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survival  作者: 星の王子様
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Boy meets dragon

Boy meets dragon



あー。やるせない。


虚無感半端ねー。


時は丑三つ時。僕は夜のコンビニに夜食を買いに行った帰りである。


といっても、夜食を買いに行ったというのは実は本当の目的ではない。




この前。三ヶ月ほど前だったか。


偶々夜のコンビニでレジに立つ彼女を見つけてからこうしてよる買い物に出るのは日課となっている。


だが、僕はとんだチキン野郎なので声をかけたことはない。


でも、こうして夜な夜な通い続けているのだからそろそろ気付いてくれるのではと淡い期待を寄せたりもしている。


今日もいつも通りコンビニに出かけた。それはもう胸が高鳴っていた。


自分でいうのもなんだが、僕はウブすぎるかな。


そしていざ店内へ。


さりげなくレジの方へ視線へ向けると…あれ?


いない。

がーん。


でも何も買わないわけには行かない。(なんとなくわかるよな。その場の空気っての?レジのお兄さんと目合っちゃったし。)


なのでいつも通り、レモンティーと菓子パンをレジに並べた。


あの、いつもの女の人は?とは聞けるはずもなく無駄に体力と財力を浪費しただけに終わった。




そして冒頭に戻る。


まあ。夜の散歩も何か起こりそうな雰囲気を醸し出していて中々面白いしな。


なんて適当に自分をごまかしたりしてみる。


そして僕は、その何かを体験することになった。


家の近くまでくると急に後ろから気配が。


だれかにつけられてる?いやなんか違う。なんかメッチャヤバイのが…。


ヒューーーー。


飛行機のような轟音をたてながら僕の横を何かが通過した。


思わずよろける僕の両脇を今度は二体の何かが通過して行った。


は?


なんだあれ?


確かめる術はない。もう僕の視界にはない。


音に驚いたのか、どこかの犬がワンワン吠えている。


と思ったらうちの犬だった。


夜は綱を離してあるのでやりたい放題なのだ。


そしてうちのバカ犬は門を飛び越え猛然と闇に向って、奴らを追って行ってしまった。


うちの犬の意外な身体能力にア然としていたが、連れ戻さなきゃならんので僕も、意図せずさっきの奴らを追う羽目になった。


チクショー。今日はついてねー。




あ、いた。


夜の道を右へ、左へ駆け回りようやく犬を発見した。


あーあ。もうなにやってんのあいつ。


いたはいいがあのバカ犬、廃墟の非常階段を勢いよく駆け上がっていた。


てか、こんなとこに廃墟なんであったのか?こえー。


息を切らしながら階段を勢いよく犬に負けじとかけ上がる。


はあはあはあ。屋上まで登りやがって。


肩で息をしながらなんとか廃墟の屋上に辿り着く。そこは真っ暗でただ犬の咆哮が闇に響いていた。


後ろから犬に近づき抱え上げる。


「ほらサンちゃん。帰るぞ」


きゃんきゃん吠えて話にならない。もともと話のわかる相手だとは思っていないが、今は特に聞く耳を持たないといった態度をとっている。


一体何が有るってんだ?


サンちゃんが吠えているのは何なのか?軽い興味を持ってそちらへ向く。


しかし何分暗い為よく見えない。


「何もねーじゃん…」


否。暗くてぼんやりしているその暗闇。それこそが。


シュー。暗闇から微かに音が漏れる。


思わず後ずさる。


そしてその後退によって、それの全貌がようやく視界に収まった。


夜の闇の中でも妖しく存在感を放つ、全長5mほどの巨大トカゲ。いや。


「ドラゴン?」


シュー。僕の疑問に答えるかのように再び息を吐き出すそれ。いや、ドラゴンか。


有り得ねー。マジ?おいおい嘘だろ。


あんなのキャラ濃過ぎるんだよ。


何でドラゴンなんか…。


その時、僕とドラゴンの間にさっきすれ違ったような、てかそうであろう黒服の男二人が降り立った。


こいつらも人間かどうか怪しいよな、さっき飛んでたし。


黒服の一方が僕を指差す。


「おい。一般人がいるぞ」するともう一方の黒服が。


「仕方が無い。消せ」


は?誰が一般人だ。てか、消せ?何それ。食えんの?


黒服の一方が掌をこちらへ向ける。明らかに僕に死亡フラグ。やべー。


何かよくわからないがあいつ恐らくなんか撃ってくる。


あ。


ちゅドーン。




くそ。頭いてー。


流石に自分自身の移動はヤバイな。


それにしても。僕は、さっきまで自分が立っていたところに空いた穴をみる。


直径5mの巨大な穴。まともに食らってたら間違いなく御陀仏だった。


さっきから僕の腕の中のサンちゃんもビビって元気がない。


「お前。その力。どうやらただの人間では無いようだな」


黒服がこちらに向いて言う。


ただの人間だったらもう死んでるって。


あんたら堅気のもんじゃねーな。といつか使いたかったセリフを呑み込む。



僕は攻撃が当たる瞬間、ドラゴンと黒服の間に移動した。勿論特別な力で。


「しかし何であろうが生きて帰す訳にはいかない」


黒服は刀を取り出した。そんなものどこに仕舞っていたんだ。


流石にこちらもまずいのでサンちゃんを安全な場所に送る。多分、家に。


「ふっ。面白い奴め」


黒服が切りかかってくる。


ヒュン。速い。普通だったら見えないだろ、これ。


大切な前髪(別に禿げている訳では無い)が数本、宙に舞う。


僕は能力を駆使して次々繰り出される攻撃をかわす。


しかし、これも長くは持たない。この力は半端無く体力を食い潰していく。


頭がガンガン騒いで割れそうだ。力を使い過ぎている。


絶え間なく続く攻撃に僕は限界が近づく。


あっ。


一瞬、切れた集中力を見過ごす相手ではなかった。


一太刀が頬をかすめる。いや、傷口は深い。血がダラダラ零れる。今のが致命傷にならなかったのは偶然だ。


これは。ヤバイ。


一旦攻撃を受ければ最早相手の間合い。次の攻撃は、避けられない。


『これを使え』


頭に直接声が響いたと思ったら目の前に刀が現れた。


なんか光っていて、見るからに強そうだ。


考えている暇は無い。


僕は刀を取り、一閃。


それで充分だった。十分過ぎた。


僕が振りかざした一振りで屋上の半分が、黒服諸共焼きとんだ。


膝から崩れ落ちる僕。刀も役割を終えたといわんばかりに砂になってしまった。


体の力が抜ける。疲労感が一気に身体を巡る。


どうやらあの攻撃は自分の力を代償として威力を発揮するみたいだ。お陰で力みまくっていた僕は全力をぶっ放したということか。


参ったな。もう一人いるのに。


「もう動けまい」


ご明察だ。刀を手に黒服その2が近づいてくる。


満身創痍の僕の頭では最早、危機感すら感じない。


振りかざされる刀。走馬灯が…。


うおぉ。


強烈なGが身体にかかる。


何事だ!?


空を飛んでいた。


ドラゴンに咥えられて。


なんだこの超展開。


超展開についていけない僕の脳みそはそこでシャットダウンした。



『起きろ』


え?ああ。寝てたのか。


ここは、また屋上?


頭に直接響く声に目を覚ますとまたさっきと似たような屋上だった。


だんだん眠気が覚めるとともに、意識が覚醒してきた。


そして僕の後ろには、やはりドラゴンがいた。


僕はドラゴンに向き直る。


「あのさ」


ドラゴンが僕の声に反応してこちらに顔を向ける。うわ。こえー。


「さっきから頭に直接話しかけてくるのってお前?」


『いかにも』


「あー。それそれ。できればやめてくれない?頭にガンガン響いて頭痛がするんだよね」


『と、言われても私はこの姿ではこの方法でしかコミュニケーションを取れないのだが』


この姿では?


「なんか別の方法があるならそっちにしてくれ」


『了解した』


ペカー。てな感じでいきなりドラゴンの身体が光り出す。


あー。唐突だな、なんでもかんでも。


眩い光に目が眩む。太陽でも見たような感じがする。


「よ。こんな感じでどうかな」


光の先に見えたのは、


「説明を頼むよ、その姿」


よりによってなんで金髪?なんで少女?


捕まっちまうよマジで。


「ふ。喜べ。お前の理想を具現化してやったのだ」


「なにぃ!?そんなところにこだわらんでいいっ」


「否定はしないんだな」


「くっ」


否定できない自分が憎いっ。


「つーかお前。服を着ろっ」


「お前はそれを最初に言うべきではなかったのか」


ロリコンめ。


ボソッと呆れ顔で呟かれる。


というかお前変身後、キャラ変わってね?


確かに僕の社会的地位が危ないことは明白なのでこれを着てろ、と着ていたパーカーを渡す。


「これはこれでエロい気がするんだけど…」


確かに…、見えそうで見えないのがまたなんとも…じゃ無くて黙れ。これ以上僕の心をみだそうとするな。


「兎に角、お前は一体なんなんだ?」


僕の問いに不満そうな顔をするドラ娘。


「お前こそなんなんだ」


「僕?これは失礼した。僕は愛美 恵。ただの高校生だよ」


「ただの高校生があいつら相手にやりあえるとは思えないんだけど」


あいつらとは黒服のことか。だったら僕は決してやりあっていた訳ではないんだけど。


「それに超能力者だ」


まあ、微妙な力しか持っていないけど。


それでもそうかそうか、と納得したようだった。


「私は、天空神ウラノスだ」


キター。中二病全開。


「天空神?」


「いかにも。この天空を我が手の内に支配する力を持つドラゴンにふさわしい名だ」


ていうかウラノスって、男神じゃなかったっけ。ま、そこはいいとして。


「分かった。お前はソラな」


「ソラ?いやウラノスだって。別に天空神までは呼ばなくていいから」


天空神なんて呼ぶ気は元々ねーよ。


「いいや。お前はソラだ、なぜなら…」


「なぜなら?」


微妙な緊張感が駆け抜ける、気がした。


「そっちの方が可愛いから」


あ、引いてる。すげー引かれてる。


「分かった。メグミ」


勝った。


「私もお前に可愛い名前を考えておいてやる」


いや、いいよ。今の名前でさえかなりのコンプレックス感じてんのに。


「何はともあれこれからよろしくな」


笑顔で言うソラ。


「ん?これから?よろしく?」


「うん。だってもう契約したじゃん」


いつ!?えっ、いつだよそれ!?


「メグミが私の刀を使った時だよ」


「なにぃ!」


「あれを、神剣劫火を使ったことによって私の力が、意思が、血がお前に流れ込んだんだ」


だからお前はもう立派な眷族だ。


お父さん、お母さん。


すみません。人の道を踏み外しました。

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