ね。

 でも確かあの話って最終的に蟹の子供に、猿は仕返しされるんだったような。


「そんなことをしたら、ネネネとまおーさまの子があなたに仕返しに行きますのよ!」

「どうして俺とネネネの子なんだ!」

「だってネネネはカミさんですもの」

「ネネねーちゃんはカミさんなのだ!」

 いや、カミさんじゃなくて、カニさんなんだろ?


「と言うかババア、カニはあなたでしょう? カニのような赤い髪をして」

「ふん、おぬしの目は節穴か? ワシの髪はカニなんぞには似ても似つかんほど、深い、血のような赤をしとるのが見えんのか?」

「あらそうでしたわね、あなたはカニじゃなくてですものね」

「まあワシがカニでもよいがの。ただそうなってくると年増猿、おぬしはワシとアスタの子に仕返しをされるということになるがの」

「そ、そんな……まおーさまに子どもが……しかもババアとの間に……」

 ただのたとえ話だというのに、その場に膝を付いて崩れるネネネ。

 いつもと違い、なかなかいい勝負をしていたネネネだったが、結局軍配はルージュに上がったらしい。


「あぁあぁやじゃやじゃ、どうしてこうバカばっかりなんじゃろうな」

 両手の手の平を天に向け、やれやれポーズのルージュ。


「ババア、あなた自分のことを棚にあげて、よくもまあそんなことが言えますわね……」

「棚から牡丹餅ぼたもちなのだ……」

 ルージュが棚に上げたのは、思いがけない幸運ですか。


「まあええもうええ。そんなことより、さっさと釣り勝負を再開するぞ」

 幸運を棚に上げてしまったルージュが、はたしてこの勝負に勝てるのかどうか。

 俺はそんなことを考えながら、ルージュのゴスロリモノクロミニスカドレスに引っかかった、釣り針を外してあげた。

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