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CROSS WORLD ―五世界交錯のレキハ―  作者: 数札霜月
第四章 第四世界ウートガルズ
98/103

8:諦観の一室

 同じように囚われたミシオや志士谷同様、リンヨウもまた同じ収容所の中にいた。

 ただし、その扱いはほかの二人とは大きく異なる。攫われてきた三人のうち彼女だけは、ほかの者達の収容された一般区画ではなく、要人を収容するための特別室へと収容されていた。

 ほかの二人はあくまでついでに攫ってきただけの存在であり、特にアース人であれば一部の例外を除きその身柄に大した価値はない。それでも連れてきたのは余裕があるなら連れてきてしまった方が後々利用できる可能性があるという異世界人全般に対してタミリア軍が持つ考えと、それ以上に攫ってきたリンヨウに対する人質としての意味合いだ。


 四つある異世界のうちの一つ、彼らが第一世界エデンと呼ぶその世界の、宗教的、社会的に重要な意味合いを持つ次代の巫女。五つの世界のうちでもっとも社会の単位が小さくありながら、今の五世界の情勢下では最大の火種となったエデンの巫女が、今この部屋の中にとらわれている。


「いや、それを言うなら五世界最大の火種は間違いなくこの世界だな。ウートガルズ、でよかったかな? リンヨウ」


「あなたがそれを言いますか、烙印堕ちのオウセン」


 もともと最高級のスイートルームだった部屋を改造して作られた要人向けの収容部屋の中心で、椅子に座った白髪の女性と同じく白髪を背中まで伸ばした背の高い男が向かい合う。

 毅然とした態度で椅子に座る女性、リンヨウの鋭い視線を余裕をもって受け流し、長髪の男オウセンはその様子を鼻で笑う。

 『烙印』を持つ『烙印持ち』あるいは『烙印堕ち』という言葉は、第一世界エデンで許されざる罪を犯した者に対する呼び方だ。一時期刻印使いがその呼び名をされるまで『烙印持ち』と呼ばれていたこともあるが、本来この言葉は刺青を刻まれて村を追放された罪人としての意味を持つ。


「かつて森に出た際にオントクさんを殺め、そのあとエイソウ様と斬り結んで姿をくらまし、さらには今こうして私を攫う手伝いまでしているあなたが、ほかの世界の者達を火種などと、よくぞ言えたものですね」


「ほう。やはり俺が君をここに連れてくるよう仕組んだのはわかっていたか。あの世界の人間は謀略とは縁がないからな。正直それもわかっていないのではないかと心配していたよ」


「……四年前に姿をくらましたあなたが、まさか異世界で生き残っているなどとは夢にも思いませんでしたよ」


「俺も死ぬかと思ったがな。運よく森の中で異世界行きの魔方陣に出会うことができたのさ」


 なぜか視線をおろし、右手を見つめながらそう語るオウセンを見て、一瞬遅れてリンヨウはその姿に違和感を覚える。

何かが欠けているように感じたのだ。あるべき何かが、あったはずの何かが今のオウセンには見られないような気がする。


「……ふむ。君は以前よりより気丈になったな。以前から芯の強さがあったが、やはり立場が人を育てるのか。どことなく村の頂点に立つ女性としての気品や風格が備わってきた」


「……」


 そんなリンヨウの中の疑念を知ってか知らずか、リンヨウの敵意に満ちた視線を飄々と受け流したオウセンは、むしろ親しげな雰囲気さえうかがえる声色でそんなことを口にする。

 リンヨウやエイソウより一つ年上のせいか、以前からこうして周りの者の成長を見守るようなきらいがあるオウセンだったが、その様子が今のこの場に至ってもその様子が変わらないというのは、リンヨウにとっては不気味以外の何物でもない。


「今回の件に際して、エイソウにも挨拶を伝えてきたんだ。あの二人がいるなら俺の意思は間違いなくエイソウに届くだろう」


「……あなたは、まだあの人にこだわるつもりなのですか? そんなことをしても何も変わらないのに」


「変わるさ。俺とあいつ、どちらが本当に強かったのか、どちらがあの時勝つはずだったのかが、その時にこそ初めてはっきりする」


「そんなことのために……!!」


「ちっぽけだと思うか? 村を裏切り、同朋殺しまで犯す理由としては下らないと、お前もそう思うか?

 ……まあそうだろうな。ちっぽけで下らない。自分自身でさえそう思う」



 己の在り方を自嘲しながら、それでもオウセンはその目に宿る凶暴な輝きを損なわない。


「だがそのちっぽけなものが重要なんだ」


 ――何よりも、きっちりと身の丈に合っている。

 そう独り言ち、いずれ来るだろう宿敵に思いをはせながら、オウセンは静かに自身の中の気を高ぶらせる。

 間近に迫る決着の時を、必ず来るだろうその対決を待ちきれないとでも言わんばかりに。





 智弘との交信を終えたミシオはまず初めに何をするかを考えて、ひとまず食事をとることにした。

 先ほどまではとても食事などとる気分ではなかったが、いざというときに十全に動けるようにミシオ自身体調を整えておく必要がある。

 同じ理由で志士谷の部屋によって彼女を食事に誘い、半ば強引に食堂へと引っ張って行って食事を調達する。


「っていうかミシオちゃん、よくそんなに食べられるね。あたしなんかほとんど食欲がわかないっていうのに……」


「……? これでも足りないと思うけど」


 おかしな機械から出てきた分だけでは飽き足らず、ほとんど食べずに残された志士谷の食事を口に運びながら、ミシオはきょとんとした顔でそんな発言をする。

 ミシオ自身は何でもないように口にするが、この状況でこれだけ食べられる彼女の精神と肉体が、志士谷にはまるで信じられない。


「っていうかミシオちゃんって『痩せの大食い』って感じの人なの? いくら食べても太らないかんじの」


「別に太らないわけじゃないと思う。最近は少し体重も増えてきたし」


「え? そうなの? ……それで?」


 とてもそうは思えないとミシオを観察する志士谷に対し、ミシオはコップを手に取りながらコクリと頷きを返す。とはいえ実際、ここ最近はミシオもようやく“健康的なレベルにまで”体重が増えてきたところだった。激しすぎる運動をする必要がなくなり、ある程度安定した食事量が確保されたため、消費カロリーと摂取カロリーの釣り合いがようやく取れてきたせいかもしれない。


「お嬢さん方。少し、よろしいだろうか」


 と、そんな会話を続けていたミシオ達のテーブルに、大柄な人影が歩み寄る。

 なんとか接触の糸口を掴まねばと考えていたミシオにとっては絶好の機会ともいえる他の異世界人からの声に、ミシオが内心の緊張を隠して顔を向けると、立っていたのは、四十前後と思われる堀の深い顔立ちの男性だった。

ジャージとTシャツに近い、この収容所内で支給される運動着を着込んだその男は、どうやら第五世界オズの人間であるらしく、オズの人間の種族的特徴である長い耳が見て取れる。

特徴的だったのはその赤みがかった髪とひげで、口とあごの周りに生えたひげが顔の横のもみあげと繋がり、ふさふさとした頭髪と相まってまるでライオンのような印象を抱かせる大男だった。


「お初にお目にかかる。拙者はグレン・ゴールディンと申す者。この場所の、まあ、代表のようなものをやっている」


「えと、ハマシマミシオ、です。あ、それとこっちが志士谷さん」


「……あ、ああ、志士谷昇子です」


 志士谷の名乗りを待った後、ミシオは意図的に右手を前に突き出し、グレンと名乗る大男に握手を求める。イデアの祖国でもアースの日本でもあまり握手する習慣はなかったが、ミシオの通念能力(テレパシー)で相手の心を読むには相手と直接接触する必要がある。今のところミシオにとってこの条件が必要ないのは吉田智弘ただ一人だ。


「ああ。よろしく、お嬢さん」


「……ん、よろしく」


 快く応じるグレンの表情に罪悪感を覚えながらも、ミシオはグレンと握手を交わし、同時に相手の心へと通念能力(テレパシー)で侵入を試みる。

 幸いなことに、この相手は『護心術』は使用してはいなかった。通念能力(テレパシー)をはじめとするいくつかの能力から自身の精神を守る『護心術』はイデアでは子供のころに覚えさせられる常識的な、ある種の心構えに近い技術だが、流石に能力そのものがない世界の人たちにはそんな技術は無用の物らしい。

 読み取れるのは、大きな心理的抵抗と迷い、使命感、義務感。またそれらに隠れて誰かを懐かしむような感覚。今のところ具体的に言語化はされてはいないものの、どうやらグレンはこちらに何かを教える意図を持って近づいてきたようだった。

 ただしその内容は伝えることに迷いや抵抗を覚えるようなものらしい。


(とりあえず嘘をつく意思はないかな)


 少なくとも相手に真実を話す意思があるのだけを確認し、ミシオは握手を終えて椅子に座り直す。グレンが開いている椅子に座るのを待ちながら何から聞くかを考えていると、それより早く志士谷の方が口を開いてきた。


「あの、グレンさん。えっと、あんたってもしかして異世界国交対策室(チーム―クロス・ワールド)とかって異世界の人たちの……?」


「ほぅ、その名をご存じでありましたか。もしや何らかの関係者の方で?」


「ああ、いえ。ただ私の住んでるアパートが異世界の人たちの拠点になっていたもので」


「私の方は、普通に連れて帰ってきてもらった、協力者」


 志士谷が何かを言う前にそう発言し、ミシオはどうにか口裏合わせできなかった事情をフォローする。志士谷の方も少しだけ怪訝そうな表情を見せはしたが、結局何か思い直したのか何も言わずにいてくれた。

 もっとも、彼女にとっては今はもっと別に重要なことがあったらしい。


「えっと、もしかしてなんだけど、対策室(チーム)の人でそのがたいってことは、オズの軍人さんだったりするんですか? 攻撃魔法とかが使えるっていう」


「攻撃魔法……、まあ確かに、殺傷・破壊目的の魔術にいくつか心得はあるが――」


「逃げ出そうってんならやめとけや。姉ちゃん」


 言いよどむグレンの言葉を遮るように、ミシオの背後から志士谷に向けて唐突に荒々しい声が投げかけられる。ミシオが振り向くとそこには何やらビンを片手に持った金髪の若い男が不機嫌そうな表情で立っていた。

 ミシオは最初その髪色からオズかアースの外国人かと思ったが、直後に赤くなった顔のつくりを見てその判断を訂正する。どうやら髪の色こそ金色だが、それは単に染めているだけのファッションらしい。よく見れば耳にピアスをつけた穴の跡もある。顔つきからしてアース人かイデア人、ファッションから判断するなら恐らくアース人の方だろう。


「そこのおっさんや、ほかの魔法の世界の奴らを頼っても無駄だ。そいつらは絶対に協力しねぇよ」


「カサハラ君、それは――」


「ああ、ハイハイ知ってますよ何度も聞きました。『逃げ出しても帰れる当てがない』『一度逃げ出したら無事では済まない』『結果は見えてるやめておけ』。

 だからその姉ちゃんに言ってやってるんじゃねぇか。成功の見込みのない無能な脱走にあんた等は協力しないからやめておけってよぉ」


 握っていたビンを乱暴にテーブルに置きながら、カサハラは少々乱暴な口調でグレンにそう言葉を突きつける。どうやら右手に持っていたビンは酒の類だったらしく、彼の顔が赤くなっているのはすでに酔っているのが原因のようだった。


「ついでだからよぉ。新入りのお二人さんには俺から全部言っといてやるよ。俺たちはもう帰れねぇ。故郷への未練なんざさっさと捨てたほうが身のためだ!!」


「よさないかカサハラ君!!」


 二人にと言いながら、両手を広げて部屋全体に響くように叫ぶカサハラに対し、グレンも立ち上がってその行いを止めにかかる。

 だがカサハラは伸ばされたグレンの腕を乱暴に振り払うと、なおも荒々しくグレンに詰め寄った。


「なんだよ。なんか文句あんのかよ? あんたがその二人に言おうとしてたことって結局はそういうことだろう? 俺の言うこと、少しでもなんか間違ってたのかよ?」


「っ、そういう問題では――」


「――帰りたいとは、思ってるのね」


 にわかに殺気立つ室内が、ミシオの唐突な一言によって静まり返る。状況によっては言った本人が気圧されそうな沈黙だったが、生憎と今回ミシオはこの程度で怯むつもりはまるでなかった。

 ゆっくりとこちらに視線を向けるカサハラの眼をまっすぐに見つめ、ミシオはさらに追撃の一言を解き放つ。


「あなたが怒っているのは、帰りたいのに帰れないから?」


 言った瞬間、カサハラの手がミシオの胸ぐらをつかみ上げ、怒りの上から塗り固めたような表情の消えた形相をミシオへと近づける。


「おい、カサハラ君――」


「黙ってろおっさんッ!!」


 止めに入ろうとするグレンに対し、カサハラは怒声で、ミシオは手振りで静止をかける。

 ミシオとしてもこの場で引くつもりは毛頭ない。この場で殴られるくらいの衝突は、第一声を放つ前に覚悟している。


「威勢がいいのは結構だけどなぁ、テメェ少し口には気を付けろ。いくら女でもあんまケンカ売ってっとただじゃ済まさねぇぞ」


「あなたは言うほど、帰ることを諦めきれてない。それでも無理やり諦めようとしてるから、私の言葉に腹が立つ」


「テメェ、いい加減に――!!」


「――止めるんだカサハラ君!!」


 怒りに身を任せ、カサハラが拳を振り上げたその瞬間、ミシオ自身も覚悟していたその一撃は背後に控えていたグレンの手によって封じられた。

 どうやらミシオの方では覚悟を決めていた暴力でも、グレンにとっては看過できないものだったらしい。


「そこまでにしたまえカサハラ君。女性に手を上げるなど、拙者としては見逃すことができん」


「……チィッ!!」


 グレンに諭され、騒然となる周囲の状況に歯ぎしりし、それでようやくといった様子で、カサハラはミシオを乱暴に解放する。

 とはいえ、それで彼の溜飲が下がったわけではない。


「いいぜ。そうまで言うなら教えてやる。以前にもお前みたいになぁ、無謀にも脱走とか企てちゃってるやつがいたんだよ。つうか、俺と一緒にこっち来たダチだったんだけどさぁ。そいつも脱走を周りの奴らに呼びかけて、そこのおっさんたちにも協力を頼んで、それでも誰も、俺も賛同できなくて一人で脱走を図ったよ。それも飛び切り頭の悪い方法でさぁ」


「カサハラ君、その話は――」


「――当然!! すぐ捕まったよそいつ!! 一日くらいして袋叩きにでもあったような酷い状態になって、ここの兵隊に引きずられて帰ってきた。まるで逃げようとすればこうなるんだって見せしめみたいにさぁ!!」


「――!!」


 実際、それは見せしめだったのだろう。そのことは彼に対する、この世界の人間の対応だけでもすぐにわかる。


「俺は慌ててそいつを部屋に運び込んだ。でもここじゃろくな手当もできなくて、俺はすぐさまここの奴らにそいつの治療を頼み込んだよ。でもそれに対してあいつらがしたことはなんだかよくわからない錠剤をこっちに渡すだけさ!! 効くと思うのかそんな薬!? 全身痣だらけで骨だってあちこち折れてる。たぶんあばらだって折れて内臓に刺さってたんだぜあの様子じゃ!! 薬程度で治る訳ないだろうがッ!! 素人目に見たって手術が必要な大怪我だってのによぉっ!!」


「……」


 『要するに見殺しだよ』と、カサハラは血走った目でそう吐き捨てる。

 見殺しにすることによる見せしめ。それこそがこの世界の人間がその彼に行った脱走のペナルティだった。


「……わかったかよ。テメェが考えていることがどういうことか。テメェがどんな道に他人を巻き込もうとしているのか」


 いつの間にか爪が掌に食い込むほど握り込んでいた拳を解き、カサハラは有無を言わせぬ口調でそう言い聞かせる。彼は一度大きく深呼吸すると、妙に落ち着いた口調で、無理やり頬の筋肉を釣り上げたまま、今度は怒声でない言葉をミシオ達にかけてきた。


「いいじゃねぇか。別にここでの暮らしも悪くないぜ? ここにいなくちゃいけないって以外は特に何かを強制されてるわけじゃない。せいぜい時々呼び出されて自分の世界のことを聞かれるくらいだ。飯だってまずかねぇし、施設だって至れり尽くせりだ。生きてく分には十分すぎる暮らしがここにはある」


「だから帰るのを、自分の世界を諦めるの?」


「……なに?」


 ミシオの言葉に、緊張状態が終わって弛緩しかけた空気が再び凍り付く。怒りを収めたはずのカサハラの瞳が、再び激情に燃え上がる。

 だが、それでもミシオはこの言葉が必要だと思った。


「……テメェ、俺の話を聞いてなかったのか? なんで今の話まともに聞いてて、そんな言葉がまだ出てくるんだよ!?」


「私が聞きたいのは、あなたが帰りたいのか、帰りたくないのかだけ。自分に言い聞かせてる言葉じゃない」


「な――、んだとぉっ……!!」


 その瞬間、ミシオは今度こそ自分が殴られるかもしれないと思った

それでもかまわないとすら思った。

周りにいる人々、それこそグレンあたりはやはり止めようとするかもしれないが、しかしできればそういう『邪魔』すらもして欲しくないとさえ思った。


 実を言えば、ミシオとてこんな騒ぎを起こすつもりは最初はなかったのだ。

 今後の智弘たちの救出作戦に参加することを考えれば、今自分はできうる限り目立つべきではないし、このどこから見られているかもわからない状況で下手に目を付けられるようなまねをすれば今後の行動にも支障をきたす。

 だがこの部屋に入って、部屋に満ちる空気とカサハラの態度を見て考えが変わった。

 全員がそうかはわからなかったが、この部屋にいる人間のほとんどが、すでに自身の世界に帰ることを諦めてしまっている。

 いつ殺されるともわからない現状を頭のそこでは理解していながら、そこから目を背けて仮初の平穏に潜り込もうと努力している。

 だが、それではだめなのだ。そんな考え方で今を過ごしていたら、彼らはきっとこの先後悔することになる。ほかの場所ならいざ知らず、今ミシオ達がいるこの場所は、そうなるようにしかできていない。


「あなたは本当に、帰りたくないの?」


「……」


 ミシオの問いに、カサハラは歯を食いしばったまま黙り込む。

 いや、それはカサハラだけではなかった。今や部屋全体が、重苦しい沈黙に包まれていた。

 そして、

 その重い沈黙を、カサハラの吐き捨てるような、しかし確かな言葉が終わらせる。


「……んなもん、聞くまでもないだろ……」


 それだけ言って、カサハラはミシオに背を向け、部屋の出口へと歩き出す。テーブルの上に置いた酒瓶は置き去りにされたままだった。

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